大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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51. グリズリー公爵家

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「フフフフフ。昨夜は、ヨナンの横で、ぐっすりと眠れたので、婚約者としての勤めを果たしたわ!
 もしかしたら明日にも、こうのとりが、赤ちゃんを連れて来てくれるかしら!」

 カレンは、ただ普通に添い寝しただけで、本気で子供が出来ると思ってる。

「私は、まだ子供だから無理かな? 8歳で子供が出来たって聞いた事ないし?」

 まだ、シスの方が現実的である。

 そして俺は、温泉スパで朝風呂に入るフリして、浴場でパンツを洗う。

「主様、言って下されば、私がパンツをお洗いしましたのに」

「うわっ!」

 エリスが、何故か男湯でパンツを洗う俺を見ていた。

「何で、風呂場までついてきてるんだよ!」

「ハテ?」

 エリスは、不思議そうな顔をして、クールビューティーに首を捻る。

「だから、何で?!」

「主様の騎士だから、当然ですよね?」

『ご主人様、そろそろ諦めた方がいいですよ。もう、ご主人様にプライバシーなどないんです。僕が存在してる時点で』

 鑑定スキルが、指摘する。
 まあ、実際、そうなんだけど。
 鑑定スキルとは、オシッコする時も、ウ○コする時もいつも一緒。
 勝手に、オシッコの色を見て健康チェックまでしてくれてたりする。

「パンツ、干してきましょうか?」

 エリスは、クールビューティーに聞いてくる。

「ああ。宜しく頼む!」

 ヨナンは諦めた。今更、1人に見られても、2人に見られても一緒。
 エリスは、夫婦の営みをしてても、平気で同じ部屋で警備しそうだし。
 昨日、実際、ハッスルして下さいと言ってたし。

 ーーー

 ヨナンが、風呂から上がり朝食を食べに、ホテルの朝食会場に行くと、そこには知らない団体さんと、何故かグラスホッパー家の長男セントが、そこに居た。

「ん? 何で兄ちゃんがここに居るんだ?」

 ヨナンは、コチラに気付いてやって来るセントに喋りかける。

「ビックリしてるのは、こっちだよ!
 2ヶ月ぐらい前に、いきなり、ジミーが、イーグル辺境伯のご令嬢の剣姫カレン・イーグルに話し掛けられたと思ったら、ボコボコにされて、『アンタ、私の親戚の癖に弱いのね!』とか、なんとか言われたと、報告に来たと思ったら、その翌月には、いきなり見た事もない大金が送られてきて、ジミー達と、ビビってたら、5日前、いきなり寮にグリズリー公爵家の馬車が来て、グラスホッパー騎士爵家が、イーグル辺境伯の寄子になったから、そのお披露目パーティーに、グラスホッパー騎士爵家の長男は出席の義務があるとかなんやら言われて、そのままここに連れてこられたんだよ!」

 セントは、捲し立てるようにヨナンに説明する。

「そ……そうなんだ……」

 どうやら、セントはまだ、グリズリー公爵家が、エリザベスの生家とは聞いていないようだ。

「俺、同い年なのに、今まで全く面識無かった公爵家の長男フィリップ様と、お前と同じ歳だという、カララム王国の王子と婚約してる、本物のお姫様のカトリーヌ様と一緒の馬車でここまで来たんだぜ! 
 もう、緊張しまくって、喉はカラカラになるし、変な冷や汗は出るはで、もう大変だったんだからな!」

「へ~」

 とか、セントと話してると、エリザベスとエドソンも朝食会場にやってくる。

「エリザベス!」

 突然、公爵家の熊のような爺さんが、感動の面持ちで声を発する。

「アッ! お父さん! 何でコッチに来てるのよ!
 お父さん達は、イーグル叔父様の賓客でしょ!」

「そんな、19年振りの親子の再開なのに……」

 なんか、熊にしか見えないグリズリー公爵が、いじけている。

「エリザベス久しぶりね!」

 エリザベスとソックリな女の人が話し掛ける。

「お母さん!」

 やはりと言うか、やっぱりエリザベスの母親だった。

「そんなにお父さんを虐めないでね。ずっとアナタに会いたい会いたいと、ずっとこの19年間アナタを探し続けていたのだから」

 なんか、グリズリー公爵可愛そう。
 結婚したなら、報告ぐらいすればいいのに。

「エリザベス。セント君を連れて来てやったぞ。寄親のパーティーなのに、グラスホッパー家の長男を連れて来ないのは、どう考えも不味いだろ!」

「ああ。兄さん、ありがとう!」

 どうやら、ダンディーな男前は、エリザベスの兄ちゃんであるようだ。

「アッ! カトリーヌ! 久しぶり!」

 そこへ、カレンとシスとコナンもやって来た。

「久しぶりです。カレン様」

 カララム王国の王子の婚約者であるというカトリーヌが、ドレスの両裾を持ちエレガントに頭を下げる。

 やはり、カレンとは全く違う。これが本物の貴族令嬢。
 金髪碧眼縦巻きロールで、本当に絵に書いたようなお嬢様。
 イーグル辺境伯の妹でもある、エリザベスの母親がお婆さんであるので、カレンと顔が似てるが、性格はまるで違うのだ。
 カレンが肉食獣だとすると、カトリーヌは家畜の羊。似て非なる者である。

「カトリーヌ! 紹介するわ! グラスホッパー家四男のヨナン! 私の婚約者よ!
 今日も、ヨナンの部屋で子作りしたんだから!」

 アホなカレンが、フフーンと、胸を張る。

「なんと!」

 グリズリー公爵が、心底驚いている。

「あの……グリズリー公爵家の血筋のお嬢様達なら知ってると思いますが、グリズリー公爵家流の子作りですので……」

 ヨナンは、一応、断りを入れておく。

 多分、エリザベスも男の人と一晩添い寝をしたら、子供が生まれると思ってたらしいし、カレンも同じく、そのように思っていた。

 という事は、イーグル辺境伯家出身のエリザベスのお母さんが、エリザベスに、そのように教えたという事になる。
 イーグル辺境伯家とグリズリー公爵家は、両家とも男性と一夜添い寝するだけで、子供が生まれると娘達に教える風習があるのだ。

「流石、カレン様です。とても進んでらっしゃる。それに比べて私達は、手を繋ぐ程度……」

 どうやら、カトリーヌは、カララム王国の王子との進展の話をしてるらしい。

「フフフフフ。ヨナンを、あのモヤシ王子と比べないでくれる!
 ヨナンは、とても凄いんだから! だって、カララム王国学園でも最強の私を、小枝一本で倒した男よ! それに、このホテルもわずか1時間で建設したんだからね!」

 なんかよく分からんが、カレンが俺を自慢している。
 普通に考えて、自分の派閥の寄子で、しかも貴族最下層の騎士爵家の子供と婚約して喜ぶ辺境伯令嬢など、カレンしかこの世に存在しないと思う、ヨナンであった。
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