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46. イーグル辺境伯領
しおりを挟む色んな旅のゴタゴタも有りつつ、5日間掛けて、ヨナン達一行は、イーグル辺境伯領の領都、イグノーブルに到着する。
イーグル辺境伯領は、東の辺境に位置し、北側には、グラスホッパー騎士爵領と同じく大森林に接しており、東側は、山脈を挟んでアンガス神聖国と国境が接してる。カナワン伯爵領なんかと比べると、5倍の領地を持ち、寄親としても、3つの伯爵家、2つの子爵家、4つの男爵家、1つの準男爵家、そして、20の騎士爵家を寄子に持つ、カララム王国東側に大きな影響力を持つ大貴族である。
そして、5年に1度は、必ず、アンガス神聖国とバチバチになり、小競り合いをする。
簡単に言うと、権力だけでなく、武力もそれなりの力を持っているという事だ。
「ゴッツい城塞だよな……」
ヨナンは、荷馬車の運転をしながら、城塞都市でもあるイグノーブルの10メートルの高さはあろう城壁を眺める。
『イーグル辺境伯領は、頻繁にアンガス神聖国とドンパチやってますから、城壁が特に頑丈に出来てるんですよ!
領地の気風も、武力重視で、豪気で面倒見が良い人物が多いと言われてます。
また、酒飲みも多く、エールやジンとかはアホみたいにガブガブ飲むくせに、何故かワインを飲む時は、色や香りを味わい、エレガントに飲むという二面性を持ってるようですね』
鑑定スキルが、得意のウンチクを語る。
「簡単に言うと、ただの酒好きという事か?」
『ですね!』
先頭を走るエリザベス達が乗る荷馬車が、何やら交渉すると、正門を守る門兵がペコペコして、そのまま荷馬車のまま城壁内に入るように促している。
そして、そのまま活気がある街を抜け、中央にあるこれまた、石造りの無骨な城に向かう。
そんな中、
『ご主人様! 馬に乗った女性が、後ろから物凄いスピードで近付いて来ますよ!』
「そうなのか?」
ヨナンは、のんびりと返事をする。
『ご主人様! もう、隣で並走してます!』
鑑定スキルに言われて、横を向くと、少しだけエリザベスに顔が似た、赤髪ポニーテールの目付きの鋭い少女が、ヨナンの事を凝視していた。
名前: カレン・イーグル
年齢: 16歳
称号: 剣鬼
スキル: 剣術Lv.2、火魔法Lv.2
ユニークスキル: 身体強化Lv.3 素早さLv.1
力: 550
HP: 700
MP: 800
『ご主人様、どうやら、イーグル辺境伯のお孫さんみたいですよ』
鑑定スキルが、目の前の少女のステータスを映し出して、ヨナンに伝える。
「こんにちは……」
取り敢えず、凝視されてるので挨拶してみる。
「アナタが噂のヨナン・グラスホッパーよね?
エリザベス叔母様が、お爺様に宛てた手紙の中に、面白い子供の話が書いてあったと聞いたから、わざわざ見にきてあげたけど、アナタ、あんまり強そうには見えないわね?
これなら、ジミー・グラスホッパーの方が、まだ実力は上じゃないかしら?
まあ、最近、いきなり、ジミー・グラスホッパーが親戚と聞いて驚いたけど、アナタもジミー・グラスホッパーと同じで大した事なさそうね!」
イキナリ、目の前の少女カレン・イーグルが、初対面なのに失礼な事を言ってくる。
『なんですか! この女、失礼な女ですね!
ご主人様! なんか言ったらどうですか!』
なんか、鑑定スキルがプンプン怒っている。
とかやってると、
「主様、どうなされました?」
ヨナンが、誰かと話してると気付いたエリスが、荷馬車の中から、運転席の方に出てきた。
「エッ!氷の微笑?!」
なんか、カレンは、エリスの事を知ってるようである。
「主様。この人は誰ですか?」
「ああ。カレン・イーグルとか言う、エリザベスの従兄妹の子供だな。従兄妹の子供って、なんて言うんだ?」
『ご主人様、従姪です!』
「そうそう。エリザベスの従姪」
「成程、確かに、エリザベスに目元が似てますね」
「な……なんで……王都で有名なS級冒険者の氷の微笑エリスが居るの!」
なんか、エリスは、王都でも滅茶苦茶有名な冒険者だったらしく、カレン・イーグルが驚いている。
「私は、現在、ヨナン・グラスホッパー様の騎士をしてますので」
「騎士? この冴えなそうな男の!?」
『ご主人様。この失礼な女、殴っていいですか?』
「お前、スキルだから殴れないだろ!」
「というか、アナタ何? 何、一人でブツブツ言ってるの!?」
「おい! 鑑定スキル、お前、わざとやってるだろ?」
『あの、カレンさんにも僕の声、聞かせちゃってもいいんですか?』
「エリザベスの親戚だからいいだろ。それより、こんな可愛い娘に、独り言が多いキショい奴と思われ続ける方が凹むんだけど……」
『まあ、そうですよね。そしたらカレンさんとも、念話のチャンネルを繋ぎますね!』
そして、
『こんにちは! カレンさん! ヨナン・グラスホッパーのスキルの鑑定スキルLv.3です!
以後、お見知り置きを!』
「え? 何、急に頭の中から声が、私、おかしくなっちゃったの?!」
カレンは、急に聞こえた鑑定スキルの念話の声に驚き、馬の操縦を誤り落馬しそうになる。
「おっと! 大丈夫か?エリザベスの姪っ子?」
落馬しそうだったカレンをエリスが受け取め、ヨナンの横に座らせる。
「というか、馬は大丈夫か?」
『ご主人様。カレンさんのお付きの人が、ちゃんと手綱を拾ってましたから、大丈夫です!』
「そうなんだ?で、この子どうすればいいんだ?」
『そのまま城まで運んじゃえばいいんじゃないですか?もう、城に着きましたし』
「だな」
こうして、ヨナンの人生に大きく関わってくる事となる、3歳年上のカレン・イーグルとの出会いは、変な空気を漂う中から始まったのであった。
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