大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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36. 作業日

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 次の日、カナワン城塞都市での支店の開店の下交渉と、石焼き芋の販売。それから新商品のスゥイートポテトの貴族への宣伝を、エリザベスとコナンとシスに任せて、ヨナンは、グラスホッパー領に残り、作業をする事にする。

「商会長おはようございます!」

「ああ、おはよう」

「商会長。今日は天気がいいですね!」

「ああ」

 いつの間にか、グラスホッパー商会の従業員になったグラスホッパー領の住民達が、会う人会う人、ヨナンの顔を見ると挨拶してくる。

 というか、もう既に、従業員への教育は完璧であるようだ。恐るべしエリザベス……。

 ヨナンは、早速、公爵芋畑の隣の大森林を、一気に伐採していく。

「ウオリャァァァァァァァァーー!」

 バサッ! バサッ! バサッ! バサッ! バサッ!

 そして、伐採が終わると、

「ウオリャァァァァァァァァーー!」

 一気に、土地を耕し、農地にする。

「あの、商会長、エリザベス様から、この種を植えるように預かってます」

 従業員が、見計らったように、何種類かの種をヨナンに渡す。

「何だこれ?」

『ご主人様、それは梨と、リンゴと、イチゴと、トマトと、日本でいうと桃のような果物の種ですね!』

「エリザベスの奴、こんなの用意してたのかよ?」

『なんか、付加価値が付く甘い果物を生産すれば、高く売れるとかなんとか、昨日、石焼き芋を売ってる時に言ってましたよ。僕も、それだったらと、日本で人気な甘くて美味しい果物を幾つか提案しておいたんです!』

「お前ら、俺が寝てる間にそんなミニ会議を開いてたのかよ……」

 ちょっと、エリザベスの動きの良さに驚愕する。
 というか、もう、鑑定スキルを、自分の秘書のように使いこなしているし。

『ハイ。早くアスカと、トップバリュー男爵にザマーする為には、少しでも早く、グラスホッパー商会を発展させないといけませんからね!
 なので、ご主人様は、梨は豊水。リンゴはシナノスゥイートと王林。イチゴは、とちおとめ。トマトは、オレンジパルチェと、料理用のトマト。そして桃は、甘くて美味しい桃をイメージして種を植えて下さいね!』

「俺がイメージして種を蒔けば、大体、その通りに育つのは何となく分かるけど、お前が言う品種、半分は食べた記憶が無いんだけど……」

『その辺は、鑑定スキルLv.3の僕が情報を補完するので大丈夫です!』

 鑑定スキルが、ドン!と胸を叩く。
 まあ、実体無いから、比喩表現だけど。

「俺の大工スキルと、お前の情報があれば、大体、何でも有りになっちゃうんじゃないか?」

『僕との初めての共同作業ですね!』

「お前、言い方!」

 ワイワイ喋りながらも、とっとと種を撒く。
 何故なら、ヨナンはとても忙しいのである。

 そして、また種を撒き終わった頃に、

「商会長、新しく種を撒いた食物用の専用倉庫を、それぞれ作るようにと、エリザベス様から仰せつかっています!」

 また、さっきの従業員が話し掛けてくる。

「何だそれ?そんな事、昨日、エリザベスから聞いてないぞ?」

「エリザベス様は、ヨナン商会長なら、出来ちゃうからと、仰っていました」

 従業員は、申し訳なさそうに話す。

「エリザベス、アイツ、俺を殺す気かよ!
 どんだけ働かす気だ!」

『ご主人様は、いつも死ぬ程働いてるじゃないですか。エリザベスさんは、ご主人様の得意分野を、集中してやらしてるんですよ!
 代わりに、販売は、コナン君とシスちゃんに、交渉事は、エリザベスさんがやってますから、適材適所ですよ!』

 ヨナンはブツブツ言いながらも、梨は梨、リンゴはリンゴの専用倉庫を次々と作っていく。

「次は、スゥイートポテトを、従業員にも作れるような専用機械の開発をお願いします」

「嘘だろ! エリザベスの奴、俺に開発までさせるのかよ!」

『大丈夫です! ご主人様、スゥイートポテトの生産ラインの機械なら、僕のデータベースに入ってますから、それをアレンジして、この世界の住人にも使えるようにすればいいだけですから!
 最初に機械さえ作ってしまえば、後はご主人様がノータッチで、スゥイートポテトが生産されちゃうので、最終的に考えれば、ご主人様が楽になるんです!
 だって、今現在では、スゥイートポテト作れるのって、ご主人様だけですから!』

 なんかよく分からないが、鑑定スキルに言い含められる。

「まあ、そう言われればそうだよな……俺がやれば一瞬で作れるけど、それが重荷になって色んな事やらなきゃいけなくなると、流石に手が回らなくなるもんな……」

『そうです! ご主人様がやってるのは、もう個人商会レベルじゃないんですから、人の使い方も、しっかり覚えましょうね!』

 てな感じで、鑑定スキルに、頭の中でスゥイートポテトの生産ラインの映像を流して貰ってから、猛スピードで手を動かし、スゥイートポテトの生産ラインが出来上がった。

「生産ライン作るついでに、大きめの生産工場も作っちゃったな!」

『いいんじゃないですか?これからは、他の加工品の生産ラインも作る事となると思いますからね!』

「だな!」

「次は、移動販売用の荷馬車の量産です。
 エリザベス様の要望は、取り敢えず、100台作ってくれと言われています」

 どうやら、ヨナンのスケジュール管理を任されているであろう従業員が、次の指示を出してくる。

「100台って、うちの商会にそもそも100人も従業員居ねーじゃねーかよ!」

『その辺は、今日、エリザベスさんがカナワン城塞都市に募集を掛けると言ってましたよね!』

「ああ。分かってんよ!」

 ヨナンは、速攻で、ヨナンが現在使ってるキャンピングキッチントレーラーと同等の荷馬車を100台作ってやる。
 しっかりと、昨日必死に考えた、グラスホッパー商会の新たな幾何学的でオシャレな殿様バッタの紋章と、カナワン伯爵家お墨付き商会の名を入れて。

『ちょっとと言うか、大分、グラスホッパー家の紋章とは違うんですね?』

「ああ。俺は直系じゃないからな! 将来は、グラスホッパー家を出ていって、分家扱いになると思うから、今のうちから考えといたんだよ!」

『というか、グラスホッパー家の紋章より、オシャレでカッコイイですよね!』

「だよな! まあ、エリザベスはどうやらグラスホッパー商会を、他の商会と差別化する為に、高級路線で攻めようと思ってるようだから、その商会の紋章が、ダサい殿様バッタとか、ちょっとヤバいだろ……」

『確かに……』

「次は、スゥイートポテトを入れるオシャレな箱を作って下さいとの事です」

 再び、従業員がやってきて、ヨナンに指示を出す。

「お前、やっぱり、俺のスケジュール管理要員だろ!」

 毎回、仕事が終わると見計らったようにやって来て、指示してくる若い男の従業員に、ちょっと頭に来て文句を言う。

「そうです。ヨナン商会長が、仕事が終わった瞬間に、次の予定を指示するようにと、エリザベス様に仰せつかっていますので」

 若い男の従業員は、何事でもないように答える。

『エリザベスさん……ご主人様を少しも無駄にしないようにと、考えてますね……』

 鑑定スキルは、気の毒そうにヨナンに言う。

「これ、アスカより人使い粗くないか……」

『確かに……』

 まあ、結局、ヨナンは、バッタポイ色であるティファ〇ーの箱をパクって、スゥイートポテトの高級箱を完成させたのであった。
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