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30. 添い寝
しおりを挟む「早く、明日の準備をして、カナワン城塞都市に向かうぞ!」
『ご主人様、流石に眠った方がいいんじゃないですか?』
鑑定スキルが、心配して聞いてくる。
「アホか! 商売は信用が大事なんだよ! 明日、公爵芋30キロ卸すって約束しただろ!
約束したのに、俺が来て無かったらどう思うよ!
相手は、これから絶対俺の事、信用しなくなるぞ!」
前世、日本人だったヨナンは、性格の真の部分は日本人なのである。
日本人は、時間を守る事で有名な民族である。
時間を破る事、即ち、それは日本人のアンデンティティを破る事に繋がってしまう。
『ご主人様って、変な所で真面目ですよね……』
「仕方が無いだろ! 商売はやり始めが大事なんだよ!
誰しも2徹、3徹なんて当たり前なんだよ!」
『それ、大人の話なんじゃないですか?ご主人様って、まだ13歳の子供じゃないですか?』
「うっせい! 俺はやると決めたら、やる男なんだよ!」
ヨナンは、喋りながらも、明日売る為の石焼き芋を作ってしまう。
今更ながら、魔法の鞄があれば、現地で一々、石焼き芋を作らなくてもいい事に気付いたから。
まあ、本来、何千個も石焼き芋を作りながら、会計も同時でやる事など、常人にはとてもじゃないけど、出来ない事だったんだけどね。
「うおぉぉぉーー! メッチャ忙しいぜ!」
ヨナンは、石焼き芋を作りつつ、ついでに、公爵芋を保存しておく為の倉庫も、公爵芋畑の前の空き地に作っておく。
何故なら、現在、実家が公爵芋で溢れていたから。
公爵芋を収穫しても収穫しても溢れてくるらしく、もう、何処にも保管場所が無いらしい。
こんな時、無限に収容できる魔法の鞄があれば楽なのだが、無限に収納できる魔法の鞄は、めちゃくちゃ高いのである。
「うおぉぉぉー! 忙しいぜ!」
ヨナンは、公爵芋の倉庫を作り終わると、過去にトップバリュー男爵家の領都を作った辺りの場所を掘り始める。
「うおぉぉぉぉぉーー! 鉱石と、宝石と、温泉ゲットだぜ!」
『ご主人様! そろそろ出発しませんと、朝にカナワン城塞都市に着きませんよ!』
「そうだな!」
ヨナンは、寝ているコナンとシスを拉致して、そのままキャンピングキッチントレーナーのベッドに、コナンとシスを寝かせる。
「行くぞ!」
『了解です!』
「俺が眠らないように、ずっと喋り掛けてくれよ!」
『分かりました!』
そんな感じで、6時間。
ヨナンは、朝の6時頃にカナワン城塞都市に着くと、店の準備をして、7時になるとコナンとシスを叩き起す。
「アレ?なんで僕達、荷馬車で寝てるの?」
「家のベッドで寝てた筈なのに……」
コナンとシスは、自分の今の状況を全く理解していない。
「暫く、お前達2人にこの店を任せる。
もう、石焼き芋は、焼いた状態で魔法の鞄の中に入ってるから、それを売ってくれ!
そして、公爵芋を卸してくれと言っていた商人が3人くる筈だから、用意してる公爵芋も売っといてくれ!
2人とも、俺の弟と妹だったら出来るよな!」
ヨナンは、コナンとシスに確認する。
「昨日、ヨナン兄ちゃんを見てたから出来ると思う。というか、ヨナン兄ちゃん……もしかして、昨日から一寸も寝てないの?」
「お兄ちゃん……目が真っ赤だよ……」
コナンとシスが心配そうな顔をして聞いてくる。
「ああ。俺はもう限界だ。もう、半分瞼が落ちかかってるし。分からない事があれば、鑑定スキルに聞け。多分、何でも教えてくれる筈だから!
鑑定スキル。お前、俺が寝てても機能するよな?」
『問題ないです!』
「じゃあ、弟と妹を頼むぞ!」
『任されました!』
「コナンとシスも頼むぞ!」
「頑張る!」
「私も!」
「じゃあ、俺は暫く仮眠する。石焼き芋が全部売れたら起こしてくれ」
『「「了解!」」』
コナンとシスと鑑定スキルは、元気に返事をした。
ーーー
「ヨナン兄ちゃん! 全部売れたよ!」
コナンが、寝ているヨナンをユサユサ揺する。
「ん……?全部売れたのか……」
ヨナンは、眠気まなこで目を擦る。
「お兄ちゃん。おはよう」
「ん? てっ!」
何故か、シスがヨナンの布団の中に潜り込み添い寝している。
「お前、何やってんだよ!」
「ん? 妹が、お兄ちゃんと一緒に寝て、何が悪いの?」
「お兄ちゃんって、俺はシスと血が繋がってない兄ちゃんなんだよ!
何かあったら、エリザベスに殺されるだろ!」
「え? お母さんは、昨日、ヨナン兄ちゃんをモノにしなさいって、言ってたよ?」
「何言ってんだ?あの人。俺が死に戻りする前と、全然違う性格になってるじゃねーか!」
『あ? それは多分、グラスホッパー家にお金が無かったからじゃありませんか?
ご主人様は疎か、あの時のグラスホッパー家には、コナン君も、シスちゃんもカララム王国学園に入学させるお金が無かったみたいですから。
あの時は、本当にご主人様が邪魔だったんですよ!
1人でも食い扶持を減らして、コナン君とシスちゃんを学校に入れる資金を作りたかったと思いますよ』
「まあ、それはしょうがないとして、俺は、あの女に、素手で男爵芋掘れとか言われたんだぞ!」
『ご主人様は、エリザベスさんのステータス見た事あります?
エリザベスさんって、本来貴族令嬢だから、凄いスキルを持ってるんですよね。
水魔法Lv.2と、火魔法Lv.2。そして極めつけは、ユニークスキルの身体強化Lv.3です。
エリザベスさんにとっては、硬い氷のような土の中かから素手で芋を掘る事なんか簡単な事なんですよ!』
「ユニークスキルって事は、エリザベスは自分が身体強化Lv.3持ってるってこと、知らないのかよ?」
『知りませんね。だから、たまに大戦の英雄であるエドソンさんを、片手で締め上げて失神させてるじゃないですか?アレ、普通の人には出来ない芸当ですからね!』
「知らないって恐ろしいな……」
ヨナンは驚愕する。
あれは、冗談でエドソンが失神した振りをしていたと思っていたのだ。
だって、普通、細腕の女性が大の男を片手で失神させれる筈ないと思ってたから。
『はい。実際、エリザベスさんって、人間凶器ですよ。ご主人様も、殺されなかっただけで、良しとするしかないですね!
エリザベスさんが、本当にご主人様を嫌ってたなら、とっくの昔に手を出されて殺されてた筈ですから……』
「だな……」
「お兄ちゃん……」
まだ、シスは、ヨナンに抱きついたままである。
「で、シスはどうすればいいんだ?」
『まあ、嫌いじゃなければ、将来結婚すればいいんじゃないですか?
そしたら、グラスホッパー家の本当の息子になれますし!』
「俺、まだ13歳で、シスもまだ8歳だぞ!」
『貴族は、普通に子供の頃から婚約しますから。ほら、ご主人様もトップバリュー男爵家のアスカさんと婚約してたでしょ?』
「アレは騙されてただけだし、俺は暫く、婚約とか懲り懲りなんだよ!」
『でしたね?』
「ねえ? いつまで、鑑定スキルと2人っきりで話してるの?」
鑑定スキルと2人っきりで、わちゃわちゃやってると、コナンが話し掛けてくる。
どうやら、鑑定スキルは気を聞かせて、コナンとシスとの念話のスイッチを切ってくれていたようであった。
「ああ。悪かったな!」
ヨナンは、シスをどかして起き上がり、コナンの頭を撫でてやる。
「あっ! ちい兄ちゃんだけ狡い! 私も頑張ったんだから、頭撫でて!」
「そうだな! シスもよく頑張った!」
シスは、何故か真っ赤な顔をして喜んでいる。
「で、売上は幾らだった?」
ヨナンは、シスをどうしていいか分からなくなり、話を変える。
『約600万マーブルですね!そして、公爵芋を卸してくれという注文も40キロ入ってます!』
「凄いな。次で無制限の魔法の鞄が買えちゃうな!」
『ですね!』
鑑定スキルは、相槌をうつ。
「じゃあ、グラスホッパー領に帰るか!」
『えっ! もう帰るんですか?ご主人様、カナワン城塞都市に来て寝てただけですよ!』
「仕方がねーだろ! 俺が寝るタイミングって、ここしかないんだから!
それに、グラスホッパー領に帰ってから、やる事もたくさん有るしな!」
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