職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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160. ベルゼブブ攻略レイド(12)

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「ここまで言われると、示現流の使い手じゃない私は、もう部外者になってしまうわね……」

 異界の悪魔サルガタナスと、ハナの話を黙って聞いていたアナスタシアは、剣をしまう。
 と言っても、アナスタシアの剣はオリハルコンスライムのオリ姫なので、ただスライムに戻っただけだけど。

「さあ、お前の命を掛けた必殺の一撃を見せてみよ!」

 サルガタナスが、ハラダ・ハナの目を真剣に見つめながら言う。

「言われなくても、見せてやるわよ! 私は貴方を殺す為だけに、今まで厳しい常軌を逸した修行に耐えて来た!
 どうやら、修行で死ぬのが当たり前になって、死の恐怖が麻痺してしまったのが私の落ち度。越えられなくなってしまった壁。
 死ぬ気の一撃が物凄く軽くなってしまってた……。
 だから、本物の現役の侍である佐藤塩太郎が気になった。あの人は、この世界の侍に持つ事が無い、一種の狂気をもっている。
 いつでも死ぬ準備が出来てて、死は軽いものの筈なのに物凄く重い。そして、それと相対するように一撃、一撃が物凄く重い。
 あれこそが、侍の本質。『武士道と云うは死ぬことと見つけたり』を、体現している」

「そうだ。この世界の侍が忘れてしまったもの。私の友人、ハラダ・ゴンゾウが持ってたもの。その武士道精神を、再び、この世界の侍に思い出させるのが私の役目!」

「何、悟ったこと言ってるのよ! 貴方の言ってる言葉は、ただの押し付けよ!
 私達は、そんなこと何も望んでなかった!」

「フン。何とでも言うがいい。私は、私が思う武士道を進むのみ」

 示現流を極めし異界の悪魔サルガタナスは、示現流特有の上段蜻蛉の構えを取る。

 そして、その構えを見ると、相対する剣姫ハラダ・ハナも、同じように上段蜻蛉の構えを取った。

「さあ来い! お前の全てを、私に叩きつけてみよ!」

「上から目線、ムカつくのよ!私はアンタの為に修行して来た訳じゃないんだからね!
 父や先祖の無念を晴らす為に、厳しい修行に耐えて来たんだから!」

「フン。戯言《ざれごと》を。言葉遊びはここまでだ。お前の持てる力を、私に力一杯打ち込んでみろ!」

「言われなくてもするわよ!」

 剣姫ハラダ・ハナの周りに、薄く薄く濃縮された高密度の闘気が練り上げられる。
 これほど見事な闘気など、例えガブリエルにも練れない程の高濃度。
 本当の天才が、努力によって到達できる境地。

「生きて数年の少女が、よもやこれだけの闘気を練れるようになるとは」

 敵である筈の異界の悪魔サルガタナスが、ハナの闘気に感心してる。
 最早、師匠が弟子の成長を見守る心境なのかもしれない。

「そんだけ、アンタを憎んでるのよ!」

 ハラダ・ハナは、ゆっくりと闘気を纏ったまま、示現流を極めし異界の悪魔サルガタナスににじり寄る。

 そして、間合いに入った瞬間!

「チェストーー!!」

 薩摩示現流特有の掛け声と共に、気合いが入った必殺の一撃を、異界の悪魔サルガタナスの脳天目掛けて振り落とす。

 その気合いの入った一撃を、サルガタナスは、正面から受け止める。

 だがしかし、ハナの渾身の一撃は、サルガタナスの刀を、まるで豆腐のように斬り裂き、そしてそのままサルガタナスを真っ二つに斬りさいたのであった。

「見事……」

 異界の悪魔サルガタナスは、一言だけ言葉を発すると、そのまま霧のように消えてしまった。

「ヤッ……ヤッターー!! ついに、異界の悪魔サルガタナスをやっつけたわよ!!」

 剣姫ハラダ・ハナは、喜びのあまり飛び跳ねる。

「やったわね!」

「ついに、やりおった」

 アナスタシアや、『鷹の爪』副団長のドワーフのオッサンも感無量である。

「うおぉぉぉーー! やったぞ! ついに、ハラダ家、ハラ家の悲願、異界の悪魔サルガタナスを討ち取ったぞーー!!」

 他のハラダ家、ハラ家の者達も喜びの雄叫びを上げる。

「うえぇ~ん。俺の代で、やっと『鷹の爪』の悲願、サルガタナスを倒す事が出来たよぉ~」

『鷹の爪』団長のハラ・クダシが、情けなく男泣きする。

「やっぱり、あれが今の『鷹の爪』の団長なんて、納得できないわね」

 なんか、アナスタシア的に、頼りないハラ・クダシが物足りないようだ。
 まあ、ハラダ・ハナは、『犬の尻尾』所属なので、現在、本家の『鷹の爪』より、アナスタシアやケンジやラインハルトが所属してる『鷹の爪』アムルー支部の方が強くなってしまう逆転現象が起こってたりする。

「これは、暫くこの南の大陸に留まって、『鷹の爪』を根本的に鍛え直さないといけないわね」

「嘘じゃろ……」

 アナスタシアが、『鷹の爪』本部で副団長をしてた時代にも所属してた長寿種の団員達が、全員青い顔をしている。

 どんだけアナスタシアが居た時代の、『鷹の爪』本部の稽古は厳しかったのだろう。

「オイオイ! まだ、戦いは終わってないぞ? 何、やり切った顔してんだ?お前ら?」

「シャンティーちゃん達が、心配だよ……」

 ここで、アスタロトが撤退した事により、錯乱してた冒険者全員をエリクサーで元に戻す事に成功した『鷹の爪』アムルー支部団長のラインハルトと『犬の肉球』のエリスがやってくる。

「そうね。まだ、終わっていなかったわね」

 アナスタシアは、再びオリ姫を、オリ姫ソードに変化させる。

「そうでした! にっくきサルガタナスは殺せましたが、まだベルゼブブを倒してません!急いで、姫様達を助けに行きます!」

 剣姫ハラダ・ハナも襷の紐を結び直す。

 ベルゼブブの戦いに参加すべく、聖剣を持つアナスタシアと剣姫ハラダ・ハナは、宙を蹴って、ベルゼブブとの決戦が行われてるであろう、ベルゼブブ城9階天守に向かったのであった。

 勿論、聖剣を持ってても戦力外のラインハルトは、言うだけ言って、着いて行く素振りも全く見せなかったのはお約束であった。
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