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159. ベルゼブブ攻略レイド(11)
しおりを挟む塩太郎達は、異界の悪魔を倒しながら城の階段を上がって行く。
そして、ベルゼブブが居ると思われる天守9階に到着する。
そして、それと同時に、ガブリエルやブリトニー、アンさん、ケルベロスのペロも、天守9階吹き抜けのベランダから現れた。
「エッ……どういう事……」
塩太郎は、ちょっとビビる。
「遅いニャ! もう、外に居る異界の悪魔はあらかた倒したニャ!
後は、サルガタナスの一派だけ!
サルガタナスは、多分、ハナとアナスタシアが何とかするニャ!」
ブリトニーが、ニャニャニャと言い放つ。
「で、ここに居ると……」
「そうニャ! わざわざ、城を攻略して来るなんてバカがやる事なのニャ!」
なんか、塩太郎の後ろでシャンティーがムカついている。
確か、このベルゼブブ城に初めて入った事が、快挙とかなんとか言ってた気が……。
それなのに、ショートカットして、9階から入って来た事が許せないのだろう。
まあ、ガブリエルは飛べるし、ブリトニーは空気を蹴って空を駆ける事が出来るし、ペロも普通に空を飛ぶ。
そりゃあ、敵をあらかた倒して誰も居なくなったら、外から城に入ってもこれるだろう。
「本当に、ムカつく奴らね……」
シャンティーは、やはり、ブリトニー達が生理的にお気に召さないようだった。
ーーー
「ようやく来たな」
ベルゼブブ軍No.2のアスタロトが、軍勢を引き連れて言い放つ。
どうやら、ベルゼブブは奥の間から出て来ないようである。
「やっとここまで来れた。死にたくなかったら、ベルゼブブを出しなさい」
ガブリエルは、禍々しい赤黒い闘気を撒き散らしながら、アスタロトを恫喝する。
「これは怖いですね。私共をこの世界に召喚した、初代『漆黒の森』の王と同等か、それ以上ですよ。
何故、ここまで進化できたか?やはり、あの男を、ベルゼブブ様が殺したからですか?
そうだとすると、ベルゼブブ様は、要らぬ事をしてしまったようですね」
「異界の悪魔風情が、マスターの話をするな」
ガブリエルは感情が昂り、益々、闘気が暴走する。
というか、塩太郎も立ってるのがやっとの物凄い圧である。
「これは、ちょっと不味いですね……想像以上です……」
なんか、アスタロトは冷や汗をかいて、後ずさっている。
というか、男爵レベル程度の異界の悪魔達が、ガブリエルの圧で立っていられなくなり、みんな膝まづいてしまっている。
そして、膝まづく異界の悪魔達をブリトニーが、ニャハハハハハハ!と、笑いながら首を跳ねていくのだ。
最早、どっちが悪魔なのか分からない。
そもそも、ガブリエルもブリトニーもアンさんも、全員、大魔王の称号持ちなので、悪者特性が高過ぎなんだけど。
「こんなのやってられるか!ベルゼブブが、あの男を殺さなければ、こんな事にならなかったのだ。
私は、闇の魔素が濃いこの世界で、たまに人間をツマミながら悠々自適に生きたかっただけなんだ!
元々、ベルゼブブに付く方が得と思って付いていたが、別にそちらに付いても良いと思ってたのだ。
そうだ、今から、そちらの味方になる。そして、一緒に、ベルゼブブを倒そうじゃないか!」
なんか、劣勢とみるや、アスタロトが尻尾を振って、ガブリエルに歩み寄ってきた。
「は? 虫けら風情が、何か言ったか?」
ガブリエルがドスの効いた、とても冷たく低い声で言い放つ。
「チッ! これだから低脳の奴らは……やってられるか!」
パッ!
「アッ! 消えたニャ!」
まさかのアスタロトは、敵前逃亡。
それと同時に、アスタロトの傘下と思われる異界の悪魔達も、転移魔法で全員消えてしまった。
残るは、ベルゼブブの傘下の異界の悪魔達。まだ数百匹は居る。
「オイ! ガブリエル、奴らを追わなくていいのか!?」
塩太郎は、慌てて質問する。
「目の前に居る、マスターの仇のベルゼブブを確実に殺します」
どうやら、ガブリエルには、奥の間に居ると思われる異界の悪魔ベルゼブブしか見えて居ない。
それ以外の異界の悪魔など、先程、アスタロトに言い放ったように、虫けら風情なのだ。
ーーー
「オイ! サルガタナス急げ! 撤退だ!」
ベルゼブブ城の外で、ハラダ・ハナと、アナスタシアと対峙するサルガタナスに、転移して来たアスタロトは、慌てながら言う。
「すみません。アスタロト様。この者達との因縁がある故、私はここを離れる事など出来ませぬ」
薩摩示現流を学び。侍の心を持つサルガタナスは、直接の上司であるアスタロトの命令を拒絶する。
「チッ! 侍被れが! どう見ても劣勢だろうが、こんな負け戦、やる意味ないと何故分からんのだ!」
「それが、武士道というもの。侍には、どうしても退けぬ時があるのです!」
サルガタナスの意志は強い。
「クッ! どうとでもしろ! もう脳筋のアホな奴らとは関わってられん!」
アスタロトは捨て台詞を吐いて、移転魔法で消えてしまった。
「貴方も、一緒に逃げた方が良かったんじゃない?
もう、今の段階で、貴方に勝ち目はないと思うけど?」
アナスタシアが、サルガタナスに語り掛ける。
「誰が、こんな楽しい死闘を止められると言うのか? 私は、この日の為に、ハラダ家、ハラ家の侍に300年間も稽古をつけて来たのだ。
そして、今日は、その300年の稽古の集大成。
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「私達の先祖を何百人も殺して来て、稽古だと!」
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「ああ。そうだ。腑抜けた薩摩示現流に喝を入れる為、私が鬼になってお前達に稽古を付けてやったのだ。
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「それは……」
「言い訳はいい! お前が、ハラダ家の現当主ならば、魂を掛けた必殺の一撃を、私に振るってみせろ!」
示現流を極めし異界の悪魔サルガタナスは、愛の鞭ならぬ、まるで剣の師匠でもあるかのように、ハラダ・ハナに喝をいれたのだった。
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