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158. ベルゼブブ攻略レイド(10)
しおりを挟むベルゼブブ城3階に上がると、そこはまた、別世界というか、部屋がたくさんある。
というか、異界の悪魔達の部屋?
「敵、全く居ないな……」
「素通りできそうね」
塩太郎の独り言に、シャンティーが答える。
「そんな訳ないからね!」
突然、廊下の奥の方にある部屋の扉が開く。
そこには、お子様悪魔フルーレティーが立っていた。
「そんな訳あるだろ!」
塩太郎は、そのまま一直線に進み、フルーレティを斬り裂く。
しかし、フルーレティは、瞬間移動でそれを躱す。
「チッ!瞬間移動、本当に厄介だぜ!」
「どんだけ早くても、瞬間移動には敵わないよ。諦めて帰ってくれると有難いんだけど」
フルーレティは、離れた場所から塩太郎に言う。
「悪いな。お子様だとしても、お前を倒してベルゼブブをやっつけないといけないからな」
塩太郎は再び、突進し、フルーレティに斬り掛かる。しかし、今度はフルーレティは、塩太郎の真横に瞬間移動し、そしてそのまま風魔法で、塩太郎を切り裂こうとしたのだが、その攻撃に反応し、塩太郎は大きな1歩で移動し、フルーレティの胴を叩き斬る。
しかしながら、フルーレティは既に、瞬間移動してて、塩太郎の背後から再び、風魔法を放ったが、塩太郎もその動きに反応し、大きくジャンプして、そのまま上段からフルーレティの脳天を真っ二つにした筈なのだが、フルーレティは、今度は、相当離れた所に転移していた。
「何なんだよ! 一体! 殆どゼロ位置からの攻撃なのに、何で避けて、しかも攻撃してこれる訳!」
お子様異界の悪魔フルーレティが、逆ギレして怒りだす。
「そんなの、お前が弱いからだろ?」
「何言っての! 僕はこの世界に来てる異界の悪魔では、序列30位に入ってる大物だよ!
その僕の瞬間移動に着いてこれるって、そんなの本当の化物だよ!」
「ん? 普通、そんなの分かるだろ? 京都ではお前の殺気に反応して動く奴なんか、五万と居たぞ?」
そう。幕末京都では一瞬の油断が死に繋がるのだ。
だって、居合斬りとかって、殆ど一瞬だし。
少しでも斬られてしまったら、血は流れるは目眩いはするわ、指でも斬られようものなら、痛くて刀を持てなくなるし、エリクサーがあるこの世界とは真剣さの度合いが違うのである。
普通、指斬られたらくっつかないしね。
なので、集中力に関しては、この世界の住人とは殆ど比較にならないほど、塩太郎は集中出来てしまう。
しかも、塩太郎は、幕末最強の人斬り。集中力も半端ないし、突然、居合斬り攻撃でも避けてきた実績があるのだ。
達人が、どんだけ気配を消したとしていても、塩太郎には、僅かな殺気や匂いで、体が勝手に反応してしまうのである。
そして、フルーレティは気付いてないかもしれないが、フルーレティの体からフルーツのような甘ったるい匂いを発してるのである。
塩太郎は、その匂いに敏感に反応して動いてるだけ。
なので、フルーレティがいくら瞬間移動しても、塩太郎的には、なんて事ないのであった。
ただ、匂いを避けて、そのまま攻撃するだけだからね。
まあ、それが出来ちゃうのが、塩太郎が幕末伝説の人斬りと言われる所以なのだけど。
「糞っ! なら、これならどうだ!」
フルーレティは、連続瞬間移動して、塩太郎に的を絞らせずに攻撃を繰り広げる。
しかしながらも、匂いで反応してる塩太郎は、それを難なく躱す。
そして、
バキッ!
塩太郎の蹴りが、フルーレティにヒットして、フルーレティが吹っ飛ばされる。
「ゲホッ! 何で……」
フルーレティは、顔を歪め、塩太郎に尋ねる。
「何でって、何となくだな……」
フルーレティは、何で、転移した瞬間に蹴りを入れられたか全く分からないようである。
まあ、次に転移する場所がどこだなんて、普通分からないのだが、塩太郎には分かってしまったのだった。攻撃を躱しつつフルーレティを観察してたら、フルーレティが、次に転移する場所を見ている事に気付いたのだ。
塩太郎は、ただフルーレティが見てた誰も居なかった場所を蹴っただけ。
そこに、丁度良いタイミングでフルーレティが転移してきて、塩太郎の蹴りがヒットしたのである。
もう、フルーレティ的には何が起こったか分からないだろう。
まさか、そんな単純な方法で転移が破られたと思ってない訳だし。
「まさか……未来予知?」
なんか、フルーレティが勝手に壮大な勘違いしてる。
「しかし、鑑定で確認しても、未来予知スキルなど持ってないし……まさか、本当に僕より格上で、ステータスを改ざんしてるのか?」
ここまで来ると、フルーレティの疑心暗鬼は募るばかり。
ただ、自分自身の目線のせいで、次に転移したい場所を見破られてるとは、全く思っていない。
「フフフフフ。バレてしまったか」
塩太郎は、フルーレティに乗っかってみる事にする。ケンジと違って、わざわざ敵に種など明かさないのだ。
それに、種がバレたら対処されて面倒臭いし。
「それなら、未来予知を越える速さで転移し続けるだけ!」
フルーレティは、先程より尚早く転移を繰り返し、塩太郎に襲いかかる。
だけれども、フルーレティの目線は、前より尚、集中して次に転移する場所を確認してるので、塩太郎的には益々、フルーレティの攻撃を避けやすくなってたりする。
というか、普通に刀を一周振り回せば、普通にフルーレティを斬れるんじやないかと思えてきた。
だって、フルーレティは、塩太郎の至近距離を1秒間に3回ぐらい転移してるのだ。
最早、転移してる意味が無いんじゃないかというぐらいに。
まあ、それを一々避けてる塩太郎も凄いのだけど。
塩太郎は、試しに、円を描くように刀を振るってみる。
ズザッ!ズザッ!ズサッ!
転移を繰り返す、フルーレティに、3回続けて刀がヒットする。
「グフッ……」
フルーレティは、膝を付き口から血を流している。
「未来予知が出来るなんて、反則だぞ……」
「転移の方が反則だろ?」
塩太郎は、刀に付いた血糊を払いながら、ぶっきらぼうに言い放つ。
だって、実際には未来予知なんて出来ないからね。
「……未来予知の方が……反則……だよ……」
バタッ
フルーレティは、完璧に勘違いしたまま死んでしまった。
ただ、塩太郎が適当に振り回した刀に、自分の方から転移して勝手に斬られに行ったとは、全く思わずに。
しかも、斬られとは気付かずに、3回も転移してたし……。
「悪魔って、アホが多いのかしらね?」
シャンティーは、事の次第を見つつ感想を述べる。
「流石は、神シロ様が見込んだ男。未来予知まで出来るとは、感服致しました」
アホなケンジは、本当に未来予知出来ると信じ込んでるようである。
「それ程でも」
塩太郎も、わざわざ種明かしする義理もないので、そのままケンジにも乗っかる事にしたのでたあった。
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