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153. ベルゼブブ攻略レイド(5)
しおりを挟む「少し、遅れちゃったわね」
『鷹の爪』に合流したアナスタシアが、現副団長のドワーフのオッサン、ドラモッテルに話し掛ける。
「ああ。今回は、結構押しておるんじゃがな……じゃが、後、一押し足らん」
「今の団長は、あの子かしら?」
アナスタシアは、異界の悪魔達と戦ってる現『鷹の爪』団長ハラ・クダシを指差す。
「そうじゃ! だがしかし、副団長が居た時の団長に比べたら、まだまだじゃ」
どうやら、現副団長ドラモッテルは、アナスタシアを当時と同じように、副団長と呼ぶらしい。
「そのようね。そして、あの子が剣姫かしら?」
「ああ。剣姫ハラダ・ハナじゃ!流石じゃろ。当時の副団長と同等の力を持ってるぞ!」
「なるほど。大体分かったわ」
アナスタシアは、聖剣エクスカリバーと似た剣を抜く。
「それは、昔使ってた剣とは違うようじゃな?」
「ええ。アレはメリルちゃんに貸しちゃったから。でも、この剣?というのかな……この子でも同等の力が出せるから大丈夫よ!」
「じゃが、それ、本当に剣なのか?赤金色?というのか?剣も鞘も柄も一色なのじゃが……」
「フフフフフ。これはオリ姫ちゃんよ!」
アナスタシアが、名前を言うと、オリ姫は、聖剣エクスカリバーレプリカから、本来の姿のスライムの姿に変化する。
「な……なんとスライムじゃと!」
流石に長寿種のドワーフでも、剣がスライムに変わり驚いている。
「ただのスライムじゃないわよ。オリ姫は、なんと、聖剣エクスカリバーと同じ素材のオリハルコンスライムよ!」
キュイ!
なんか、オリ姫が、ピョンピョン飛び跳ねる。
「そ……そんなスライムが、この世に存在するのか?」
「存在するわよ! じゃあ、オリ姫、実力を見せてあげて!」
ピュイ!
オリ姫は、返事をすると、口から礫を、異界の悪魔に向かって飛ばす。
ピュン! ピュン! ピュン! ピュン! ピュン!
オリ姫の礫を受けた異界の悪魔達が、次々に倒れていく。
「な……なんと……」
流石に、ドワーフのオッサンも驚いている。
何せ、この戦いが始まってから、剣姫ハラダ・ハナと、『鷹の爪』の一団は、異界の悪魔を1匹も倒せてなかったのである。
「アララララ。オリ姫ちゃんは反則だったわね……。やっぱり聖剣エクスカリバーに変化してくれるかな……」
ピュイ!
オリ姫は、再び、聖剣エクスカリバーモドキに変化した。
「副団長……そのオリハルコンスライムを使えば、この戦い、簡単に勝ててしまうのでは……」
「それは、流石にダメよ。アナタ達の今迄の努力が無駄になっちゃうもん」
どうやら、アナスタシアは、オリハルコンスライムに本気を出させる気はないようである。
というか、剣姫ハラダ・ハナが、アナスタシアを睨みつけている。
剣士の戦いに、飛び道具など不要とでも言うように。
「あらららら。剣姫ちゃん、相当気が強いわね……まあ、いいわ! 兎に角、私も参戦するわね!」
アナスタシアは、異界の悪魔サルガタナスと戦っているハラダ・ハナの隣に合流する。
「フフフフフフ。久しいなアナスタシアよ」
異界の悪魔サルガタナスが、アナスタシアに話し掛ける。
「アナタもね」
アナスタシアは、普通に返す。
「お前に付けられた傷が、今でもたまに疼くぞ」
「付けられた傷って、もう完全に治ってるじゃない?」
「ちょっと、貴方なんなんですか?! 突然、後から来て!」
なんか、ハラダ・ハナは、アナスタシアをお気に召さないらしい。
「ちょっと、昔、倒し損ねた侍を倒しに来たのよ」
アナスタシアは、サルガタナスから視線を外さずに、エクスカリバーレプリカ改め、オリ姫ソードを構える。
「待って! サルガタナスは、ハラダ家の獲物よ!」
「悪いわね。私も、コイツに昔の仲間を殺されて頭に来てるのよね!」
そう、アナスタシアも、元『鷹の爪』の一員として、当時、ベルゼブブ攻略レイドに参加し、サルガタナスを寸前の所まで追い詰めたのだが、その代償として、『鷹の爪』の団員達は、団長も含めて殆ど殺されてしまったのである。
アナスタシアは、当時の事を思い出したのか、赤黒い怒りの闘気が、まるで炎のように体を包む。
「だけれども!」
ハラダ・ハナは食い下がる。
「分かってる?サルガタナスは、1人では倒せるような相手では無いわ。
当時、私がサルガタナスと戦った時も、当時の『鷹の爪』団長の剣神ハラダ・ツクヨミと一緒に戦って、やっとサルガタナスの左手一本を斬り落としただけなのよ!」
「だけど……」
「まあ、私はどうでもいいわよ! 私は、ただサルガタナスを殺せれば、それでいいから!」
アナスタシアは、ハナを無視して、サルガタナスと戦いを始める。
その剣筋は美しく、力強い。一目見ただけで、只者ではないと分かってしまう。
「フフフフフフ。久しぶりだぞ。われをここまで楽しませるとは、アノ時より、少し実力が上がってるのではないのか?」
サルガタナスは、余裕綽々でアナスタシアの剣を躱しながら、アナスタシアに語り掛ける。
「私にも色々あったのよ」
「だけれども、足りんな」
バキッ!
アナスタシアは、示現流特有の激しい剣撃を受けて、ぶっ飛ばされる。
「流石ね」
「フフフフフフ。あの時のように2人でかかってて来い! そして、心湧き踊るような、血と血が舞い散る命を掛けた闘争を始めようぞ!」
異界の悪魔サルガタナスの体から、禍々しい血のような赤い闘気が湧き上がり、そして、示現流特有の上段蜻蛉の構えをとる。
そして、
「いざ、参る!!」
異界の悪魔サルガタナスは、アナスタシアとハナに襲いかかった。
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