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144. 『鷹の爪』アムルー支部

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 なにやら、セドリックの御屋敷である湖畔のログハウスに、『鷹の爪』アムルー支部の者達が、今日の夜までにはやって来る予定なので待っていてくれと、湖畔のログハウスの支配人だという白髪の執事に言われたので待つ事となった。

「それにしても、ここはいいわね!いたせりつくせりよ!」

 セドリックが所有する湖畔のログハウスは、そのまんま、スイスのスキー場にある高級リゾートをモデルに作られてるので、異世界に居るまま、地球の高級リゾート気分を味わえてしまえるのだ。

「おい! お前ら、デッカイ檜風呂には入ったかよ!」

 塩太郎が浴衣姿で、シャンティーに聞く。

「私達は、混浴の岩風呂の露天風呂の方に入ったわよ!」

「何だって、露天風呂まであったのかよ!」

「あら? 気付かなかった?」

「気付いてたら、露天風呂の方にはいってるちゅーの!」

 塩太郎は、また、急いで男風呂の暖簾を潜り、露天風呂に入りにいった。

「本当に、地球出身の日本人って、お風呂大好きよね。
 ここを作ったセドリックとかいう奴も、日本からの転生者だったみたいだから、やたらとお風呂が充実してるのね!」

 シャンティーは、風呂場の入口付近にある休憩所に設置してある扇風機に当たり、源泉掛け流し温泉で暖まった体を冷やし寛いでいる。

「シャンティーちゃん。コーヒー牛乳飲む?」

「コーヒー牛乳?確か、モフウフ地下王宮にある温泉スパで人気だというコーヒー牛乳?
 是非、飲んでみたいわね!」

 エリスは、シャンティーに聞いた後、メリルとムネオにも聞いて、人数分のコーヒー牛乳を自販機で買って、持ってくる。

「何で、異世界で成功した日本人って、温泉スパを作りたがるんだろうね?」

 エリスは、コーヒー牛乳をシャンティーに渡しながら聞く。

「それは、DNAにお風呂LOVEが刻まれてるからじゃない?
 異世界人でも、日本人以外は、それ程お風呂好きそうじゃないし?」

「それにしても、何故、コーヒー牛乳だけお金を払って自販機で買わないといけないんだろう?
 水はタダで飲めるサーバーが置いてあるのにね?」

「それが、日本人の拘りなんじゃないの?
 日本人って、そんなディテールに、物凄く拘る人種なのよ!」

 そんな話をしながら、温泉でダンジョン探索の疲れを癒し、部屋に戻る前に、フカフカのソファーがあるエントランスで寛いでいると、湖畔のログハウスの正面玄関から、3人の冒険者ぽい出で立ちの者が入って来た。

 真ん中を歩く、紫髪の魔法使い風の格好をしたグラマラスな美人を中心に、左は、侍の格好をした剣呑な雰囲気を漂わす、細目で何故か左目だけ閉じてる、白い着流しを着た侍と、右には、硬そうなフルメイルの鎧を装備した、頬に傷があるライオンヘアーの筋肉質な男。

 間違い無く、只者ではない雰囲気を漂わせている。

「あの左目瞑ってる侍、ヤバいな……」

 塩太郎は、思わず呟く。

「アンタでも、ヤバいと思うレベルの侍?」

「どう考えてもヤバいだろ……漂う殺気が普通じゃねえ。というか、このリゾートホテルでも殺気をダダ漏らしにしてる神経がぶっ飛んでる。
 そして、真ん中の魔法使い風の格好をしてる紫髪の女も、ありゃぁ剣士だぜ。
 しかも、左目瞑ってる侍より格上だ」

「じゃあ、ライオン頭の戦士風の男はどうなのよ?」

「まあ、強いんじゃないか?俺は、そんなに興味湧かないけどな」

「何? その対応は!」

「まあ、ムネオさんより強いのは確かだな」

「なるほど、あの一番弱そうな男も中々侮れないって事ね」

「おい! てめーら、全部聞こえてっぞ!誰が一番弱いだって! 俺はこう見えても、アムルー城塞都市No.1冒険者パーティー『鷹の爪』の団長様だぞ!」

 盗み聞きしてた、ライオン髪の男が怒り狂っている。

「あの女が、団長じゃなかったのね……」

「だな……」

「言いやがったな! 確かに、アナスタシアが一番強くて、リーダー風に振る舞い、しかも『鷹の爪』を立ち上げたリーダーだけど、俺は、そのアナスタシア直々に団長をやるように頼まれたんだよ!」

「なるほど、アナタはお飾りの団長って事ね」

「何だと! このちびっ子妖精!」

『鷹の爪』の団長が、ワイワイ騒いでいても左目が閉じている侍は、決して臨戦態勢を崩さない。
 それを見て、塩太郎も、ソファーにおいてあった村正を握り、ゆっくりと立ち上がる。

 その瞬間!

 左目をカッ!と開けた侍が、電光石火で動いたと思ったら、塩太郎が持っていた筈の村正を奪い取り、愛おしそうに村正に頬擦りし始めた。

「お……お前、俺の村正に何やってんだよ!」

 塩太郎は、あまりの突然の事に、思わずたじろいてしてしまう。

「この刀からは、我が神、シロ様の魔力の匂いがします!」

「何、言ってんだコイツ!」

「どうか、この刀を私に譲ってくれませんか?」

「誰が譲るかよ!」

「そしたら、これと交換しましょう」

 左目を閉じでいる侍は、自分の魔法の鞄の口を下にして、止まる事のない金銀財宝の山を塩太郎に提示する。

「あの魔法の鞄の中に、どんだけ金銀財宝が入ってるのよ!」

 金に目がないシャンティーは、金銀財宝が湯水のように溢れ出てくる魔法の鞄に釘付けである。

「ケンジ止めなさいな。その刀は、シロちゃんが、そのお侍さんに託した刀なのよ。
 その刀を、勝手にケンジが買い取ったら、シロちゃんが、ケンジの事、どう思うと思う?」

 ケンジは、アナスタシアの言葉を聞くと、突然、ガタガタと震えだし、そして塩太郎の前に土下座をして、

「おお! 我が神 シロ様。申し訳ございません!アホなケンジをどうか許したまえ~!」

 と、涙と鼻水を垂らしながら、地面に頭を擦りつけ始めた。

「あの……この人、大丈夫か……」

 塩太郎は、実質的なリーダーであろうアナスタシアに聞く。

「ええ。平常運転よ!」

 アナスタシアはニッコリと微笑み、メリルと、『犬の肉球』の面々を、値踏みするように見るのだった。

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