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143. 湖畔のログハウス
しおりを挟む湖畔に建つアマイモンの別荘は、現在の地球で言うと、スイスの高級スキーリゾート。
巨大なログハウスの建造物で、すぐ目の前にある一際高い山と、透明度の高い湖に、とてもマッチしている。
「アマイモンの奴、日頃はトイレ掃除とか地味な仕事してる癖に、1階層の城の他にも、こんなに立派な別荘を持ってるなんて、生意気過ぎるわね……」
シャンティーが、何故か、物凄く悔しがっている。
「こんな、凄い家を何棟も所有してるから、便所掃除とかも甘んじて出来るのかもしれませんね。多分、心に余裕があるのでしょう」
メリルは、何故か納得しているようだ。
シャンティーとメリルの考え方の違いこそ、人間性の違いであろう。
簡単に言うと、シャンティーは心が狭くて、メリルは心が広いのだ。
塩太郎は、メリルのような心が広い人間になりたいと、心の底から思った。
「というか、あの湖をボッーと眺めてる透明なキラキラしてるスライムは何だ?」
「エッ! 何、それ!?」
塩太郎の言葉に反応して、シャンティーが塩太郎の指差す方を見る。
「アッ! アレはもしかして、ダイヤモンドスライム?!
そんなスライムが、実際に、実在するの!?」
シャンティーは、相当驚いている。多分、南の大陸には居ない、火山スライムのような、アマイモンダンジョン固有のスライムなのだろう。
「確かに、アレはダイヤモンドスライムですね」
メリルが、鑑定スキルを使ったのか、断言する。
「嘘! 塩太郎! 早く倒しなさい!」
「エッ! 嘘だろ!? アレは、見るからに硬そうだぞ!」
「何でもいいから、絶対に倒すのよ!」
「チッ! 分かったよ! 取り敢えず、やってやるから、殺されたら、絶対に生き返らせろよ!」
「倒せたら、考えてあげるわよ!」
兎に角、シャンティーが殺れと言ったら殺るしかない、やらなかったらずっとネチネチ言われて面倒臭いし。
塩太郎は、居合い斬りの構えをして、ジリジリとダイヤモンドスライムに近づいていく。
塩太郎の攻撃の中で、一番早い居合い斬りじゃなければ、絶対に逃げられそうだしね。
そして、何とか、ダイヤモンドスライムとの間合いに入ると、慎重に精神を集中させて、
スパッ!!
「殺ったか!?」
「塩太郎、逃げられてるわよ!」
「なっ!? 残像!!てっ! 速すぎる!」
「塩太郎! ログハウスの別荘の方に逃げて行ったわよ! ていうか、ダイヤモンドがコロコロ落ちてる! 塩太郎、早くダイヤモンドを拾いなさい!早くしないと、ダンジョンに吸収されてしまうかもしれないわ!」
「エッ?2、3時間は、大丈夫だろ?」
「そんなの分かんないじゃないの!ダイヤモンドを拾いながら、追い掛けなさい!
しかも生け捕りよ! 殺さなくても、ダイヤモンドを生成出来るなら、殺さないで家で飼ってた方がお金になるわ!」
「そんな、無茶な……」
「ブツブツ言ってないで、ヤル!」
塩太郎は、ダイヤモンドを拾いながらも、ダイヤモンドスライムを追い掛ける。
ダイヤモンドを頼りに追い掛けると、どうやら、ダイヤモンドスライムは、そのままログハウスの別荘の中に入っていったようである。
「シャンティー! どうやら建物の中に入ってたようだぞ!」
「見れば分かるわよ! 私達もそのまま入るわよ!」
塩太郎達『犬の肉球』は、そのままアマイモンの別荘の中に突入する。
すると、
「お待ちしておりました、『犬の肉球』御一行様と、メリル様。今日はごゆるりと、このアムルーダンジョン22階層、セドリック様の御屋敷でおくつろぎして下さいませ!」
100人以上いる、執事とメイドの軍団に挨拶される。
「何、コレ……。というかダイヤモンドスライムは、何処よ!」
「アッ! あの白髪の偉そうな執事の肩の上で泣いてるぞ! しかも、涙が全部ダイヤモンド!」
塩太郎の言葉に、シャンティーは目の色を変える。
最早、執事とメイドの話など、これっぽっちも聞いていない。
「チョット、アンタ、そのダイヤモンドスライムを私に寄越しなさい!」
シャンティーは、ダイヤモンドスライムを見つけると、そのまま白髪の執事の前まで飛んで行って、因縁を付ける。
「すみません。このダイヤモンドスライムは、当館の主人セドリック様のペットなので、流石に渡す訳にはいけません」
「ん? この御屋敷って、アマイモンの別荘じゃ無かったの?」
「アマイモン様じゃなくて、セドリック様の御屋敷です。そして、アマイモン様から今日、シャンティー様がお越しになると連絡も受けております」
「セドリックって、やたらと白蜘蛛とセットで話に出てくる奴の事?」
「ハイ。シロ様は、セドリック様の下僕で妹であらせられますね」
「下僕で妹って、ちょっと歪な関係じゃないの?」
シャンティーが、あからさまに怪訝な顔をする。
「まあ、セドリック様と、シロ様が兄妹と言ってるのは、アマイモン様だけですから。というか、アマイモン様は、このアムルーダンジョンで生まれた者は、全て自分の子供達と言い張ってますけど……」
「アムルーダンジョン? なんだか分かんないけど、兎に角、セドリックが、白蜘蛛の主人という事は、そのセドリックって奴も、大物という訳ね?」
「ですね。他の異世界では、サセックス帝国連邦という、とても巨大な国家の皇帝とかもやってます」
「何?それ? 皇帝? とても金持ちって言う事?」
金の匂いに敏感なシャンティーが、どうやら、シロのご主人様だという、セドリックに興味を持ったようである。
「金持ちと言われれば金持ちですね。何せ、大国を何国も束ねる連邦国家の皇帝ですから」
「というか、異世界? それって地球の皇帝って事?」
「違います。地球とはまた違う異世界の皇帝であらせられます。私共も、その異世界から出向でこちらの御屋敷で働いておりますから」
「何なの?そのセドリックとかいう人物は、違う異世界を自由に出入りしてるって訳?」
「ハイ。このアムルーダンジョンは、普通に私共の住んでる異世界と繋がってますから、誰でも入口を、知ってたら移動出来ます」
「何なの……アマイモンの奴、チョット秘密が多過ぎるんじゃないの……」
「この事は、普通に、南の大陸に住んでるドワーフと、後、シロ様と仲が良いブリトニー様のだけは知ってますね。
ドワーフには、結構、私共の異世界での建築を外注してますし」
「そしたら、ヨネンとかも知ってたって事?」
「ハイ。ヨネン様とセドリック様は親友なので、シロ様の武器や魔道具とかも定期的に取引きしておりました」
「まあ、よく考えたら分かる事よね。ドワーフ王国直営店だけが、白蜘蛛の武器や魔道具を独占販売してたし……」
どうやら、南の大陸の出身者の中でも、口が堅い、ある一定の者達には、アマイモンのダンジョンに繋がる異世界の事を知っていたようであった。
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