職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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136. 火山スライム

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 ピュッ!!

「うわっと!」

 ずっと不気味に笑っていた火山スライムが、突然、塩太郎目掛けて礫を飛ばして来た。

「オイ! メリル、本当にヤバいって! 地面が溶けてやがる!」

「溶岩で出来た礫ですから、当然ですね」

「何で、冷静な顔をしてるんだよ!」

「だって、相手は溶岩で出来たスライムですので、飛ばしてくるのは、普通、溶岩ですよね?」

 メリルは、不思議な顔をして塩太郎に返答する。

「だから、あの礫に当たったら、体が溶けちゃうだろうがよ!」

「当たらなければ、溶けないですよね?」

「ああ。当たらなければな。だけれども同時に攻撃も出来ねーんだよ!
 アイツに攻撃したら、村正溶けちまうし」

「ですから、永久凍土をイメージして下さい。ムネオさんなんてもう、出来てますよ?」

 そう、現在、塩太郎はムネオの大盾の後ろに隠れている。
 だって、氷が高級品だと思ってる塩太郎には、永久凍土などイメージ出来ないから。

「なんで、ムネオさんには永久凍土がイメージできんだよ!
 氷って、直ぐに溶ける高級品じゃねーのかよ!」

「ハハハ。この世界には普通に氷魔法が有る世界で、氷は身近なものじゃしな。ある程度の闘気が使える者なら、普通にあの溶岩に対応しうる闘気の錬成などおちゃのこさいさいじゃ」

「嘘だろ!?」

「本当じゃぞ。大きなレストランに行くと、どこでも水に氷が入っているじゃろ」

「まあ、確かにアレは凄いよな。タダの水に、高級品の氷が何個も入れられてるなんて……」

「塩太郎が永久凍土をイメージできないのは、氷が高級品だと頭の中で思ってしまっているからじゃ。なら、別に苦手な氷じゃなくて、炎をイメージすれば良いじゃろ。
 溶岩と同等な熱さの炎をイメージすれば、刀も溶ける事は無いと思うのじゃが?」

「それな!」

 塩太郎は、ムネオの助言で思い出す。
 確か、こんな事が前にもあった。
 その時も、塩太郎が死んだ原因となった蛤御門の変に起きた大火事を思い出して乗り切ったのだ。

 塩太郎が若い時、高杉と共にした江戸でも何度か火事がに遭遇した。
 江戸時代における江戸の火事は、「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるくらい頻繁に起こっていたのだ。

 そう、江戸時代に生きた人間は、火は滅茶苦茶相性が良いのである。
 だって、江戸の火事はお祭りのようなもの。
 火事になると、見物人が大勢押しかけ、火消しも威勢よく見せ場とばかりに、体のモンモンを肌蹴させて飛び出し、天高く自分達が所属する組の纏いを掲げる。
 町人にキャキャ言われながら、飛び火しないように建物を豪快に破壊していくのだ。
 因みに、50人に1人というくらい江戸には火消しが多かったと言われている。
 それぐらい、江戸は火事は多かったのだ。

 塩太郎は、すぐさま体に炎の闘気を纏わせる。
 ハッキリ言うと、火事は得意なのだ。
 得意というか、火事を見物するのが大好きであった。だって、いつだってお祭り騒ぎだし。

 火事を見ると興奮する。熱さなど吹き飛ぶほどに。

「なんか、行けそうな気がしてきたぜ!」

 塩太郎は、グングン体に纏わす闘気の温度を上昇させていく。

「もうちょっと、闘気を抑えた方がいいですよ。今の状態、体から炎が出てるように見えますし、基本は薄く闘気を纏わす事ですが、まあ、苦手を克服するには、見た目と気分も大事ですから、今回は良しとしましょう」

 メリルが、塩太郎の炎の闘気を冷静に分析する。

「グワッハッハッハッ!なんか盛り上がって来たぜ!」

 そう、お祭り騒ぎが大好きな江戸っ子は、燃えれば燃えるほど興奮しちゃうのだ。

 まあ、塩太郎は、一時期江戸に住んでただけで、全く江戸っ子ではないのだけど。

「行けそうですね」

「ああ。行ける! あのスライムが火消しの旗印の纏いに見えてきた。
 纏いの先に、あのスライムを付けたら、さぞ格好良いだろうな」

 塩太郎の妄想は拡がる。

「じゃあ、行くぜ!」

 塩太郎は、一瞬にして、火山スライムの懐に飛び込み、そして、一閃、スライムの弱点である魔核目掛けて、突きを放つ。

 だが、

 スカッ!

 見事に避けられ、溶岩の中に逃げられてしまった。

「嘘だろ?」

「メタル系のスライムは素早くて有名ですからね」

 メリルは、何事でもないように話し始める。

「俺の突きを躱しやがった……」

「塩太郎さん、ただのスライムだと思って、舐めていましたね。
 あのスライムは、南の大陸では見た事ありませんが、多分、メタルスライムの亜種です」

「メタルスライムって?」

「鉱物系の硬いスライムの事です。特徴は、とても素早く、経験値をたくさん貰える事ですね。
 暫く、この階層に留まり、経験値稼ぎを行いますよ」

「嘘?! こんな暑い場所に留まらなきゃならないのかよ!」

「別に、炎の闘気を纏わせ続ければ暑くないですよね?」

「まあ、確かに……」

 こうして、塩太郎達『犬の肉球』の面々は、火山スライムが生息する火山階層で、経験値稼ぎをする事となったのだった。
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