136 / 166
136. 火山スライム
しおりを挟むピュッ!!
「うわっと!」
ずっと不気味に笑っていた火山スライムが、突然、塩太郎目掛けて礫を飛ばして来た。
「オイ! メリル、本当にヤバいって! 地面が溶けてやがる!」
「溶岩で出来た礫ですから、当然ですね」
「何で、冷静な顔をしてるんだよ!」
「だって、相手は溶岩で出来たスライムですので、飛ばしてくるのは、普通、溶岩ですよね?」
メリルは、不思議な顔をして塩太郎に返答する。
「だから、あの礫に当たったら、体が溶けちゃうだろうがよ!」
「当たらなければ、溶けないですよね?」
「ああ。当たらなければな。だけれども同時に攻撃も出来ねーんだよ!
アイツに攻撃したら、村正溶けちまうし」
「ですから、永久凍土をイメージして下さい。ムネオさんなんてもう、出来てますよ?」
そう、現在、塩太郎はムネオの大盾の後ろに隠れている。
だって、氷が高級品だと思ってる塩太郎には、永久凍土などイメージ出来ないから。
「なんで、ムネオさんには永久凍土がイメージできんだよ!
氷って、直ぐに溶ける高級品じゃねーのかよ!」
「ハハハ。この世界には普通に氷魔法が有る世界で、氷は身近なものじゃしな。ある程度の闘気が使える者なら、普通にあの溶岩に対応しうる闘気の錬成などおちゃのこさいさいじゃ」
「嘘だろ!?」
「本当じゃぞ。大きなレストランに行くと、どこでも水に氷が入っているじゃろ」
「まあ、確かにアレは凄いよな。タダの水に、高級品の氷が何個も入れられてるなんて……」
「塩太郎が永久凍土をイメージできないのは、氷が高級品だと頭の中で思ってしまっているからじゃ。なら、別に苦手な氷じゃなくて、炎をイメージすれば良いじゃろ。
溶岩と同等な熱さの炎をイメージすれば、刀も溶ける事は無いと思うのじゃが?」
「それな!」
塩太郎は、ムネオの助言で思い出す。
確か、こんな事が前にもあった。
その時も、塩太郎が死んだ原因となった蛤御門の変に起きた大火事を思い出して乗り切ったのだ。
塩太郎が若い時、高杉と共にした江戸でも何度か火事がに遭遇した。
江戸時代における江戸の火事は、「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるくらい頻繁に起こっていたのだ。
そう、江戸時代に生きた人間は、火は滅茶苦茶相性が良いのである。
だって、江戸の火事はお祭りのようなもの。
火事になると、見物人が大勢押しかけ、火消しも威勢よく見せ場とばかりに、体のモンモンを肌蹴させて飛び出し、天高く自分達が所属する組の纏いを掲げる。
町人にキャキャ言われながら、飛び火しないように建物を豪快に破壊していくのだ。
因みに、50人に1人というくらい江戸には火消しが多かったと言われている。
それぐらい、江戸は火事は多かったのだ。
塩太郎は、すぐさま体に炎の闘気を纏わせる。
ハッキリ言うと、火事は得意なのだ。
得意というか、火事を見物するのが大好きであった。だって、いつだってお祭り騒ぎだし。
火事を見ると興奮する。熱さなど吹き飛ぶほどに。
「なんか、行けそうな気がしてきたぜ!」
塩太郎は、グングン体に纏わす闘気の温度を上昇させていく。
「もうちょっと、闘気を抑えた方がいいですよ。今の状態、体から炎が出てるように見えますし、基本は薄く闘気を纏わす事ですが、まあ、苦手を克服するには、見た目と気分も大事ですから、今回は良しとしましょう」
メリルが、塩太郎の炎の闘気を冷静に分析する。
「グワッハッハッハッ!なんか盛り上がって来たぜ!」
そう、お祭り騒ぎが大好きな江戸っ子は、燃えれば燃えるほど興奮しちゃうのだ。
まあ、塩太郎は、一時期江戸に住んでただけで、全く江戸っ子ではないのだけど。
「行けそうですね」
「ああ。行ける! あのスライムが火消しの旗印の纏いに見えてきた。
纏いの先に、あのスライムを付けたら、さぞ格好良いだろうな」
塩太郎の妄想は拡がる。
「じゃあ、行くぜ!」
塩太郎は、一瞬にして、火山スライムの懐に飛び込み、そして、一閃、スライムの弱点である魔核目掛けて、突きを放つ。
だが、
スカッ!
見事に避けられ、溶岩の中に逃げられてしまった。
「嘘だろ?」
「メタル系のスライムは素早くて有名ですからね」
メリルは、何事でもないように話し始める。
「俺の突きを躱しやがった……」
「塩太郎さん、ただのスライムだと思って、舐めていましたね。
あのスライムは、南の大陸では見た事ありませんが、多分、メタルスライムの亜種です」
「メタルスライムって?」
「鉱物系の硬いスライムの事です。特徴は、とても素早く、経験値をたくさん貰える事ですね。
暫く、この階層に留まり、経験値稼ぎを行いますよ」
「嘘?! こんな暑い場所に留まらなきゃならないのかよ!」
「別に、炎の闘気を纏わせ続ければ暑くないですよね?」
「まあ、確かに……」
こうして、塩太郎達『犬の肉球』の面々は、火山スライムが生息する火山階層で、経験値稼ぎをする事となったのだった。
3
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
異世界の剣聖女子
みくもっち
ファンタジー
(時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。
その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。
ただし万能というわけではない。
心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。
また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。
異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。
時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。
バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。
テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー!
*素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる