職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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135. 溶岩の階層

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「ウオリャ!ウオリャ! ウオリャ!」

 バキッ!

「痛ェ!」

「隙ありですよ。塩太郎さん」

「アホか! テメェー! まさか味方から攻撃が飛んでくるとは思わねーだろうが!」

 突然、背後からメリルの攻撃を受けて、塩太郎がおデコに血管を浮き上がらせながら抗議をする。

「私が、聖剣エクスカリバーを貸し与えて貰える対価が、塩太郎さんと『犬の肉球』の強化ですから、当然の仕事です」

 メリルは、真顔で、何が悪いんですか?という顔で返してくる。

「だな……。だんだんアンタの性格が分かってきたよ。全く悪気がなく、凄く酷い事する事も……」

「私って、そんな酷い事してますか?塩太郎さんの為を思って行動してるんですけど?」

「分かってんよ。全部俺の為なんだろ?」

「全てではありません。8割自分が聖剣エクスカリバーを借りる為、2割だけ、塩太郎さんの為です。
 少しでも、塩太郎さん達が強くなったら戦力になるかもしれませんし」

「正直だな。普通、嘘でも、全て塩太郎さんの為と言っとけよ」

「ハイ。自分もそう思います。ですが、嘘を付けないように作られてますので。主人の命令に逆らうメイドなど、メイド失格ですので。まあ、そんなふうに作られてしまったせいで、ご主人様を救えなかったのですけど……」

 いつも無表情のメリルが、気のせいか悲しそうな顔をする。

「難儀なもんだな」

「ですね」

 珍しく、塩太郎はメリルと意見が一致した。

 ーーー

 本格的なアマイモンダンジョン攻略が進んで、2週間が経った。

「何だ? この熱い階層はよ!」

 塩太郎達、『犬の肉球』が下りたった階層は、真っ赤なドロドロの溶岩が至る所に流れる階層。

「本当に、暑すぎよね。というか、流石に、あの溶岩の中に体が入ったら、流石のエリクサーでも復活させれないので気を付けなさい!」

 シャンティーが、塩太郎に強めに注意する。

「分かってんよ!それより、暑さ対策のエンチャンター掛けやがれ!」

「あの?塩太郎さん。今迄の特訓で、まだ、闘気の事、全く分かってなさそうですね。
 闘気で、溶岩の暑さを回避する事も、これくらいの溶岩なら、上手く闘気を使えば、体など全く溶けないですよ」

 また、メリルがおかしな事を言ってきた。

「お前、本当に何言ってんだ?
 あんな真っ赤な溶岩に体突っ込んだら、溶けるに決まってんだろ?」

「いえ。溶けませんよ。ほら」

 メリルは、躊躇なく、真っ赤な溶岩の中に足を踏み入れる。

「おい! お前、何やってんだ! 早く足出せって! えええええっーー!!嘘だろ?!」

 そう、真っ赤な溶岩に足を踏み入れたメリルの足は全く燃えてなかったのだ。

「お前、どうやったんだよ!」

「ですから、普通に闘気を使っただけですが?」

「闘気って、ただの炎じゃなくて溶岩だぜ?!」

「ですので、氷をイメージして闘気を練るだけですよ」

「氷って、相手は溶岩だぞ!普通、 直ぐに溶けるだろ!」

「ですので、永久凍土をイメージすればいいんですよ」

「永久凍土って、何だよ?」

「ん? 永久凍土を知らないんですか?絶対に溶けない氷の事ですよ」

「そんなのある訳ねーだろ! 氷って、滅茶苦茶高いんだぞ!
 夏に食べるかき氷が、どんだけ高いのか、お前、知らねーだろうがよ!」

 氷が滅茶苦茶高級品だった幕末出身の塩太郎は知らなかった。
 世界には絶対に溶けない氷が有る事を。
 そして、滅茶苦茶氷が高級品だと思ってる塩太郎には、絶対に永久凍土をイメージできない事を、また、メリルにも知らなかったのである。

 とか、やってると、

 テラテラテラティーン!火山スライムが、塩太郎達一行の前に現れた。

「何か、メッチャ熱そうなスライムが溶岩の中から出てきやがったぞ!」

「敵ですね」

 メリルが冷静に返す。

「どうやって倒せばいいんだよ! 刀を刺したら、絶対に俺の村正溶けんだろ!」

「ですので、永久凍土をイメージして、斬れば問題ないかと?」

「だから、永久凍土なんか知らねーてッ!」

 火山スライムは、塩太郎達を見て、不気味に笑っている。

「ですが、永久凍土をイメージしないと、この火山スライムは倒せないですよ」

「だから、倒せる訳ねーての! アンタが倒してくれよ!」

「私は、あくまで塩太郎さん達を鍛える教官みたいな役割を与えられてるだけなので、基本、敵との戦いは見てるだけです」

「お前、2階層で俺とムネオさんが特訓してた時、シャンティーとエリスを守って、敵を倒してたじゃねーかよ!」

「ですから、私はご主人様であるサイト様の遺志に逆らえないのです。
 エリスさんは、私が守るべき護衛対象なんです」

「だから、ゴトウ・サイトは、もう死んでるんだろ!」

「ですから、私は、サイト様の専用メイドとして作られてますから、サイト様が死んでも尚、サイト様の遺志には絶対に逆らえないのです!」

「主人が死んでも逆らえない定めって、そんなのもう呪いじゃねーかよ!」

「ですね。もう呪いですね。しかし、例え呪いだとしても、私はずっとサイト様に縛られていたいのです。それが私の意思でも有るのです」

「お前、どんだけマゾ少女なんだよ!」

「私は、ガブリエル様を元に作られてますから、基本的な性格はガブリエル様に似てる筈なんですが」

「確かに、ガブリエルって、執念深い女だもんな……350年間もの間、ゴトウ・サイトの敵討ちする為に、異界の悪魔ベルゼブブに挑み続けてんだろ?」

「言い方が悪いです。決して諦めない、意思の強い女性と言って下さい!」

 ゴトウ・サイトと同じく、メリルの創造主でもあるガブリエルをディスられ、メリルは珍しく怒った。
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