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134. メリルの特訓(4)
しおりを挟むメリルの常軌を逸した特訓が始まってから、1週間。
塩太郎が、内蔵破裂の大怪我を負っても、問題無く闘気が張り続けるようにあった頃、やっとこさ、メリルのOKが出た。
「これで、致命傷を負っても、自分自身でエリクサーが掛けれるようになりましたね」
メリルは、無表情だが満足そうに話す。
「左様で……」
塩太郎も、感情を込めずに返す。
何故なら、この1週間、メリルに何度も腹を蹴られ内蔵破裂の大怪我を負わされたのだ。
しかも、10回以上魔物に殺されてるし、ムカつくなという方が無理である。
「塩太郎よ。そうむくれるでない。おかげで結構、レベルアップできたであろう」
膨れっ面の塩太郎を、ムネオが宥める。
まあ、ムネオに比べたら、塩太郎なんて大した事はない。
だって、ムネオは、大盾を構えるだけで攻撃も避ける事も出来なかったのだ。
メリルに腹を蹴られ、内蔵破裂した魔物の大群に飲み込まれて死ぬ事120回。
悲惨さからいったら、塩太郎などまだまだなのであった。
「そうよ。アンタ、メリルに感謝しなさい。メリルのお陰で、アンタ相当強くなれたんだから!」
シャンティーは、偉そうに上から目線で言ってくる。
「シャンティー! お前は、何もしてねーだろうがよ!」
そう、シャンティーは、優雅にエリスとテーブルを拡げて紅茶を飲んでただけ。
護衛に、最強助っ人メリルをつけて。
「私は支援職だから、アンタ達、アタッカーや壁役のように汗水垂らさなくてもいいのよ!
アンタらの役目は、私とエリスを守る事でしょ!
分かってんの? 私らが死んだら、的確な支援が受けれなくなるんだからね!」
「今までやってきたのは、支援が受けられなかった場合の練習だろうが!お前、何言ってやがんだ?」
「あっそう? アンタ、これからは、私の支援受けなくても良いという事?
アンタがそんな事言うなら、私にも考えがあるんだからね!」
「そしたら、お前の存在価値がねーだろうがよ!」
「ハア? アンタ馬鹿? 私は、可愛いだけでも存在価値はあるじゃない。
こんなプリティーで可憐な妖精が、どこに居るというのよ?」
シャンティーは、わざわざ塩太郎の前まで飛んで行き、クルリと回って見せる。
「自分で言うか?」
「あら? 私は事実を述べただけよ?」
「あの……塩太郎さんと、シャンティーさんが仲が良いのは分かりましたのだ、早く次の階層に向かいましょう。
結構、時間が押してますので……」
メリルが申し訳なさそうに、話に割って入る。
「時間が押してるのは、アンタのせいだろうが!
こんな特訓、ダンジョン攻略しながら、やればいい特訓だっただろうがよ!」
「すみません。私は気づいた事を早く終わらしときたいタチですので。
塩太郎さんも、人が鈍臭いのを、ずっと黙って見ていないといけないのって、凄くイラつきませんか?」
「イラつくって、アンタ、俺の事、そんなふうに見てたのかよ?」
塩太郎は、あまりのメリルの口の悪さにビックリする。
まあ、メリル的には全く悪気無く言ってるので、悪意だけで悪口を言うシャンティーより、よりタチが悪い。
「ん? 事実じゃないんですか?」
メリルは、全く顔色を変えずに塩太郎に聞き返す。
「まあ、アンタが言うんだから、事実なんだろうよ」
塩太郎は、面倒臭くなって投げやりに答える。
取り敢えず、メリルは嘘が言えない真面目な少女だという事だけは分かった。
じゃなければ、ご主人様のゴトウ・サイトが死んでからも、絶対的な強者である異界の悪魔ベルゼブブを倒して、ゴトウ・サイトの敵討ちをしようなどと思わないし。
「それでは行きますか。塩太郎さん達が特訓してる内に、下の階層に行く階段を見つけておきましたので」
「左様で……」
てな感じで、やっとこさ、塩太郎達『犬の肉球』の面々は、本格的なアマイモンのダンジョン攻略を開始できたのだった。
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