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131. メリルの特訓
しおりを挟むアマイモンのダンジョンの敵は、大蛇だけじゃない。
その他にも、強力な敵がウジャウジャ出てくる。
「オイ!2階層目から、この敵のレベルってヤバイんじゃないのか?」
塩太郎は、必死に敵と戦いながらシャンティーに話し掛ける。
「不味いわね……」
流石のシャンティーも、ちょっとヤバイと思ってるようだ。
エリスも、相当な数の高位精霊を出してるし、今の段階で、いっぱいいっぱいである。
とか、言ってるうちにも、
ガブッ!
なんかよく分からん種類の獣の魔物が、塩太郎の腹をガブリと噛み付く。
「痛えーー!!」
そして、その獣の魔物は、腹に噛み付いたまま高速回転して、塩太郎の横っ腹を引きちぎった。
「ゲェー! 内蔵飛び出た!」
「喋ってないで、早くエリクサーかけなさい!」
「そんな事、言ったって、敵が居るのにかけれんだろ!」
「アンタ、早くしないと出血多量で死ぬわよ!」
「体の半分以上残ってたら、エリクサーで復活出来るんじゃなかったのかよ!」
「流石に、血液が全部なくなったら死ぬに決まってんでしょ!」
「そうなの?」
「さあ、どうでしょう?」
「お前、知らねーのに適当なこと言うな!」
「だって、試したことない事は、流石に分かんないでしょ!」
とか、戦闘中にも関わらず、塩太郎とシャンティーが口喧嘩してると、
「はぁ……しょうがないですね……」
メリルが、乱戦の最中だというのに、塩太郎の所までやってきて、多分、ガブリエルの姫ポーションと思われるエリクサーを、塩太郎の抉られた腹にぶっ掛ける。
「おっ! 治った!」
「塩太郎さんが死んでしまわれると、アマイモンさんとの契約が破棄になってしまうので、仕方が無くです。
もうちょっと連携して対策しないと、簡単に死んでしまいますよ」
メリルは、冷静に塩太郎に助言する。
「そんなこと言ったって、ここまでの乱戦じゃ、どうする事もできんだろ!」
塩太郎は、敵と戦いながらも、メリルに返す。
「それでもです。ベルゼブブ攻略レイドは、こんなもんじゃないですから。
聖剣以外では絶対に倒せない異界の悪魔が、何百匹も居るんです。
倒せない強敵を何日も相手し続ける事に比べれば、こんなの試練とも言えませんね。何せ、倒せる敵と戦ってる訳ですから」
多分、メリルは、何度もベルゼブブ攻略レイドに参加してる。
そして、聖剣を持たずにベルゼブブ攻略レイドが続く何日間も、倒せない強敵と戦い続ける経験を、実際にしてた事があるのだろう。
「俺は、異界の悪魔を殺せる村正持ってるから関係ねーだろ?」
「ベルゼブブ攻略レイドは、3日間に及ぶ長期戦です。
その間、食事も睡眠も取る事もできません。
エリクサーも無限じゃないですし、怪我をせずに戦い続ける事も重要なんです」
「ん? ベルゼブブ攻略レイドって、たった3日間しかやんねーのかよ?
もっと、長期に渡る戦争だと思ってたんだけど?」
「そうですよ。その間、ずっと高位の魔物と異界の悪魔が襲ってきて、食事をとる時間も寝る時間もないんです。
私達は、何度もベルゼブブ攻略レイドをやってきて、3日間が限界という結論に達したんです」
「まあ、休む暇がねーのなら、3日間が限界かもしんねーな!」
カキン!カキン! カキン!
塩太郎とメリルが話してる間も、敵の攻撃は続いている。
そして、メリルは敵の攻撃を余裕綽々で躱しつつ、話を続ける。
「ですね。2週間続いた1回目のベルゼブブ攻略レイドでは、殆どの参戦した人間が戦死してしまいましたし……
2回目の1週間続いたベルゼブブ攻略レイドでは、5人に4人の人間が死んでしまいました。
そして、何度かやってるうちに、3日目以降に、極端に戦死者が増える事に気付いたのです。
それからは、きっかり3日間で、勝敗に関わらず引くようにしてるのです。
あまりに、被害が甚大ですと、立て直すのに時間が掛かってしまいますから」
「それでも、結構な人数が死ぬんだろ?」
「2人に1人は死にますね」
「半分も死んじゃうのか?」
「異界の悪魔を殺せるのは、聖剣を持った人間だけですから、どうしようもないんです……」
どうやら、ベルゼブブ攻略レイドは、塩太郎が思ってたより、相当過酷な戦いであるようだった。
「でも、今回は、俺の村正と、それからこのダンジョンにあるという聖剣エクスカリバーが増えるんだろ?」
「そうですね」
「でも、2振り増えただけで形勢は変わるのかよ?」
「私は強いですから」
「俺も強いっての!」
「塩太郎さんは、まだまだです。最低でもハナさんレベルになってもらいませんと」
「俺が、ハナより弱いっていうのかよ!」
「剣姫として生まれたハナさんは、幼少期の頃からガブリエル姫様や、アン様、ブリトニー様の英才教育を受けてますから、今の塩太郎さんより相当強いと思われますね」
「お前、ハッキリ言うな……」
「私に今回与えられたミッションは、塩太郎さんを、異界の悪魔と戦えるレベルまで引き上げる事ですから。
そして、それが聖剣エクスカリバーをレンタルできる条件ですので」
「ていうか、お前、まだ、何もしてねーじゃねーか!」
「塩太郎さんが死なないように、エリクサーを掛けました」
「それだけ?」
「強くなるのは、塩太郎さん自身ですから、もっと言うと、塩太郎さんの気の練り方がまだまだ甘いですね。
体に纏う闘気を、もっともっと薄く練り込んで下さい。じゃなければ、」
バキッ!
「うげぇーー!!」
「このように、簡単に内蔵が破裂するような攻撃を受けてしまいますけらね」
メリルの蹴りが、塩太郎の腹にヒットした。
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