職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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130. 蛇の開き

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「うおりゃぁーー!」

 塩太郎は、雄叫びを上げながら、大蛇の口の中目掛けて突進する。

 まあ、大声ぐらいあげないと、自分から大蛇の口の中に突っ込んで行くという無謀な行為は出来ないから。
 もっと言うと、大声出して恐怖を紛らしてるとも言う。

 だって、幕末最強と恐れられていた塩太郎でも、大蛇の口の中に、自ら飛び込んで行くなんて初めての経験だしね。

 大蛇は、自ら飛び込んで来る塩太郎を、餌が来たと大口を開けて待ってくれている。

 塩太郎は、そのまま、無防備に口を開けた大蛇の口の中に飛び込むと、
 愛剣村正を、塩太郎から見て、大蛇の左側の口の端から、真っ直ぐに走りながら斬り裂いていく。

 ズザザザザザザザザザザザーー!

「アホな奴め! 自分から口を開けて待っててくれるとは。 
 まるで、まな板の上の鯉だな!お望み通り、そのまま開きにしてやるぜ!」

 グギャァァァァァァァァァーー!!

 本来、大蛇の口の中は、普通の剣など通さない強度なのだが、斬ってるのは、幕末最強の人斬りで、尚且つ、この世界では聖剣である村正。7Sランクと思われる大蛇であっても簡単に斬れちゃうのである。
 しかも、日本でも妖刀と恐れられた村正は、極限まで実践向きで、倒幕を目指す幕末志士から、最も支持された刀である。

「ウリャウリャウリャウリャ! お前の口の中に入った時点で、俺の勝ちは決まったようなもんなんだよ!」

 塩太郎は、調子に乗って走り続ける。もう、大蛇を開きにする事しか考えていない。

 そして、塩太郎が蛇の腹の中に入って、8分後。

「ちょっと! 塩太郎の奴、何やってんのよ!5分で帰って来いといってたのに、もう、8分も経ってるじゃないの!」

 塩太郎を待ってるシャンティー達は気が気でない。
 だって、大蛇の魔物は50メートル以上の長さなのだ。
 しかも、どうやら、メリルが倒した大蛇より長くて80メートルはありそうである。

 そんで、開きにする事に拘ってる塩太郎は、浅めに剣先だけを大蛇に突き刺してるんじゃなくて、しっかりと開きにする為に、鍔あたりまで深く大蛇に刀を突き刺してるので、最初は気持ちよく斬れていたのだが、途中から、相当斬るスピードが落ちていたのだ。

「あのバカ死にたいの……」

 シャンティーは、柄にもなく心配する。

 だが、2分後、

「アッ。大丈夫そうですよ。微かに声が聞こえます」

 メリルが、シャンティーに教える。

 そう。塩太郎は、80メートル級の大蛇を開きにする事に成功していたのだ。

「うおーー!! やってやったぜ!」

 時間としては、10分。
 本来なら体が溶けていてもおかしくなかったのだが、塩太郎が着てる着物は、白蜘蛛製。
 普通に、酸耐性が付与されていて、ついでに、体に付いた酸もある程度なら無効にする事もできちゃうのであった。

 まあ、簡単に言うと、塩太郎はノーダメージ。
 シロが作った、この世界では一番最新式の塩太郎の着物は、一応、この世界に現存する白蜘蛛作の服の中で一番高性能であったのだ。

「オーイ! 蛇の開きが出来たぞ!
 丸焦げじゃないので、素材としても高く売れるんじゃねーのか!」

 塩太郎は、殺した大蛇を自分の魔法の鞄の中にしまうと、大声で80メートル先にいるシャンティー達に話し掛ける。

「絶対に高く売れるわよ! 真っ直ぐに斬れてるし、開きになってるから、大きい面積で皮を使えるからね!
 しかも、南の大陸には、こんな大蛇いないから、ぼろ儲けよ!」

 シャンティーは、先程までの心配など忘れて、ルンルン気分で塩太郎の元に飛んでいく。

 そう、シャンティーは、とても金にガメツイ、現金な女なのであった。

 取り敢えず、シャンティーと交渉する場合は、何でもお金で解決できる。

 そして、シャンティーは、塩太郎の元に訪れると、塩太郎の姿を見て驚愕する。

「アンタの服、全く、溶けてないの?」

「ああ。そのようだな。最初、テンション上がって大蛇を斬ってたんだが、途中で体が溶けるという話を思い出して肝を潰したんだが、見たところ、全く溶けてなかったので、そのまま斬りきってやったんだ!」

 シャンティーは、自分の魔法の鞄から、鑑定魔道具を取り出して、塩太郎の着物をチェックする。

「やっぱり、白蜘蛛製の服は凄いわね。大蛇の腹の中の酸は、結構、強力な部類だったと思われるけど、全く溶けないなんてね……」

「でも、これで、大蛇が出てきても余裕だな!」

「本来は余裕じゃないけど、アンタの村正と服のお掛げで余裕になってんのよ!
 アンタ、白蜘蛛に足を向けて眠れないわね」

「だな」

 塩太郎は、先程まで、少し酸がついて汚れていた着物が、いつの間にか、自動洗浄機能で綺麗になっているのを見て、とても深く頷いたのだった。
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