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125. 親の威厳
しおりを挟むメリルと塩太郎達『犬の肉球』の面々は、森の奥に見える異界の悪魔アマイモンが住むという古城に向かう。
「なんか、おどろおどろしい雰囲気がするな……」
「そうね。雨が降ってないのに、無意味に雷が鳴る所や、カラスも居ないのにカラスの鳴き声とか聞こえ所とか、完全にアマイモンの趣味よね……」
塩太郎の独り言に、シャンティーが反応する。
「アマイモン様が言うには、吸血鬼が住むような古城をイメージしてこの城を建てたらしいです」
メリルが説明する。
「アマイモンらしいわね……」
「オイ、古城の周りに湖が見えるぞ! これは敵の侵入を阻む為だよな!」
塩太郎が、興奮気味にメリルに質問する。
「前、来た時は有りませんから、『犬の肉球』の皆様を迎える上で、アマイモン様が張り切ってしまわれたと思われます……」
「無駄に派手好きなアマイモンらしいわね……」
「俺達を迎える為に、わざわざ作ったというのか?」
「アマイモン様は、派手好きで、サービス精神が無駄に旺盛な方ですから、これくらいは平常運転です」
「まあ、確かに京都で見た時、滅茶苦茶派手な格好してたな……」
塩太郎達はお喋りしながら、湖に掛かった石畳の橋を渡り、遂に、異界の悪魔アマイモンが住むという古城に到着した。
「アマイモン様! 約束通り、塩太郎さんと、『犬の肉球』の皆様を連れてきましたよ!」
メリルが、古城の荘厳な門の前で、大声でアマイモンを呼ぶ。
すると、
ギギギギギーーと、無駄におどろおどろしい音を立て、勝手に観音開きの門がゆっくりと開かれる。
そして、
「これはこれは、『犬の肉球』の皆様と、塩太郎君!お待ちしておりました!」
豪華なゴシック調に装飾された城の中に、これまった90年代イタリア風の派手な紫色のスーツを着た異界の悪魔アマイモンが、テンション高めに、西洋の貴族のような右足を後ろに引いてお辞儀をする礼をして、塩太郎達を慇懃に迎え入れる。
「久しぶりね!アマイモン。300年振りぐらいかしら?
というか、アンタが、こんな豪華な城に住んでたとは驚きよ!
アンタって、結構、お金持ちだったのね!」
どうやら、シャンティーの金持ちセンサーに、異界の悪魔アマイモンは、引っかかったようだ。
「ですね! このダンジョンで取れる素材とかが、南の大陸で高く売れますのですよ!
それに、最近では、私の娘のシロちゃんが、高価な魔道具や武器を売って、私に仕送りしてくれていましたので、結構、僕って、お金持ちなんですよね!」
アマイモンが、シャンティーの質問に悪びれること無く、テンション高めに答える。
「アンタが、アラクネの白蜘蛛の親の訳ないじゃない!」
「いえいえ、濃ゆい私の魔力が漂うこのダンジョンで生まれた子達は、全て私の子供達ですよ!
現に、シロちゃんは、私の事をお父さんと言ってくれますしね!
まあ、セドリック君は、決して、私の事をお父さんとは呼びませんけど!」
アマイモンは、少しだけ寂しげに答える。
「なるほどね。なら、アンタが命令したら、白蜘蛛は、私に素敵なドレスを作ってくれるという訳ね!」
「ですね! 私がお願いしたら、すぐにシャンティーさんに、素敵なドレスを作ってくれると思いますよ!
なにせ、シロちゃんは、お父さん子ですから、僕の言う事は、シロちゃんのご主人様であるセドリック君の次に聞いてくれますから!」
アマイモンは、ハイテンションで答える。
「アンタが、白蜘蛛の一番じゃないの?」
「シロちゃんは、お兄ちゃん子ですから仕方が無いですよ!
まあ、親としては、兄妹が仲良くしてるのは微笑ましいですから、決して私がシロちゃんの二番目でも、決して悲しくなどないです……グス」
「アンタ、やっぱり、二番で悲しいんじゃない!」
「大丈夫です! シロちゃんの父親は私だけですから!
例え、セドリクック君だって、シロちゃんの父親にはなれないんですから!」
なんか、よく分からんが、アマイモンは必死になってシャンティに言い訳をする。
「取り敢えず、アンタと白蜘蛛の関係は分かったわ。それじゃあ、父親のアンタが、白蜘蛛に頼んで、特急で私のドレスを頼んで頂戴!」
「頼むのは問題ないですけど、特急では出来ませんね……まだ、セドリック君とシロちゃん、幕末日本から帰ってきてませんし……」
アマイモンは、申し訳無さそうに答える。
「何ですって、まだ、白蜘蛛は、この世界に帰ってきてないの?!」
「結構、色々、立て込んだ事情がありまして、私もいつ帰ってくるのか、実を言うと分かんないんですよね……」
「何なのよ!それ?だけれども、帰ってきたら、私のドレスを第一に作るように命令してよ!約束なんだからね!」
「分かってますよ。まあ、シャンティーさんとも、もう古い仲なので、シロちゃんが帰ってきたら、真っ先にシャンティーさんのドレスを作るように言っておきます」
「そうね!それがいいわね!約束破ったら、モッコリーナに言いつけやるから、覚悟しておきなさい!」
「それだけは、勘弁して下さい!」
どうやらアマイモンは、たまにシャンティーの口から出てくる、モッコリーナなる人物にビビっているようだ。
モッコリーナとは、西の大陸と東の大陸との黒龍戦争の時、黒龍と戦ったシャンティー達『犬の肉球』の仲間で、所謂、勇者パーティーの一員。
因みに、勇者パーティーとは、『犬肉球』のメンバーと、赤龍アリエッタと、大魔法使いモッコリーナが合わさったパーティーを指した言葉。
そして現在、モッコリーナは、魔法国家サリスにある、サリス魔法学校の校長をしていたりする。
何故だか分かんないが、異界の悪魔アマイモンは、大魔法使いモッコリーナに、昔から頭が上がらないのであった。
そして、この異界の悪魔アマイモンと、大魔法使いモッコリーナの関係性の話は、また、別の話。
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