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118. 冒険者ギルド会議(1)
しおりを挟む「そろそろ、時間だが、全員揃ってるか?」
不穏な空気が流れるムササビ冒険者ギルド本部、3階エントランスの魔道式エレベーターの反対側の壁にあるロココ調の豪華なデッカイ扉が開け放たれると、中から銀色の長い髪をなびかせて、ブリジアが颯爽と登場してきた。
言わずと知れた、ムササビ冒険者ギルド本部長であり、ウルフテパートCEOであり、その正体は、1000年以上前に世界中の城塞都市を火の海にして、人々を恐怖のドン底に落としたという『厄災の銀狼』、九尾の狼である。
因みに、腹黒シャンティーが唯一、頭が上がらない人物でもある。
「ブリジア様! 『鷹の爪』が、案の定、来てませんよ!」
すかさず、シャンティーが告げ口する。
「相変わらずじゃな……何度注意しても、必ず遅れてくる……。
どれだけ代替わりしても、絶対に遅れてくるとは、最早これは、『鷹の爪』が、冒険者ギルド会議に遅れてくるのは、伝統のようなものじゃな……」
なんか、よく分からんが、ブリジアは呆れている。
どうやら、『鷹の爪』が、冒険者ギルド会議に遅れてくるのは、毎度の事であるようだ。
「『鷹の爪』はほかっといて、もう時間じゃ!皆の者、会議室に入ってくるように!」
ブリジアは、そう言うと、サッサと、元の扉の中に入っていってしまった。
取り敢えず、塩太郎達『犬の肉球』の面々も、ブリジアの後を追い、豪華な扉の奥にある会議室に入る。
会議室は、エントランスより一回り小さな広さで、中央に円卓が置かれており、円卓の上には、それぞれの冒険者パーティーの名前と順位が書かれた名札が置かれている。
「シャンティーあったぞ! 8位『犬の肉球』だってよ!」
塩太郎は、自分達の名前が書かれた名札を見つけて、興奮気味にシャンティーに報告する。
「そんなの分かってんわよ! 私達『犬の肉球』は、由緒ある伝説の冒険者パーティーなのよ!
名札見つけたくらいで、ワーワー騒ぎなさんな。300年前までは、毎年、この冒険者ギルド会議に参加してたの。新参者の冒険者パーティーみたいに恥ずかしい」
シャンティーが、呆れた顔をして塩太郎に注意する。
「俺は、初めてだからしょうがないだろ!
ムネオさんだって、初めてだから興奮してるんじゃないのか?」
塩太郎と同じく、多分、初めてであろうムネオに振る。
「ワシは、『鷹の爪』の副団長をしてた時期があるから、何度か冒険者ギルド会議に参加しておるな……」
ムネオは、申し訳なさそうに塩太郎に答える。
「俺だけ、初心者……」
「そういう事よ! アンタも、名門『犬の肉球』のメンバーとして、シャキッとしなさい!
若い連中は、『犬の肉球』を見た事ない奴らばかりだから、そんなにはしゃいでると軽く見られて舐められても知らないわよ!」
シャンティーは、強めに塩太郎に注意してくる。
「チッ!分かったよ。渋い顔して、その辺の奴らを威嚇しとけばいいんだろ?」
「そうよ!堂々と、威嚇しとけばいいのよ!
そして、喧嘩を売ってくる奴がいたら、その時こそ力の違いを見せつけてやればいいの!」
シャンティーは、手の平に拳をパンパン当てて、何故か戦闘モードになっている。
「なんか、やってる事がヤクザ者と変わらんのだが……」
「何言ってんの!私達は、『犬の肉球』という代紋を守らないといけないの!
というか、『犬の肉球』を舐める奴が、この世から居なくなるまで、徹底的に調子こいてる奴らを拳で分からせてやるのよ!」
「ムネオさん……『鷹の爪』も、こんなだった?」
塩太郎は、他の冒険者パーティーのやり方も知りたくて、ムネオに確認してみる。
「さあ……そもそも、『鷹の爪』に喧嘩売って来る者など居なかったので、分からんな……」
ムネオは目を伏せて、塩太郎に答えるのだった。
でもって、集まった冒険者パーティーが所定の位置に座ると、ブリジアが仕切り出す。
「今から点呼をするから、呼ばれた冒険者パーティーの代表は、返事をするように!
それでは、ギルドランキング第1位『三日月旅団』!」
「ハイ!」
『三日月旅団』の団長ミカサ・ムーンが、直立不動で立ち上がり、緊張気味に返事をする。
「次、第2位! 『カワウソの牙』!」
「オウヨ!」
『カワウソの牙』団長の狼耳族のヤナトは、立ち上がりもせずに、その場で返事をする。
まあ、ミカサが立ち上がって返事をしたのは、多分、初めてギルドランキング1位を取ったので緊張してたのだろう。
だけれども、ミカサが緊張してる割りには、誰も『三日月旅団』が1位になった事に、注目していないようであった。
まあ、実際は、ガブリエル率いる『犬の尻尾』や『犬の肉球』のように、『三日月旅団』より実力がある冒険者パーティーがあるのを誰しも知ってるのと、
これも多分だが、ミカサ達姉妹が付けてる認識阻害の指輪が少なからず影響してる事は、何となくわかる。
折角、ギルドランキング1位を取ったのに、誰も注目してくれずに落ち込んでるミカサを見て、少しだけ可哀想になる塩太郎だった。
「次、第3位!『鷹の爪』!」
「……」
「『鷹の爪』は、毎度の事ながら遅刻じゃな……。じゃあ、次は、」
バタン!
「ちょっと、待った! 順位について、大いに異議あり!」
ブリジアが、次の出欠を取ろうとした所で、何故か、全身傷だらけで、ボロボロになったハラ・クダシ率いる『鷹の爪』の面々が、会議室の扉を勢いよく開け、必死な形相で現れた。
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