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113. 何よりも金が好き

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 塩太郎達『犬の肉球』の面々は、引き続き3ヶ月間の修行を経て、ハラハラ城塞都市に到着した。

 何故、ムササビじゃなくてハラハラに向かったというと、レンタル中の聖剣村正を、虎子から返して貰う為だ。

 塩太郎達は、ハラハラ城塞都市に着くと、すぐに虎子の自宅兼、工房兼、研ぎ屋に向かう。

「アッ!シャンティーさんと、エリスさんと、ムネオさん!家の旦那がお世話になっております!」

 刀研ぎの仕事をしていた虎子が、塩太郎達に気付くと、走り寄ってきて深々と頭を下げる。

「俺は、いつからお前の旦那になったんだよ!」

 塩太郎は、すぐに否定する。このまま、なし崩し的に嫁になられたら面倒だし。

「私は、レンタルした村正のお金を払う事が出来ないので、体で塩太郎さんに払う事にしたんです!」

 虎子は、全く悪びれる事なく、たわわな胸を張って言う。

「ただ、村正を身近で研究してーだけだろ!」

「アレ?バレちゃいました?」

 虎子は、テヘペロしながら答える。

「バレバレだっちゅーの!」

「でも、僕は塩太郎さんの事が好きですから、結婚するのもやぶさかではないです!
 それに、聖剣村正の側にいつも居たいので、僕が塩太郎さんのお嫁さんになる事は決定してますから!」

「ただ、お前は、レンタル料金を踏み倒したいだけだろうが!」

「お金なら、直ぐに稼げますよ!
 なにせ、今、この世界には、僕以上の刀鍛冶は居ませんから、レンタル料金なんか、直ぐに返せちゃいます!
 それに、塩太郎さん。僕と結婚するとお得ですよ!
 お金も、じゃんじゃん稼いであげますし、武器のメンテナンスもタダ。
 しかも、シャンティーさんのお小遣い制もキープしてあげます!
 なんと、いつでもお財布に100万マーブルとか、どうですか?」

「嘘だろ……いつでも財布に100万マーブルって、俺は一体、何に金を使えばいいんだよ!」

 塩太郎の心は揺れる。いつでも財布に100万マーブル入れてくれるなら、虎子と結婚してもいいかもと。

「しかも、浮気OK! 僕、刀鍛冶の仕事が忙しんで、あまり、塩太郎さんに構ってあげられないと思うんで!
 だけれども、その代わり、たまに村正を貸して下さいね!」

「やっぱり、お前の目的は村正かよ!」

「ですよ!村正80パーセントで、塩太郎さん20パーセントですね!
 だけど、僕の中で20パーセントって、かなりの割合ですよ!
 なにせ、今までの僕は、100パーセント聖剣を自分の手で作り出す事だけを考えてましたから!」

 虎子的にマトモな事を言ってる気なのか、少しも悪びれる様子が無い。

「塩太郎、いいじゃない。アンタ、虎子と結婚しなさい。そしたら、『犬の肉球』の武器や防具のメンテナンスは、一生タダになるじゃない。
 しかも、お小遣い100万マーブルを、虎子が出してくれるんなら、私がアンタに1万マーブル渡さなくて済むんでしょ?
 それって?最高の事じゃない!」

 なんか知らんが、シャンティーはとても嬉しそうだ。

「お前、それは、俺がタダ働きするという事じゃないのか?」

 塩太郎は、冷静に質問する。

「別にいいじゃないの?虎子にお小遣い貰えるんだから。しかも、アンタ、そんなにお金使わないじゃない。お金使うと言っても一人で飲みに行くだけでしょ?」

「ちがわい!俺は今、金を貯めてるんだよ!
 もしかしたら、この世界から暫く帰れねーかもしれねーから、どっかに道場でも開いて、俺が編み出した神道異界流を広めようと考えてな!
 なにせ、この世界では、俺は剣聖だし、門弟もたくさん集まると思うしな!」

 塩太郎は、剣聖になってから考えるようになった、今後の人生の目標を披露する。

「アンタ、剣聖になって、この世界に留まりたくなって来てるって事?」

 シャンティーは、塩太郎に質問する。

「勿論、元の世界にも帰りてーよ!そして、高杉を手伝い徳川家を倒して、天皇中心の世界を作る事に成功したら、もう一度この世界に戻ってこようかと思ってる。
 なにせ、この世界では、俺は剣聖様だからな!
 これは、自分の流派をこの世界に広めねーといけないだろ!
 元の世界では、誰も闘気使えないから、俺の流派使える奴、誰もいなそうだし……」

「なるほどね。アンタも欲が出てきたと。そしたら益々、働かないと行けないわね。お小遣い5000マーブルにしとく?」

「それはちょっと……」

 流石、5000マーブルはキツ過ぎる。
 そう、最近、塩太郎は、ボトルキープというシステムを覚えたのだ。
 ムササビの馴染みになった店で、日本酒の一升瓶をキープしてたりする。
 そして、一升瓶の一番安い日本酒が3500マーブル。
 お小遣い5000マーブルだと、ボトルキープしてたお酒が無くなった時、新たに日本酒をボトルキープしようとすると、おつまみ1500マーブル分しか頼めないのだ。
 それは困る。おおいに困るのだ。
 だって、いつもおつまみ代に、大体、2000マーブルから2500マーブル使ってるから。

「大丈夫ですよ! これからは、僕が塩太郎さんに、嫁としてお小遣いあげますよ!
『犬の肉球』で稼いでる分は、道場を建てる為の開店資金に回して下さい!しかも、毎月3万マーブル差し上げます!
 結婚してくれたら、直ぐにでもお小遣い100万マーブルにするのも可能です!」

 虎子は、すぐに自分の魔法の鞄の中から、3万マーブルを取り出す。

「いや、別に、シャンテーから1万マーブル小遣い貰ってるから、いいって!」

 塩太郎は、ここで3万マーブル貰ってしまうと、虎子から逃げられなくと思って、丁重に断りを入れる。

「貰っときなさい」

「えっ?」

「だから、貰っときなさいて言ってんのよ!
 どうせ、虎子はレンタル料金払う気ないんだから、貰える金は直ぐにも貰う!」

 シャンティーは、虎子の手から3万マーブル毟り取り、塩太郎に押し付ける。

「お前、本気に言ってんのか?」

「本気も本気! アンタに、1万マーブル払わなくていいなんて、最高じゃないの!」

「でも、お前は、俺が稼いだの金を貯めてくれてんだろ?
 そしたら、別に同じじゃねーのか?」

「アンタ、アホ?私は、自分の財布から少しでも現金が無くなるのが嫌なのよ!
 それが、人から預かってるお金でも!」

 シャンティーは、偉そうに上から目線で言う。というか、何故かいつもより高い位置まで飛んでるし。

「お前、どれだけ、金が大好きなんだ……?」

「ん? お金の為なら、土着の悪魔に魂を売っても良いくらい好きだけど、それが何か?」

 シャンティーは、当たり前のように言い切った。

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