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104. 出来るドワーフ
しおりを挟むワッシーとワシ子を放し飼いにして、シャンティーは、ズンズン未攻略ダンジョンの中に入っていく。
1階階段フロアーに到着すると、大きめな野営用のテントが数張り設置されていて、なにやら生活感が漂っている。
そんなテントの中の一際大きなテントに、シャンティーは、そのまま無遠慮に入っていってしまった。
「おい! 待てよ!」
塩太郎も慌ててテントの中に入るが、もう既に、シャンティーとテントの中にいた冒険者が言い争いを始めていた。
「アンタの冒険者ブレスレットを貸しなさいな!」
「何言ってやがんだ? このダンジョンは、今、『鷹の爪』の貸し切りなの知らねーのか!」
「そんなの知ってんわよ! たがら、アンタにお願いしてんでしょが!
冒険者ブレスレット貸しなさいって!
一軍の連中と、冒険者ブレスレットの同期化も毎日やってんでしょ!
私は、お宅の団長に、ちょっと用事があんのよ!」
シャンティーは、ぞんざいな態度で言い放つ。
「用事が有るって、お前、何者だよ!
普通、アポイントもなくて、『鷹の爪』の団長なんかに会える訳ねーだろ!
しかも今は、SSSSS未攻略ダンジョンの探索中だぞ!
素人がいきなり、SSSSS未攻略ダンジョンの下層なんかに行ったら、瞬殺されちまうぞ!」
「アンタ、この私が付けてるプラチナブレスレット見えないの?」
シャンティーは、自分が付けてるSランク冒険者を示す、プラチナブレスレットを冒険者に見せつける。
「見えてるが、お前のようなチンチクリンの妖精で、S級冒険者の奴なんて知らねーよ!
俺は、殆どのS級冒険者の名前と顔を覚えてるんだからな!」
「それじゃあ、アンタの勉強不足ね?しかも、提携ギルドの最重要人物のシャンティー様の名前と顔も知らないなんて、最近の『鷹の爪』の新人教育は、一体、どうなってるのかしらね?」
とか、やってると、慌てて貫禄があるドワーフのオッサンが、テントの中に飛び込んできた。
バキッ!
「何やっとるんじゃ! この人は、『犬の肉球』のシャンティーさんじゃ!
いつも、有り難くエリスポーションを飲ませて貰っとるじゃろうが!」
ドワーフのオッサンは、テントに入って来るやいなや、シャンティーと揉めていた冒険者を、殴り飛ばす。
「エッ! この方々から、あの、とても美味しいエリクサーを卸して貰ってるんですか?」
「バカモン! 『鷹の爪』と『犬の肉球』は、400年にも及ぶ、古い盟友じゃぞ!
まだ、エリクサーが存在しなかった時代、『犬の肉球』が颯爽と現れて、エリクサーを我ら『鷹の爪』に優先して販売してくれたから、我らは、5S未攻略ダンジョンに挑戦出来るようになったんじゃ!
その恩人である『犬の肉球』の重要人物のシャンティー様を、知らないなんて、最近の若いモンときたら!」
ドワーフのオッサンは、カンカンである。
「あら?名前は全然覚えてないけど、アナタ見た顔ね?」
どうやら、シャンティーは、ドワーフのオッサンを知ってるようだ。
「ええ。現在、『鷹の爪』の副団長をやらして貰ってる、ドラモッテルと申します。
まあ、長寿種で長い事、『鷹の爪』に所属してましたので、いつの間にか副団長にされてただけなんですが……」
「そう?それじゃあ、団長のハラ・クダシが居る場所まで、案内してもらえるかしら?」
「ええと……何用でございますか?」
ドワーフのオッサンは、探るように聞いてくる。
「うちの新たなアタッカーと、剣聖の称号を掛けて勝負してもらいたのよ!」
「おお! それはなんと! 面白い!
団長も喜んで勝負してくれると思います!
何せ、『鷹の爪』は、冒険大好き、ダンジョン攻略大好き、そして、三度の飯より戦闘が大好きな者達が集まる廃人冒険者パーティーですので!
そんな、お祭りごとの催しは、いつでも大歓迎ですな!
最近、あまりに団長が強過ぎて、勝負しにくる者など、殆ど、居なくなってしまったので!」
なんかよく分からんが、副団長だというドワーフのオッサンはヤル気だ。
「で、うちの団長と勝負するというのは、その勇者の末裔のムネオ殿ですか?
頭の毛は薄くなってきてるようですが、昔見た『犬の肉球』初代団長に似てきましたな!」
「何、言ってんのアンタ?似てるのは色黒なところじゃない!
うちの初代団長で、勇者が格好良かった所は、金髪碧眼なのに肌が浅黒かった所よ!
毛が無ければ、ただの浅黒ハゲ男よ!
まあ、ムネオも小さい時は格好良かったんだけどね」
ムネオが、ハゲハゲ言われて苦笑いしている。
まあ、基本、高貴な王族で顔かたちは良いのだけれども、シャンティー的には、ハゲは受け入れられないらしい。
「という事は、そちらのお侍の方ですかな?
というか、そちらの方、ハラダ家、ハラ家の者とは違うようですが……」
ドワーフのオッサンは、無遠慮に塩太郎をジロジロ見ながら、シャンティーに聞く。
「アンタ、分かってんわね! この甘いのか辛いのか分かんない名前の佐藤 塩太郎こそ、ガブリエルがわざわざ異世界日本から呼び寄せた、本物の侍!
私達『犬の肉球』が、ガブリエルから強奪した正真正銘『犬の肉球』のアタッカーよ!」
なんか知らないが、ガブリエルから強奪した事を強調し、シャンティーはエッヘンとする。
「なんと、ガブリエル殿から強奪とは、相変わらず、シャンティー殿は豪気ですな!」
「へへへへへ、それ程でも……」
あのシャンティーが照れている。というか、あのドワーフ。シャンティーの扱い方を心得ている。
まあ、結構、ドワーフという種族は、アンさんや虎子も含めて、シャンティーの扱い方が上手い人が多い気がする。
まあ、それは、『犬の肉球』の元副団長が、ドワーフ王ドラクエルという事もあって、腹黒シャンティーの扱い方を、しっかり国民にレクチャーしてるだけかも知れないけどね。
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