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96. 真打登場!
しおりを挟むカキン!
「止めて下さい!」
ハナは、塩太郎の斬撃を刀で受け止め、涙ながらに訴える。
「止めれるかよ! 俺の仲間達は、お前ら薩摩の裏切りで大勢死んでんだよ!
ここで、俺が仇討ちしなければ、誰が死んだ仲間達を弔ってやれるんだ!
薩摩の奴らを前にして、何もしなかったとあっちゃ、俺は……死んだ仲間達に示しがつかねーんだ!」
「そうだとしても……私は、塩太郎殿と戦いたくないです……」
「クドイ!」
塩太郎は、間近で話す事を避ける為に、木刀を強く押し、鍔迫り合いから逃がれる。
しかし、
カキン!
「塩太郎殿!!」
ハナは、引き剥がされた瞬間に、直ぐに塩太郎に打ち込み、再び、鍔迫り合いに持ってくる。
「チッ! 剣姫、剣神の称号を持ってるのは、伊達じゃねーな……」
塩太郎は、鍔迫り合いから逃れようとするのだが、引いても押しても、どうやっても逃れられない。
「塩太郎殿! どうか私の話を聞いて下さいませ!」
「裏切り者の薩摩っぽの話なんか聞きたくねーよ! どうせ、すぐ裏切るんだからな!」
「私は裏切りません! 何があっても、私は塩太郎殿を裏切りませんから!」
ハナの圧が凄い。というか、鼻息も荒い。
鍔迫り合いしてるせいもあって、ハナの顔が、塩太郎の目の前にあるのである。
「お前、ちょっと近いって! これは鍔迫り合いの距離じゃねーだろ!」
「塩太郎殿に、木刀を振らさない為です!」
「だけれども……」
剣姫ハラダ・ハナは、どう考えても美少女なのである。南国薩摩の末裔の為か、二重瞼で愛らしい大きな目をしてる。
そして、剣術をしてるので、姿勢も良く健康的。
ハッキリ言うと、塩太郎好みの美少女なのであった。
そんな美少女が、塩太郎の顔のすぐ近くで、ハァハァ言いながら、塩太郎に話し掛けているのだ。
薩摩は仲間の仇なのだが、何故か、塩太郎の鼓動は速くなる。
「チキショー、離れやがれ!」
「私は、決して、塩太郎殿から離れません!」
「俺は、離れたいんだよ!」
「私は、離れたくありません!」
塩太郎は、ハナから離れようと必死に抵抗するのだが、飛んでも跳ねても、どうやってもハナは塩太郎についてくる。
「お前、一体、何なんだよ!」
「私は、塩太郎様に憧れる者です!」
「憧れって……今の状況で、俺よりつえーじゃねーかよ!」
「私には、まだまだ実戦が足りません。塩太郎殿のような本物侍の凄みのようなものが、まだ足りないのです!」
「だからって、ずっと鍔迫り合いする必要もねーだろうが!」
「離れてしまうと、塩太郎殿に攻撃されてしまいそうですので」
「そりゃあ、するだろ?お前は薩摩で、俺の仲間の仇なんだからよ!」
「だとしても、私は、塩太郎殿の敵にはなりたくありません!」
「我儘言うんじゃねーよ!」
バキッ!
「ゲホッ!」
塩太郎は、ここで、得意の膝蹴りをハナの溝打ちにヒットさせる。
「どうだ! 剣術の腕じゃ、どうやらお前の方が上かもしれんが、俺は足癖も悪くて有名なんだよ!」
そう、塩太郎は元々、腕っ節の強さで近所の悪ガキ共を従えてたガキ大将。ステゴロ喧嘩も得意中の得意なのである。
新撰組の沖田総司も、蹴りで殺してるしね。
まあ、塩太郎本人は、自分が蹴りで、沖田総司を殺したと気付いてないのだけど。
「そんな所が、素敵なんです」
ハナは、片膝をつき、血反吐を吐きながら塩太郎を見上げる。
「お前、ヤバい女だな……」
塩太郎の蹴りは、沖田総司を殺してしまう程、強力な蹴り。しかも、塩太郎は拳王の称号の保持者。多分、内蔵が破裂していると思われる。
その蹴りを食らって、普通の女の子は、蹴った男に素敵とは言わない。
「盛り上がってる所、悪いが、そろそろ帰らせてもらうぞ」
暫く黙って、塩太郎とハナの戦いを見ていた異界の悪魔サルガタナスが、そそくさと帰ろうとする。
そう。本来、異界の悪魔サルガタナスは、ベルゼブブ一派の中でも、穏健派なのである。
元々は、ハラダ家の初代とも仲が良く、示現流を習ったりしてた間柄。
しかしながら、第1次ベルゼブブ討伐レイド中に、上司の命令で、ハラダ家、ハラ家の者を大量に殺してしまって、ハラダ家、ハラ家に恨まれているのが、今の現状。
異界の悪魔サルガタナス的には、本来、ハラダ家、ハラ家の者とは戦いたくないのが、本心なのであった。
「ゲホッ! アナタは、絶対にここで殺します! ゲホッ、ゲホッ」
「何、逃げようとしてんだ! 薩摩示現流を使う奴は、全員、俺の敵だと言ってんだろうが!」
ハナと塩太郎は、異界の悪魔サルガタナスに、待ったを掛ける。
「どうしてもやるのか?手負いの剣姫と、木刀しか持ってない侍じゃ、私の相手にならないと思うのだが?」
サルガタナスは、冷静に言い返す。
「例え、手負いだとしても、私の代で、貴方とハラダ家との因縁を断ち切りたいので、ゲホッ!」
「弘法筆を選ばずって言葉、知らねーのかよ!
俺みたいな伝説の人斬りになると、木刀でも何でも、得物は選ばねーんだよ!」
ハナと塩太郎は、異界の悪魔サルガタナスに啖呵を切る。
「そうか……ならば、仕方が無い……」
異界の悪魔サルガタナスが、寂しそうにそう言うと、腰に差した刀を握り、動く。というか、パッ!と、消えた。
カキン!
「なっ!」
塩太郎の背後で風を感じた瞬間、首元で刀と刀がぶつかる金属音がしたと同時に、塩太郎の背筋から、生暖かい汗がたらりと流れ落ちる。
そして、
「ニャハッハッハッハッハッハッハッ! サルガタナス! 久しぶりだニャ!」
塩太郎の背後から、語尾ニャの若い女の声が響き渡った。
「くっ! ブリトニー・ゴトウ・ロマンチックか……」
瞬間移動スキルにより、塩太郎に背後に移転し、塩太郎の首を斬り落とそうとしていた異界の悪魔サルガタナスが、ブリトニーに刀を止められて苦虫を噛む。
「ブリトニー様!何で、ここに?!」
自分の影の中から、ゴトウ族限定で使える影渡りスキルを使って、突然、飛び出てきたブリトニーに、ハナは叫ぶ。
「ハロハロに、たまたま遊びに行ったら、ハナ達が、私を差し置いて、サルガタナスと遊んでるって聞いて来たのニャ!」
メイド服を着た、超絶モデル体型で猫耳美少女ブリトニーが、ハナを見て、眼孔鋭くニヤリと笑った。
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