職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
91 / 166

91. 薩摩を絶対に許さない男

しおりを挟む
 
「糞ッ!だったら、絶対に避けろ!
 示現流の初撃は、絶対に貰っちゃならねーんだ!」

 幕末最強の人斬り集団であった、新選組の局長、近藤勇も、部下に『薩摩の初太刀は必ず外せ』と言ったと伝えられている。

 それ程、薩摩示現流の初撃の破壊力は、ハンパないのだ。

 塩太郎自身も蛤御門の変で、何人もの薩摩っぽと戦ったが、その初撃は、本当に厄介だったのだ。奴らは、一撃必殺、捨て身の覚悟で、初撃を振り落としてくる。避けられれば良いのだが、数人に囲まれてしまったら、仕方が無く受け止めなければならない事もある。
 その重さと来たら、地面に足が埋まる程。多分、塩太郎が無意識に闘気を使ってなければ、受けた刀ごと、頭が叩き割られていたと想像がつくほどの破壊力だったのだ。

 まあ、実際、刀ごと持ってかれて、頭を割られた奴が何人も居るんだけどね。

 兎に角、薩摩示現流の初撃は、幕末最強の人斬り、佐藤 塩太郎をもってしても、ヤバイと言わしめる攻撃なのである。

 だけれども、

 盾役2人は、塩太郎の言葉を無視して、真正面からタコ侍キングの初撃を、作戦通りに受けてしまう。

 ズダタダダダダダダーーン!!

 塩太郎の予想通り、盾役の盾は真っ二つに割れ、盾役の2人も綺麗に2つに斬れ、合計4人になってしまっていた。

「いわんこっちゃない!」

 塩太郎は急いで、真っ二つに斬られた4人?を担ぎ、少し離れた場所まで移動し、脳ミソがタレ落ちないように注意しながら、ピッタリとズレないように重ね合わせ、エリクサーを掛けてやる。

「アレ?ここは?」

 どうやら、上手くいったようである。4人になっていた盾役は、見事、2人に戻る事が出来た。

「だから、初撃は避けろと、アレほど言っただろ!」

「ん? 何のこと言ってるんだ?」

 盾役2人は、首を捻る。

「もしかして、今、タコ野郎共と戦ってた事、覚えてないのか?」

「タコ野郎?」

「オイオイオイ! タコ野郎とお前ら戦ってただろうが!」

「うん。確かに、タコ侍キングは居るな?」

「ちょっと、塩太郎さん……足元……」

 口うるさい魔法使いの女が、盾役2人の足元を見るように、塩太郎に言う。

「ん? アレは脳ミソ……?」

「そう。脳ミソが、少し垂れ落ちちゃったのよ……だから、記憶が少々……後は、解るでしょ……」

 口うるさい魔法使いの女が、口を濁す。
 どうやら脳ミソが、少しだけ垂れ落ちてしまい、記憶が少々無くなってしまったようである。

「俺のせい? 俺が動かしたから、脳ミソ垂れちゃったのか……」

 塩太郎は動揺し、生暖かい汗が、背筋を伝うように垂れ落ちる。

「アノ場合、仕方が無いわね。そのまま混戦になってたら、多分、その2人助けれなかったと思うから、エリクサーを使うのも鮮度が大事だから、流石に死んでから30分も経つと、生き返らす事ができなくなってしまうし……」

「だよな! 俺のせいじゃないよな!」

「ええ。アンタのせいじゃないわよ。全て、作戦を立てた私のせいね……」

 なんかよく分からないが、口うるさい魔法使いの女が反省してるようだ。だって、声のトーンが小さくなってるし。

「オイ! お前ら、もう大丈夫だよな!」

 塩太郎は、戦意喪失してしまった口うるさい魔法使いが、使いものにならなくなってしまったと判断し、復活した盾役2人に問い掛ける。

「ああ。大丈夫だが、それよりここは何処だ?」

「確かに、知らない場所だな?」

 盾役2人は、不思議そうに頭を捻っている。

「オイオイ、そこから覚えてないのかよ!」

「というか、俺の名前ってなんだっけ?」

「そうそう。俺も自分の名前、思い出せないんだよな」

 盾役2人は、どうやら名前まで忘れてしまったらしい。

「ちょっとヤバイな……というか、俺の名前は覚えてるのかよ?」

「ん? お前は塩太郎だろ?」

「そうそう。塩太郎、確か、ガブリエル様が召喚した異世界勇者だろ?」

「そこは、覚えてるのかよ!」

 塩太郎は、思わず突っ込みを入れてしまう。
 塩太郎的には、塩太郎の名前を覚えて貰えていて嬉しかったが、それより、自分自身の名前を覚えてて欲しかったのだ。

「戦い方とかは、覚えてるのか?」

「それは解る!」

「俺達は、パーティーを守る盾役だ!」

 何故だか知らないが、今現在の状況と、自分の名前以外は、全て覚えてるようである。

「だったら、パーティーを守りながら他の奴らと連携して、タコ野郎共を分断させろ!
 流石の俺でも、一気に纏めて相手をするのはキツい。木刀じゃなければ余裕だったと思うが、想像以上に奴らは手練だ!」

「「心得た!」」

 盾役の2人は、自信満々に言い放つ。そして、

「やーい! やーい! タコ野郎! お前の吸盤気持ち悪いんだよー!」

「口から墨を吐いてみろよ! それでイカスミならぬ、タコスミスパゲティー作って、お前ら自身に食わしてやるからな!」

 まさかの悪口。
 まあ、ハラダ家、ハラ家のアタッカーは離脱してるし、頼りの魔法使いの魔法攻撃は簡単に弾き返されちゃうので、それしか方法はないんだけど。

 しかしながら、効果はてきめん。
 タコ侍キング4匹のうち、2匹が『犬の尻尾Dチーム』に引き寄せられる。

「でかした!」

 塩太郎は、木刀を構え、タコ侍キング2匹に相対する。

「プシュー!」

 どうやら、タコ侍キングもヤル気のようだ。

「悪いが、薩摩示現流を使う奴は、誰であろうと絶対に叩き斬る。
 俺にとって、薩摩の風見鶏野郎共は、仲間の仇だからな!」

 塩太郎は、まるで幕末最強の人斬りの頃に戻ったような、人を全く寄せつけない剣呑な雰囲気を漂わせ、タコ侍キングに言い放つのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

処理中です...