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86. 絶大の信頼度を持つ女

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 ハラダ家のメンバー達と、『犬の肉球』の面々は、予定通り、134階層で、『犬の尻尾Dチーム』と合流した。

「どういう事ですか?ハラ君! ガブリエル姫様達を連れてくるんじゃなかったんですか!」

『犬の尻尾Dチーム』の魔術師の女が、連絡係のハラ君に詰め寄る。

「悪いが、俺はハラ家の人間だ。異界の悪魔サルガタナスは、一族の仇。
 姫様達が介入してしまうと、姫様にサルガタナスを殺られてしまうのでな」

 ハラ君は、開き直って魔術師の女に説明する。

「だけれども、その部外者達は誰なのよ!
 しかも、白エルフまで居るじゃない!
 異界の悪魔が、白エルフに執着するって知らない訳じゃないわよね!」

 魔術師の女は、ハラ君に対して語気を強める。

「全て分かってる。エリス様は、異界の悪魔サルガタナスを逃がさないようにする為の保険だ」

「ん? エリスって、もしかして姫様が敵視してる『犬の肉球』の、あのエリスの事を言ってるの?」

「そのエリス様だ」

 エリスは、いきなり自分の名前が出てきて、少し恥ずかしかったのか、シャンテーの後ろに隠れて顔を真っ赤にしている。

「アンタ、正気なの!? 姫様と敵対してる白エルフなんか連れて来て、後でどうなっても知らないからね!」

「どんな処分でも、甘んじて受けるつもりだ」

 ハラ君は、決意を秘めた顔をして答える。

「カンゾウは、何も悪くないわ。姫様からの処分は、ハラダ家当主である私が全て受けますから!」

 ハラダ・ハナが、魔術師の女に言い放つ。
 ちょっと殺気を含んでいたのか、魔術師の女は後ろによろける。

「おっと! 大丈夫ですかな?」

 無駄にダンディーなムネオが、魔術師の女を受け止める。

「だ……大丈夫です……」

 なんか知らんが、魔術師の女が顔を真っ赤にさせて、ポッとしている。

 ムネオはハゲだが、顔かたちが良くイケメンなのだ。勇者の末裔で魔力量が多い為か、20代後半にしか見えないし。
 しかも王族で、育ちの良さが体中から染み出している。

 むさい冒険者しか知らない、若い冒険者の女などイチコロ。
 見た目は若いのに、何故かハゲて、ダンディーなムネオにかかれば、だれでも陥落してしまうというもの。

「ここは、ワシに免じて折れてくれませぬか?」

 ムネオは、自分の魅力を解ってるのか知らないけど、王族スマイルをしながら、魔術師の女に問い掛ける。

「はい! 私は貴方の言葉に、なんでも従いますわ!」

 魔術師の女は、どうやらチョロインだったようだ。

「ハイハイ!そういう事だから、ここからは『犬の肉球』の軍師である、このシャンテー様が仕切らせてもらうわ!
 約束通り、ハラダ家とハラ家の者達に、異界の悪魔サルガタナスは殺らせて上げるから安心して!」

 シャンテーの話を聞いて、『犬の尻尾Dチーム』に居るハラダ家、ハラ家の者達が深く頷く。

「作戦は、こうよ! 」

 シャンテーが、作戦を詳しく説明し出す。

「ハラダ家、ハラ家の者達が、異界の悪魔サルガタナスを受け持つ。
 それを、私がエンチャントで援護しても問題無いわよね?」

 一応、シャンテーがスエキチ爺さんに確認を取る。

「それは逆に有り難いです」

 どうやら、シャンテーがエンチャントで、スエキチ爺さん達を援護をしても良いようである。

「HP管理も、大丈夫?ヒールとかも飛ばせるけど?」

「それもお願い致します!」

 スエキチ爺さんが、深々と頭を下げる。

「盾役のムネオを貸して上げてもいいけど?」

「それはお断り致します! この戦いは、私共一族とサルガタナスの問題でありますから!」

 何かよく分からないが、盾役を使うのは駄目らしい。

「了解! そしたらムネオは、私とエリス守る事に集中しつつ、他のサルガタナスの仲間の相手をお願いするわね!」

「了解しました」

 ムネオは、こくりと頷く。

「そして、ハラダ家、ハラ家の侍以外の『犬の尻尾Dチーム』は、サルガタナスの仲間4人の相手をお願いするわ!
 抜けたアタッカーの変わりは、塩太郎を貸してあげるから何とかしなさいな!」

「あの、質問いいですか?」

『犬の尻尾Dチーム』のメンバーが聞いてくる。

「何?」

「その侍の実力が分からないのですけど?
 ハラダ家、ハラ家の実力者の侍達は、全て『犬の尻尾』Bチーム、Cチーム、Dチームに所属してるか、『鷹の爪』に所属してる筈ですよね?」

「それなら、問題無いわよ!
 塩太郎は、何せ、ガブリエルがわざわざこの世界に召喚させた本物の侍なんだから!
 その辺の侍とは、実力が違うのよ!
 なにせ、私達『犬の肉球』の初代勇者に代わるアタッカーなんだからね!」

 シャンテーの話を聞いて、『犬の尻尾Dチーム』の面々がざわつき始める。

「何で、姫様が召喚した勇者候補の侍が、『犬の肉球』に所属してるんだよ?」

「召喚勇者は、『犬の尻尾』に所属するんじゃなかったの?」

「というか、俺達、『犬の肉球』と共闘して大丈夫なのか?」

「ムネオ様、素敵です」

 約一人。違う意味で、心がザワついてる魔術師の女が居る気がする。

「アンタ達、一応、言っとくけど、この私、シャンテー様は、『犬の尻尾』の副団長アン・ゴトウ・ドラクエルの師匠なのよ!
 そして、アンの父親のドワーフ王は、元『犬の肉球』の副団長! この事を、よく考えなさいな!」

 シャンテーは、この後、大事な戦いが控えてる為か、それとも、ただ面倒臭かっただけなのか、アンと父親のドワーフ王の名声を利用した。

「そ……そうだよな。アンさんの知り合いだったら、『犬の肉球』と共闘しても、姫様に殺される事ないよな……」

「アン様は、慈愛溢れる人だから、きっとガブリエル様の間に入って、なんとかしてくれる筈です!」

 なんかよく分からないが、『漆黒の森』内の、アンの信頼度は絶大のようであった。
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