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72. 顔が牛の人間
しおりを挟む「なんじゃこりゃ~! こんな美味い日本酒なんか飲んだ事ねーぞ!」
塩太郎は、とても冷えた冷酒の飲んで感動する。
そう、日本という国の食べ物は、時間が経つにつれて、どんどん改良されていくのだ。
果物なども、ドンドン品種改良されていって、現在の日本の果物はメチャクチャ甘くなってるし。
なので、幕末時代の日本酒と、今、異世界で塩太郎が飲んでるフルーティーの日本酒は、全くの別物なのだ。
「これは完全に負けたな……異世界恐るべし……日本酒をここまで甘く美味しくしてしまうとは……俺は、異世界を本当に舐めていた……」
幕末出身の塩太郎は知らなかった。
別にフルーティーの日本酒は、異世界と無関係な事を、普通に、令和の日本に存在する事を、幕末出身の昔の人の塩太郎は知らなかったのである。
「ほら、塩太郎、肝刺しも食べてみなさいよ!」
シャンティーが、肝刺しを進める。
「本当に、生のままで食べで良いのかよ?」
「アンタ、生食大好きの日本人でしょ! 日本人の癖に肝の刺身ぐらいでビビってんじゃないわよ!
もし死んでも、エリスポーションで生き返らせてあげるから、心配しないで食べなさいな!」
「た……確かに。この世界には、人を生き返らせるエリクサーがあったな……それなら、食べてもいいか……」
塩太郎は、恐る恐る、塩とゴマ油を混ぜたタレに、肝刺しを付けて、口の中に入れる。
「なんじゃこりゃ~! うんめぇーーぞ!」
塩太郎は、目ん玉飛び出るほど驚いてしまう。
その肝が、牛の肝と殆ど同じものだと気付かずに。
まあ、牛肉自体を食べた事がないので、気付く筈もないのだけど。
「さあさあ。塩タンも焼けてるわよ!」
何故か知らないけど、やたらとシャンティーが、塩太郎に肉を進めてくる。
「このレカン汁?につければいいのか?」
「そうよ!レカンは、地球のレモンと同じものらしいわよ?」
シャンティーが、どこで知ったのか、地球豆知識を披露する。
「レモン?」
レモンと言われても、幕末出身の塩太郎は勿論、知らない。
何故なら、レモンが日本に紹介されたのは明治時代になってからなのだ。
「で、この汁を、この焼いた肉に付ければいいんだな?」
「そうよ」
シャンティーは、ニヤニヤしながら塩太郎に告げる。
「なんじゃこりゃ! 激うまーー!」
塩太郎は、今まで食べた事のない、少しコリコリした肉に感動する。
「それは、ミノタウロスの舌ね!」
「な……何だと! ミノタウロスの舌って食べれるのかよ!
というか、このレカンだったか、レモンだったか?
これ、カボスかなんかだろ?スッキリ爽やかで、めっちゃミノタウロスの舌に合うな!」
「じゃあ、次は、このカルビを食べてみて!
本当に、油が乗って美味しいんだから!」
「オイオイ。そんなに美味しいものばかりの筈ないだろ」
塩太郎は、お約束の前置きしながら、カルビを、口の中に入れる。
「なんじゃこりゃーー! 激うんめぇーー!!」
塩太郎は、一人乗りツッコミで、カルビの美味しさを表現する。
というか、ボキャブラリーが本当にない。
全て、「なんじゃこりゃ~うんめぇーー!」で、乗り切っている。
しかしながら、シャンティーは、その件に関して指摘しない。
まあ?ボキャブラリーが無い分、言い方で美味しさを表しているし、シャンティー的に四足を食べないという塩太郎に、四足の牛と大体同じ味のミノタウロスを食べさせてる事に、背徳感を感じゾクゾクしているのだ。
腹黒シャンティー、本当に趣味が悪い。
「そう? 本当に、ミノタウロスの肉を気に入ってもらって良かったわ!」
シャンティーは、満足そうに塩太郎に話し掛ける。
「ああ。ありがとうな! こんな美味い二足歩行の肉を食べさせてくれて!」
「そうね!ミノタウロスは二足歩行だから、本当に良かったわね!」
シャンティーは、二足歩行を強調する。
まあ、人間も二足歩行の動物なのだけど、その事については、勿論、スルーする。
そう、ミノタウロスは、牛の頭と人間の体を持った魔物なのだ。
これを食べる事によって、牛と人肉を食べてる事になってしまっているのだが、塩太郎的には、それに対して全く気付く事など出来ない。
何故なら、塩太郎はミノタウロスを見た事ないから。
それから実を言うと、南の大陸の住人でも、相当、長寿種しかミノタウロスを見た事無かったりする。
何故なら、現在、ミノタウロスはモフウフダンジョンでしか狩れないのだ。
しかも、モフウフダンジョンのミノタウロスが狩れる階層は、『犬の肉球』が、ミノタウロス牧場を経営してるので、一般冒険者は入れない。
そんな事もあって、300年程前から、南の大陸の住人もミノタウロスを見た事なかったりする。
そして、頭は牛。体はまんま人間の体のミノタウロスを、解体する時に首をはねたら、まんま人間の体。
『漆黒の森』のミノタウロス解体工場には、血抜きの為に首をはねたミノタウロスが、何百体も吊るされてるらしい。
その状態を見たら、塩太郎以外の南の大陸の住人でも、ミノタウロスを食べられなくなるかもしれない。
まあ、一応、二足歩行の動物なので、塩太郎的には全く問題ない事かもしれないけど。
兎に角、塩太郎がミノタウロスの正体。頭は牛、体は人間なのを知った時に、どんな反応をするか、今からとても気になっちゃう腹黒シャンティーなのであった。
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