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68. 親戚の男
しおりを挟む「アンタ、勿論、この私の事、分かってるのでしょうね?」
シャンティーは、土下座してるダークエルフの衛兵長の前で、フワフワ飛びながら高圧的に言い放つ。
「勿論! 分かっております! 超名門S級冒険者パーティー『犬の肉球』のハラ……、じゃなくて、天才軍師シャンティー殿にあらせられれます!」
「ハラ?」
「ええ……ちょっと、お腹を下しておりまして……ははははは……」
衛兵長は、水溜まりができる程の大量の汗を流しながら、必死に誤魔化す。
というか、絶対に、腹黒シャンティーと言おうとしてた。
まあ、シャンティーに向かって腹黒と言おうものなら、ケツの穴の毛まで毟られてしまうのだけど。
そんな事も、流石は長寿種のダークエルフ。何でも分かっているのだ。「腹黒シャンティーには、決して手を出してはいけない!」 という、南の大陸でも300年ぐらい前までは当たり前だった常識も、当然、分かってる。
「で? この落とし前は、どうつけるの?」
「そ……それは……」
「衛兵長殿……私は、そんなに悪い事してませんが……ただ、本当にS級冒険者か聞いただけですし?」
「バカ! シャンティー殿に、言い訳するな! お前は、この方がどういう方なのか、理解してないのだ!」
衛兵長は、アホな衛兵の後頭部を鷲掴みにし、そのままシャンティーの前に土下座させる。
「そこのお馬鹿な子が、なんか言った気がしたのだけど?」
「ハハァーー。申し訳ございません! 最近の若い者は、モノの道理が分かっておりませんので。ここは、私に免じて許して下さいませ!」
衛兵長は、地面に頭を擦り付けるながら懇願する。
「で?謝罪には、それなりの心配りが必要よね?」
シャンティーは、心配り?慰謝料を寄越せと、当たり前のように衛兵長にいう。
「ですよね。それではどのような形でお支払いすれば……」
長寿種であるダークエルフの衛兵長は、よく分かっている。
金にがめついシャンティーを相手にした場合、全てお金で解決できると。
これが、もう一人の、この大陸に居るヤバい奴、サディスティックサイコにゃん娘のブリトニーの場合は、必殺技、チ〇コスライスで、チンコを100枚にスライスされちゃうのだけど。
兎に角、シャンティーを相手にする場合は、全てお金で解決できてしまうのだ。
「そしたら、今日は、この城塞都市で1番の宿屋に泊まりたいわね!」
「了解しました! すぐにこちらで手配致します!」
「それも、1番高い部屋で!」
簡単に願いを聞き入れられるのを見て、すぐさまシャンティーは、次の無理難題を押し付ける。
「そ……それはちょっと……」
「何?アナタ?この私を、とても傷付けておいて、その程度の誠意も見せられない訳?」
「宿賃的には、大丈夫なんですが……なにぶん、こちらの城塞都市は、交通の要所でして、一番最高級宿のスゥィートルームは、最低でも3ヶ月前に予約して頂かないと泊まる事ができませんので……」
「何ですって? 今、この私の願いが聞き入れられないと、聞こえたのけど?」
「ですから……今日はもう他のお客さんが予約してますので、流石に、その……」
「アナタ、私より、その、他のお客が大事だっていうの?
この、超名門『犬の肉球』のシャンティー様より、大事なお客様って、どれ程の大物なのかしら?」
シャンティーのプレッシャーがエグい。
というか、そもそもここの衛兵は、それ程、悪い事などしてないのに。
ただ単に、シャンティーのいいがかりなのだ。
「分かりました! スゥィートルームも、私の権限で何とかします!
それで、どうか許してもらえませんでしょうか……」
衛兵長は、熟考の上決断する。シャンティーを敵に回すより、得と考えたのだろう。
「う~ん……どうしようかしら」
しかしながら、がめついシャンティーには悪手だったようだ。
「そしたら、高級焼肉店『ミノ一番』のお食事券100万マーブルつけます!」
ここで、衛兵長は奥の手を出す。
「『ミノ一番』って、ガブリエルの所のサンアリの店じゃないの。私が、ガブリエルの事、大嫌いだと、ダークエルフの貴方が知らない訳ないでしょ?」
「私の権限で出来るのは、もうこれぐらいしかありませんので……。出来る事と言えば、親戚のサンアリのお店の金券ぐらいしか渡せないのです」
「ん? アンタ、サンアリの親戚なの? という事は、もしかして、ガブリエルとも親戚?」
「相当、遠いですが一応」
「そ……そうなの? そしたら今日は、これぐらいで勘弁してあげるわ!
焼肉大好きだし! 100万マーブル分の金券なら、20回くらいはお店に行けて、ラッキー!」
シャンティーは、衛兵長が、ガブリエルの遠い親戚と聞いて、一瞬で手を引く。
そう。腹黒シャンティーは、引き際を心得ているのだ。
ギリギリ死なない程度に、ケツの毛まで毟り取るのが特技。
生かさず殺さずに、金銭を毟り取る。相手を金銭苦で殺してしまったら、取れるお金も取れないしね!
「それでは、最高級宿のスゥィートルームをご用意しますので、
お待ちの間に、『ミノ一番』にでも行って、美味しい焼肉でも食べて下さいませ!
そこで、『ミノ一番』の金券100万マーブル分を渡すように、オーナーの親戚である、私の方から指示しておきますので!」
「悪いわね!」
「いえいえ。最初に無礼を働いたのは、こちらの方ですから!
どうぞ、最高級焼肉と、最高級宿をお楽しみ下さいませ!」
衛兵長は、深々とシャンティーに向かって頭を下げた。
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