職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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67. 無礼な衛兵

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 塩太郎達一行は、現在、2匹のグリフォンに乗って、空の旅に勤しんでいる。

 エリスとシャンティーは、お馬鹿なグリフォンの方に。
 塩太郎とムネオは、凶暴で問題児のグリフォンに。

 まあ、問題児といっても、どっちが上かの格付けで、完全に塩太郎が上と認めた為か、現在は、とても従順なグリフォンになってるんだけど。

 因みに、2匹のグリフォンの名前は、エリスが勝手に付けて、アホな子の方はワシ子。
 ヤンチャな方が、ワッシーという名前になってたりする。
 一応、言っとくけど、ワシ子が雌で、ワッシーが雄である。

 まあ、安直過ぎる名前であるけど、エリスの愛馬ペガサスの名前もペガちゃんで、見たまんまの名前。
 多分、何百匹もの精霊や神獣を使役してるので、名前付けも適当になってしまってるのだろう。

 もう少しだけ言うと、塩太郎的に、グリフォンの頭は完全に鷹であるのだけど、エリスは鷲と鷹の区別が付かなかったようだ。
 実際は、よっぽどの通じゃないと、鷲と鷹の違いなど分からないけど、通の塩太郎には鷲と鷹の違いがしっかり区別できちゃうのだ。

 塩太郎的には、グリフォンの名前など何でも良いと思ってるので、鷹なのにワッシーでも、敢えて突っ込まない。
 まあ、エリスに突っ込んでも、顔を真っ赤にさせてシャンティーの後ろに隠れるだけで、突っ込みがいが全く無いというのもあるのだけど。

 てな感じで、トイレ休憩や昼食休憩を挟み、空の旅を続け、夕方。

「今日は、あの城塞都市に泊まりましょう!」

 シャンティーとエリスが乗るワシ子が近づいてきて、塩太郎達に伝える。

「了解しました!」

 ムネオが返事をする。

 因みに、ワッシーの手綱を持つのはムネオ。
 塩太郎は武士階級だけど、なんちゃって武士階級。
 確かに、戦国時代まで遡れば武士だったが、関ヶ原で毛利が負けた事もあり、高杉と出会うまでは、田舎百姓だったのだ。
 てな事もあり、塩太郎は馬に乗った事が無かったのである。

 そんでもって言うと、塩太郎はムネオの前にちょこんと座る、所謂、子供乗りをしている。
 何故かと言うと、ムネオがデカいから。
 背中が大きいムネオの後ろに乗ってしまうと、全く景色が見えなくて、つまらないのだ。

 最初のトイレ休憩までは、大人しくムネオの後ろに乗ってたが、恐ろしくつまらなくなり、トイレ休憩後はムネオの前に乗らせてもらっていたりする。

 まあ、いつも喋ってるシャンティーが近くに居れば、つまらなくもなかっただろうが、
 如何せん。シャンティーは、エリスと一緒にワシ子の方に乗ってるので、寂しがり屋の塩太郎的には、ムネオの前に乗って景色を楽しむ事しか選択肢が無かったのである。

「今日は、この城塞都市で宿を取るわよ!」

 城塞都市の正門前に降り立つと、シャンティーが指示を出す。
『犬の肉球』の団長は、一応、ムネオなのだが、実質的なリーダーはシャンティーなのだ。

 シャンティーは、正門に並ぶ大勢の人達を無視して、先頭に横入りしようとする。
 因みに、この城塞都市は、南の大陸二大国家である、ムササビ自治国家と漆黒の森を繋ぐ要所に位置するので、旅の者やら、商人、冒険者達が頻繁に立寄る街道の要所なのだ。

「ちょっとすみません!」

 偉そうな態度で、勝手に城塞都市に入ろうとするシャンティーを、衛兵が慌てて止めに入る。

「ハァ~。アンタ、この冒険者ブレスレットが見えないの?
 S級冒険者は、オールフリーで城塞都市に入れる筈よね!」

 シャンティーは、どういう訳か、シャンティーの大きさにベストフィットしてる、S級冒険者を示すプラチナブレスレットを衛兵に見せつける。

「ええ。確かにプラチナブレスレットですが、しかしながら、妖精が冒険者など、普通、やってませんので……」

 そうなのだ。本来は、妖精は冒険者などやらないのだ。
 冒険者パーティーに居たとしても、それはテイムされてるか、召喚された場合のみ。
 普通、妖精自らが冒険者などやる事など、決して無いのである。

「ハァ~。アンタ、この私が、超名門冒険者パーティー『犬の肉球』のシャンティー様だと知って言ってんの?」

 シャンティーが、高圧的に、ドスが聞いた声で衛兵に言い放つ。

「『犬の肉球』……? はて、『犬の尻尾』なら知ってますが、『犬の肉球』などどいう冒険者パーティーなど、聞いた事ありませんが。
 衛兵という職業柄、S級冒険者パーティーも、S級冒険者も、全員、把握してる筈なんですけど……アナタのような妖精のS級冒険者が居るなんて、聞いた事も見た事も有りませんね」

 衛兵が、丁寧に。尚且つ、ちょっとバカにした感じで、シャンティーに諭すように言う。

「アンタ……もう一度言ってみなさい……
『犬の尻尾』は知ってて、『犬の肉球』は知らないですって……
 350年前は、この城塞都市でも、『犬の肉球』の、このシャンティー様が訪れたら、衛兵は全員集合して、頭を下げて私の到着を歓迎してたというのに……」

 シャンティーは、よっぽど悔しかったのか、プルプル震えている。
 というか、衛兵は、虎の尾を踏んでしまった。
 シャンティーは、『犬の肉球』と『犬の尻尾』を比較してディスられる事を、最も嫌うのである。

 怖いもの知らずの衛兵の命の危険を感じとったムネオが、慌てて、シャンティーと衛兵の間に割って入る。

「衛兵殿! 誰でもよいから、長寿種の衛兵を連れて来られよ!」

 ムネオは、怒鳴るように衛兵に言い放つ。

「えっ? アナタも誰です?」

「ワシは、ガリム王国前国王ムネオン・ガリムじゃ!」

「またまた、嘘、言っちゃいけませんよ!」

 衛兵は、ムネオが、ガリム王国の前国王と全く信じてない。
 まあ、嘘つき妖精の仲間だと思ってるので無理もないと思うけど。

「アンタ……ちょっと無礼過ぎるわよ……」

 シャンティーの怒りは、最早、MAX。
 聖属性魔法を司る、光の妖精に有るまじき、ドス黒い魔力が、体の周りに不穏に溢れ出している。

「早くするのじゃ! シャンティー殿がブチ切れてしまわれたら、この城塞都市が消滅するぞ!」

 ムネオが、シャンティーに向けて、大盾を構え、舐め腐っている衛兵を怒鳴りつける。
 流石にここまで来ると、衛兵もアレ?って思ったのか、

「急いで、衛兵長を呼んで参ります!」

 衛兵は、猛スピードで城塞都市の中に入って、衛兵長を呼びに行った。

「アイツ、絶対に殺す!」

 シャンティーは、指をコキコキさせて、舐め腐った衛兵が戻って来るのを待つ。
 きっと、どうやって殺すのか考えてるのだろう。
 塩太郎が思うに、また100回殺しで、エリスポーションを高額で売りつけるに1票。

「いけません! シャンティー殿! ここの城塞都市も、ある程度の大物が統治してる筈です!
 城塞都市を護る衛兵を殺すと、国家問題に発展しかねません!」

 一応、説明すると、南の大陸では、大体、一つの城塞都市は、一つの国家を成している。
 しかしながら、『漆黒の森』だけが、例外で、『漆黒の森』の中にある全ての城塞都市が、『漆黒の森』の配下国家?まあ、ガブリエルが女王で、他の城塞都市の城主は、領主という関係性だと考えればいいだろう。に、なっている。

「何? アンタ? この私が、ド田舎の城塞都市の城主なんかに後れを取ると思ってんの?」

「それは無いですが、問題が発展して、城主と争いになりますと、後が面倒ですぞ!
 というか、ギルド本部長のブリジア様が、絶対に出張ってきますので!」

「そ……それは、ちょっと厄介ね……」

 そう、腹黒シャンティーが、唯一恐れる天敵。
 九尾の狼ブリジアにだけには、シャンティーは決して頭が上がらないのである。

 とか、必死に、ムネオがシャンティーの怒りをあやしていると、
 城門の中から、ダークエルフと思われる衛兵長を、先程までシャンティーの相手をしていた衛兵が連れてきた。

 そして、欠伸をしながら、眠そうな顔をして城門を出て来た、ダークエルフの衛兵長が、シャンティーを一目見るなり、

「ゲッ! 腹黒シャンティー……様?」

 一瞬で目が覚めたのか、シャンティーの前まで、猛ダッシュで走って来て、ジャンピング土下座。

「この度は、何も知らない私の部下が、シャンティー殿に甚大なる無礼を働き、誠に申し訳ございませんでした!」

 滝のような汗を体中から吹き出しながら、グリグリと地面に頭を擦りつけ、必死の形相で謝ったのであった。

 ーーー

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