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60. 騙されやすい男
しおりを挟む「ウオォォォーー! これがトンコツチャーシューメンかよ!」
塩太郎は衝撃を受ける。
食欲をそそる、美味そうな匂いがする乳白色のギトギトのスープ。
タケノコの煮物ぽいのと、見た事のない柔らかそうな丸く切られた物体が、お椀を囲むように10枚並べられている。
食べる前だというのに、塩太郎の口からヨダレが止まらない。
「どう?美味しそうでしょ? 早く食べてみなさいな」
シャンティーが、ニヤニヤしながら塩太郎に進める。
「おお。それじゃあ、頂きます」
塩太郎は、奢ってくれてありがとうの意味も込めて、シャンティーとチャーシューメンに、神妙に手を合わせ感謝を込めて、頂きますをする。
「どういたしまして。うふふふふ」
なんか、よく分からないが、シャンティーはとても嬉しそうだ。
「それじゃあ、スープから飲むぞ!」
「ええ、どうぞ!」
塩太郎は、レンゲでスープをすくい、口に持って行く。
「なんじゃ、こりゃーー!!」
塩太郎は、絶叫する。
乳白色でギトギトで、くどいそうに見えるスープは、見た目よりもアッサリしているが、深く濃厚な味を醸し出している。
「このスープの出汁は何だ?今まで飲んだ事の無い味がする……煮干しじゃねーし……昆布でもねーな……鰹節はちょっと入ってる気がするが、鰹節じゃ、こんな濃厚な出汁は取れねーし……」
「アンタ、ラーメンもスパゲティもオムライスも知らなかった癖に、ヤケに専門的な料理の批評をするのね?」
シャンティーが、意外そうな顔をしている。
「お前、俺を舐めてんのか? 俺は、毛利様が治める、長州藩出身なんだよ!
長州の殿様は、京都の食事を司る大膳大夫の役職を、代々受け継がれてんだよ!
即ち、長州藩の食事は、京の都と殆ど、同じ食事が出てくるんだ!
その京の都と同じ食事を、普段から食ってきた長州藩出身の俺が、舌が肥えてない訳ねーじゃねーか!」
「ふーん。そうなんだ……そしたら、そのチャーシューの批評をしてみて」
シャンティーは、全く興味なさそうに指示を出す。
「てめー……やっぱり舐めてんな……」
塩太郎は、そう言うと、チャーシューを1つ箸で取り、パクリと口にする。
「な……なんじゃこりゃ~!」
今日2度目の、なんじゃこりゃ~。
塩太郎は、、再び衝撃を受ける。
「分厚く噛みごたえが有ると思ってたんだが、軽く噛んだだけで噛みきれ、口の中でトロけやがる。
もしかして、高級魚のクエか? しかしクエは、もっとアッサリしてるしな……。
この脂身があり、醤油味が染み込んだヤケに美味い物体……。
一度食べたら病みつきになる味……。
俺も、高杉について、全国の高級料亭を食べ歩いて来たが、これほど美味い脂が乗った魚など、食べた事がねーぜ!」
幕末出身の塩太郎は、知らなかった。
四足動物の肉の味を。
そして、アマイモンから貰った、【全言語理解】スキルが、意外とポンコツだとは、思いもしなかったのだ。
勿論、チャーシューが、四足動物の豚の肉だとは、食べた事が無い、幕末出身の塩太郎には、知る由が無かったのである。
「どう?美味しいでしょ?」
自分の悪巧みが見事達成されたシャンティーは、ニヤニヤしながら満足そうに聞いてくる。
「ああ! うめー! 箸が止まらん!
そして、この腰がある細麺も、相当うめー!」
塩太郎は知らない。
シャンティーが、善意で人にモノを奢る事など絶対に無い事を。
シャンティーと付き合いが長い者なら、確実に警戒するが、塩太郎とシャンティーの付き合いは、濃厚だが、如何せん、まだ、付き合いが短いのである。
塩太郎も、シャンティーが、腹黒だと分かっているのだが、まだ、付き合いが短過ぎる為、優しい一面が有るのかもと、勘違いしてしまったのだ。
まあ、財布に必ず1万マーブル入れてくれてる事が、善意だと思ってるくらいなので、しょうが無い事なのだけど。
そして、トンコツチャーシューメンのスープの一滴まで残さずに飲んだ塩太郎が、豚の骨からダシを取り、チャーシューも、豚肉だと気付いくのは、まだまだ先の話。
ーーー
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