職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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59. 学がない男

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 塩太郎達は、想定外の事もあり、本来の目的であるムネオの大盾を受け取り、ドワーフ王国直営店ムササビ支店を出た。

「それじゃあ、2階のフードコートで、昼食を食べに行くわよ!」

 シャンティーが、イキナリ仕切り出す。

「ん? フードコートって何だ?」

 塩太郎は首を捻る。

「アンタ、異世界人の癖して、フードコートも知らないの?」

「仕方がねーだろ! 俺は日本人なんだ、伴天連が使うような横文字なんか、蘭学でも習ってねーと分かんねーんだよ!」

 幕末出身で、無知の塩太郎には分からなかった。蘭学はオランダ語で、フードコートは英語だという事を。
 幕末でも、蘭学を習ってるような知識層なら分かったかもしれないが、元田舎百姓の塩太郎には、オランダ語と英語の区別など、分かる筈なかったのである。

「ん?アンタ、何言っんのよ?アンタって【全言語理解】スキルを持ってた筈よね?」

 シャンティーは怪訝な顔をする。

「ああ。持ってるぜ?だけれどもフードコートは、フードコートとしてしか訳されねーんだけど?」

 幕末出身の塩太郎は知らなかった。現在日本では、既に、フードコートは、フードコートとして、普通に日本語になっている事を。
 そして、幕末時代の日本に、フードコートに替わる日本語が無かった為、フードコートは、フードコートとしか訳されない事を。
 幕末出身の塩太郎には、知る由も無かったのである。

「まあ、いいわ。教えてあげる。フードコートは、1つの大きいフロアーに、色んな人気のご飯屋さんや屋台が集合してる食事処よ!
 そして、フードコートの良い処は、色んな人気店の食べ物を、1つの場所で食べる事が出来るの!」

 シャンティーが、フードコートについて端折って説明する。

「色んな人気店の食べ物って、もしかして日本食も有るのか?!」

 塩太郎は、前のめりに質問する。
 何故なら、塩太郎の魔法の鞄の中には、ストックされてたコンビニおにぎりが無くなっていたのだ。
 最近は、食べ慣れない洋食ばかりで、塩太郎は辟易していたのである。

「たくさん有ると思うわよ。ウルフデパートのフードコートは、日本食が充実してると有名だから!」

「本当かよ!」

「本当よ! だから、異世界移転者や異世界転生者は、日本食が美味しいウルフデパートがある、ムササビを拠点に活動をする者が多いと言われてるわ!」

「ウッヒョー! フードコート最高だぜ!」

 と、喜んでいたのは5分前。

「よぉ……シャンティー……話が違うじゃねーか……」

「何、言ってんのよ? ラーメンも、スパゲティも、オムライスも、たこ焼きも日本食でしょ?」

 シャンティーは、首を捻る。

「ラーメンもスパゲティもオムライスも聞いた事ねーよ! 麺類なら、蕎麦かウドンだろうが!」

「蕎麦とウドンなら、そこの丼屋さんに有るじゃない?」

「お……お前、正気か?あの店、ご飯の上に、揚げた豚肉を乗せた丼売ってんだぜ?
 そんな所の料理なんか、食べれる訳ねーだろ!」

「アンタ、本当にさっきから何言ってんの……」

 シャンティーは、知らなかった。塩太郎が生きていた幕末日本には、ラーメンもスパゲティもオムライスも無かった事を。
 そして、幕末日本では、四足の動物を食べる習慣が無かった事を。
 現在日本から転移転生した者ばかりとしか関わりの無いシャンティーには、知る由もなかったのである。

「豚なんか食ったら、ケツの穴から毛が生えちまうだろうが!」

「じゃあ、アンタは、何食べんのよ?」

「アノ、美味そうな匂いを発してる麺が食べてーな……」

「アレ、チャーシュー乗ってるわよ?」

「チャーシュー?」

 塩太郎は、首を捻る。
 どうやら、フードコートと同様、チャーシューも完全に日本語として認識されてるらしく、そのままの言葉で塩太郎に解されるようだ。

「分かんなかったら、いいわよ。美味しそうに感じるんでしょ! そしたら食べればいいじゃない! 私が奢ってあげるから」

 何故だか知らないが、突然、シャンティーが男前な所をみせる。

「嘘だろ……ドケチのシャンティーが、俺にご飯を奢るだと……天変地異でも起こるんじゃねーのか……」

 塩太郎は驚愕する。

「アンタの中で、私の存在はどうなってるのよ!
 私ほどの人格者で、善人は、この世に存在しないというのに!」

「どの口が言ってんだ?」

「アンタ、もう奢ってあげないわよ?」

「イヤ、奢って下さい! すみませんでした!」

 塩太郎は、慌てて頭を下げる。

「まあ、謝ってくれるならいいけどね!」

「よっ! 流石はシャンティーさん! 太っ腹!」

 塩太郎は、京都の料亭とかにいる太鼓持ちの真似をして、シャンティーを持ち上げる。

「フフフフフ。そしたら、折角だから、チャーシューがたくさん乗ってるチャーシューメンにしたら?
 それも、トンコツチャーシューメン!
 ここのトンコツラーメンは、美味しいって評判だから、塩太郎も気に入ると思うわよ!」

 シャンティーは、ニヤニヤしながら、一番高い、トンコツチャーシューメンを勧めてくる。

「本当かよ! トンコツチャーシューメン、普通のラーメンより、500マーブルも高いじゃねーか!」

 塩太郎は、興奮し過ぎて、思わず絶叫する。

「まあ、労いの気持ちも込めてね。ほら、最近、塩太郎、修行とか頑張ってたじゃない?」

「シャンティーの口から、そんな言葉が聞けると思ってなかった……。
 お前、本当は良い奴だったんだな……」

 塩太郎は、少しばかり感動して、ウルウルする。

「今更、気付いたの?私は、最初から塩太郎に親切だったじゃない。生き返らせたのも私だし。お小遣いを欠かさず1万マーブル与えてるのも私だし!」

「まあ、確かにな。小遣い1万マーブルしかくれねえって、どんだけケチだよと思ってたけど、よく考えたら、いつでも財布に、1万マーブルいれてくれてんだよな!まるで打ち出の小槌じゃねーか!」

 百姓出身で、学が無い塩太郎は気付かなかった。
 財布の中に、1万マーブルしか無いという事は、絶対に1万マーブル以上のモノを買えないという事を。
 そして、塩太郎は、たまに1人で飲みに行くぐらいで、実際には、月8千マーブルぐらいしか使ってない事を。
 百姓出身で、学がない塩太郎には、気付く事ができなかったのである。

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