職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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58. オカズの女

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「ちょっ! この人、想像以上にヤバイです!
 相対してるだけで、何回も殺されるイメージが頭に湧いてくるんです!」

 塩太郎の殺気に、思いっきり当たっているトラデアルが、目をぐるぐる回してふらついている。

「お前の名前は、今日から虎子だ。いいな」

 塩太郎的に、もう、村正より、オイドン・トラデアルの名前の方に焦点が移ってしまっている。
 それくらい、塩太郎は、たくさんの仲間を殺した薩摩の奴らが嫌いなのだ。

「だ……だけれども、オイドンは両親から貰った、大事な名前なんです!」

「ハァ~?」

 塩太郎の殺気が、極限まで達する。

「御免なさい! 御免なさい! 殺さないで下さい!
 ダサい男っぽい名前でも、僕は今日から虎子と名乗りますから、お願いですから殺さないで下さい!
 僕には、聖剣をこの手で打つという夢があるんです!
 その為なら、親に貰った大事な名前でも、捨てる事も厭いません!
 そして、とてもダサい名前でも、耐えますので、どうか殺すのだけは勘弁して下さいませ!」

 トラデアル改め、虎子はオシッコをチビりながらも、土下座して懇願する。

「まあ、それならいいけどよ……。というか、虎子って、ダサい名前か?
 俺の居た世界じゃ、結構、普通の名前だったんだけど……」

 そう、塩太郎が生きた幕末の時代だと、虎子は普通の名前。
 寅年生まれの女の子や、寅の時刻に生まれた女の子に付ける、ごく一般的な名前だったのである。
 まあ、現在の日本で虎子など付けたら、逆に斬新過ぎて、キラキラネームとか言われるかもしれないけど。

「滅茶苦茶ダサいですけど、我慢します。死んでしまったら、聖剣は絶対に打てませから……それでですけど、改めて、暫く、村正をレンタルしたいのですけど……」

 虎子が、懲りずに?奪うのを諦めて、レンタルさせろと言ってきた。

「そんなの駄目に決まっ…」

「いいわよ!」

 シャンティーが、塩太郎の言葉に被せてきた。

「て……何、言ってんだ、お前!」

「暫く、村正使わないから、いいって言ってんの!
 その代わり、しっかりレンタル料は頂くけれど、いいわよね?」

 シャンティーが、勝手に話を進めようとする。

「勿論です! 聖剣をレンタルするのですから、レンタル料を支払うのは当然の事ですので!」

 虎子は、もう借りた気になってるのか、目がキラキラ輝いている。

「それじゃあ、1日、5億マーブル頂くわ!
 で、何日借りたい? 最長は3ヶ月間よ!」

 シャンティーは、とんでもないレンタル料を提案する。

「い……一日、5億マーブル……破格過ぎます!」

 何故か、虎子は飛び跳ね、嬉しそうである。

「オイ……お前ら、頭大丈夫か……一日、5億マーブルって、滅茶苦茶じゃねーか!
 俺なんか、いつでも財布の中に、1万マーブルしか入ってねーんだぞ!」

「何、言ってるんですか?塩太郎さん!
 僕がレンタルするのは、この世界に5振りしかない聖剣なんですよ!
 しかも、僕が一番大好きな刀鍛冶、白蜘蛛が、関わった作品!
 1日、5億なんて、破格ですよ!」

「何言ってやがんだ……コイツら、1日、5億が破格って、どう考えても、頭イカれてんだろ……」

 塩太郎は、とてもじゃないが、想像も付かない価値観に絶句する。
 そう、幕末出身の塩太郎にとって、所詮、刀など消耗品。
 まあ、平安時代や鎌倉時代の名工が打った刀なら、想像もつかない値段になると思うが、塩太郎が持ってた村正は、そこら辺の武器屋で手に入れた、安物の村正なのである。

 知ってる人は知ってると思うが、村正は三重の刀鍛冶集団で、同じ村正でもピンキリである。
 多分、塩太郎が買った村正は、下っ端が打った刀だったので、とても安く手に入れる事が出来たのだ。

 まあ、塩太郎自身は、掘り出し物の村正だと信じて疑わないのだけど。

「塩太郎さん。職人なんて、みんなこんなものですよ。
 塩太郎さんは、レンタル料が入ってウハウハ。トラデアルも、聖剣が借りれてウハウハ。
 両方ウィンウィンなので、それでいいじゃないですか!」

 塩太郎と虎子とシャンティーのやり取りを静観して見てたヨネンが、話を纏めようとする。
 多分、店の中で暴れられたくないだけだと思うけど。

「塩太郎も、いいわよね!」

 シャンティーが、念押ししてくる。

「て? いいのかよ? これから、剣王とか剣聖とか倒しにいくんじゃなかったっけ?」

「それなら、木刀を持ってればいいわよ!
 というか、大体、称号持ちは、ハラダ家の人間か、分家のハラ家の人間ばかりだから、真剣を使う事が禁止されてる道場で、称号を掛けて仕合する事ととなると思うから!」

 シャンティーの口から、まさかの言葉が出てくる。

「え!? 称号をかける戦いって、道場で仕合するのかよ?
 俺は、てっきり、殺したら称号が奪える、死合だと思ってたんだけど……」

「道場内で、そんな事出来る訳ないじゃない! 取り敢えず、村正をレンタルしてるうちに、最低でも剣帝に登りつめるのよ!」

「まあ、死合じゃないなら、村正無くてもいいな!」

「そういう事よ!」

 塩太郎は、少しだけ安心する。
 剣姫で剣神のハラダ・ハナ レベルの奴に木刀で挑むのは、流石の塩太郎でも無理だしね。

「で、虎子は、村正を何日レンタルするつもり?
 最長は、3ヶ月間だけど?」

 シャンティーは、虎子に確認をとる。

「勿論、3ヶ月で!」

「アンタ、3ヶ月で幾らになるか分かってんの?
 1ヶ月、30日として、150億マーブル。
 3ヶ月で、450億マーブルの大金払えるの?」

「今は、手持ちを持って無いので払えないですけど、払えなかったら、僕の身体で払いますから、大丈夫です!」

 虎子は、何が嬉しいのかニコニコしながら答える。

「アンタ、何言ってんの!?」

 というか、流石のシャンティーも驚くというか、呆れている。

「聖剣の為だったら、何だってしますよ!
 なにせ、聖剣をこの手で打つのが、僕と、爺ちゃんの、トラデアル家の夢なんですから!
 その為なら、命だって惜しくないです!」

「オイ……コイツ、本当に大丈夫なのか?」

 塩太郎は、虎子の事を、よく知ってそうなヨネンに聞く。

「通常運転ですね! ドワーフの職人しかも、刀鍛冶は、聖剣を自分の手で打つ事に命を燃やしてますから!
 虎子さんは、ドワーフの血が4分の1しか受け継がれてないクォーターですけど、しっかりと、ドワーフ族の血を受け継いでるみたいですね!」

「お前まで、何、言ってんだ?」

「何か、変な事、言いましたか?」

 ヨネンは、不思議そうに首を傾げる。

「塩太郎さん! そう言う訳で、村正は借りて行きますね!
 多分、聖剣を打つ材料費とか色々掛かりそうなので、暫く、お金の返済は出来ないと思いますけど、代金は僕の身体で返す予定なので、今から想像してオカズにでもしておいて下さい!
 僕、結構、いい身体してますんで!それじゃあ!」

 虎子は、そう言うと、とっととドワーフ王国直営店、ムササビ支店を出て、どこかに行ってしまった。

「オカズって……」

 虎子が消えた後、塩太郎は、思わず虎子のグラマラスな身体を想像してしまい、股間にテントを張ってしまったのは、ここだけの話である。
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