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57. 名前がムカつく女
しおりを挟む「取り返したいなら、掛かってくればいいですよ!
但し、丸腰で、このS級冒険者でもある、この僕に勝てるのであれば!」
トラデアルは、背中の担いでいた、でっかいハンマーを構え塩太郎に言い放つ。
「馬鹿かお前? ここは武器屋だぞ!
武器なんて、そこら辺にたくさん転がってんだよ!」
塩太郎は、呆れながらトラデアルに言う。
「エッ?! そうでした……やっぱり、今の言葉、撤回します!」
トラデアルは、慌てて土下座する。
「あの……ここ、一応、高級店なので、武器も1千万マーブル以上のモノしか売ってないんですけど……」
ヨネンが、塩太郎に申し訳無さそうに言う。
「それは、どういう意味だ?」
「だから、一度使ったら買取りになるという事です」
「あの? シャンティーさん?」
塩太郎は、シャンティーにお伺いを立てる。
そう、塩太郎は殆ど、お金を持ってないのだ。
お小遣いとして、シャンティーに1万マーブル貰ってるだけ。
なくなったら、1万マーブル補充されるシステム。
なので、永遠に1万マーブル以上持てない事になる。
「何?お小遣いで払えるなら、買えばいいんじゃない?」
シャンティーは、平然と言い放つ。
「1万マーブルしか持ってねーよ!」
「あら、そうなの?」
シャンティーは、涼しい顔。
「俺、どうすればいいんだよ!」
「持ってる武器で戦えばいいじゃない?」
「俺、村正以外に武器なんか持ってねーよ!」
「その脇差は?」
「これは、飾りだ! 中身入ってねーんだよ!」
「アンタ、それでも侍?」
「うっせーやい! いつも金欠だから、質屋に入れたんだよ!」
「まさか、こっちの世界で!!どこの質屋に入れたの!!」
何を勘違いしたのか、シャンティーが、慌てて詰め寄ってきた。
「京都の質屋に入れたっちゅーの!」
「びっくりした……白蜘蛛がカスタマイズした脇差を、質屋に入れちゃったと思ったじゃない!」
よく分からんが、シャンティーが怒っている。
完全に脇差しも、白蜘蛛がカスタマイズしたモノじゃないかと、勝手に勘違いしての逆ギレだ。どれだけ腹黒なのだろう。お小遣い1万マーブルしかくれない癖に。
「すいません! さっきの発言、却下します!
塩太郎さん! ドンッ!と、掛かって来て下さい!」
ついさっきまで土下座してた、トラデアルが立ち上がり、再び塩太郎を挑発する。
「オイ! 虎子! 舐めんなよ!
俺はこう見えても、京都でその人有りと言われた、伝説の人斬りなんだ!
刀なんか無くても、どうって事ねーんだよ!俺には、これが有るし!」
塩太郎は、自分の魔法の鞄の中から、ヤリヤルでの修行でお世話になった木刀を取り出す。
「虎子って、もしかして僕の事ですか?
勝手に、変な名前付けられるの嫌なんですけど……。
というか、武器が木刀って……舐めてもらっちゃ困りますよ!
僕も、一応、闘気が使えるS級冒険者なんですから!」
「うっせー! 虎子は普通の名前だろうが!
そして、お前なんか木刀で十分なんだよ!
俺は、女にだって容赦しないからな!
こっちの世界に来てから、女の概念が360度変わっちまって、もう護るもんだとは思えなくなっちまったからな!
恨むなら、シャンティーとガブリエルを恨みな!」
塩太郎は、吐き捨てるように言い放つ。
「アンタ! 頭おかしいプッツン女のガブリエルなら分かるけど、私は違うでしょ!
どう考えても、守るべき、か弱い女の子でしょうが!」
なんか、シャンティーの言葉に、同じパーティーメンバーのムネオ以外にも、ヨネンやドワーフ王国直営店ムササビ支店の従業員達が、全員引いている。
「ああーー! うっせー! 兎に角、このチンチクリンを倒せばいいんだろ!」
「僕は、チンチクリンじゃないです! ちゃんと、オイドンって名前があるんです!」
トラデアルが、自分の名前をアピールするのと同時に、場の空気が、一瞬で凍り付く。
「よお、虎子。金輪際、俺の前で、オイドンとか、薩摩っぽのような言葉を発するんじゃねー」
塩太郎は、剣呑な目付きをしてトラデアルに言い放つ。
そう、塩太郎にとって、オイドンは禁句なのだ。
何故なら、オイドンとは、にっくき薩摩藩の大物、西郷隆盛の口癖だったから。
塩太郎が、この世界に来るきっかけとなった蛤御門の変で、長州藩士の仲間達が、薩摩藩士にたくさん殺されてるのだ。
塩太郎的には、何があっても、薩摩藩士は許すことが出来ない、不倶戴天の敵なのである。
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