職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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56. 虎の目の女

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「これは、世紀の大事件です!聖剣は、大体、異世界で元々聖剣だったモノを、この世界に持ってきたモノが殆どです!
 エクスカリバー然り、草薙剣然り、
 そして、聖剣になりかけの日本刀が、この世界に持ち込まれて聖剣になったパターンが、ハラダ家が所有する政宗、そして最後のパターンは、始まりの魔女が、この世界で1から作りだしたスキルスッポンソード!
 そう、例外は、スキルスッポンソードだけなんです!
 因みに、スキルスッポンソードは、鍔と柄の部分だけ。刀身は好みにより替えられるシステムになってます!」

 ヨネンが、興奮気味に説明する。

「成程ね……白蜘蛛は、スキルスッポンソードを作った、始まりの魔女に並んだと?」

 シャンティーが、ヨネンに質問する。

「ハイ! 完全に村正の鍔と柄、それから鞘は、シロさんの作品に付け替えられてますからね!」

「凄いです! 凄いです! 白蜘蛛さん! 流石、僕が目指す刀鍛冶なんです!」

 なんか、ヨネン以上にトラデアルが興奮している。

「一応、説明すると、鞘も柄も鍔も、全てアラクネの糸で作られてて、軽さを出してますね!
 しかも、ミスリルと、この世界には無い筈のアダマンタイトの合金を、金具部分に使って、魔力の通りと強度を出してます!」

 ヨネンが頼んでもないのに、SSS級鑑定眼で、白蜘蛛がカスタマイズした村正を説明しだす。

「ん? 柄と鞘は木材、鍔は鉄で出来てるんじゃねーのか?
 今迄使ってた村正と、何も変わってないような気がするんだが?」

 塩太郎は、疑問を口にし首を捻る。使ってた本人が全く気付いてなかったぐらいなので、見た目では全く分からないのだ。

「塩太郎さん! 塩太郎さん! これは、白蜘蛛さんが編み出したという手法ですよ!
 糸を細かく編み込んで、それを樹脂で硬めるんです!
 すると、どういう訳か、軽くなるのに強度が上がるんですよね!
 まあ、実際、白蜘蛛さんが使ってる素材は貴重過ぎて手に入りませんが、僕は、女郎蜘蛛の糸を編み込み、ミスリルスライムを樹脂代わりにして、真似してますよ!
 実際、この今付けてるビキニアーマーは、その手法で作りましたし!」

 トラデアルが、胸に付けてるビキニアーマーを、カチカチ指で鳴らしながら、白蜘蛛が編み出したという手法を説明する。

「じゃあ、柄の部分の鮫皮のブツブツは、どうしてるんだ?
 流石に、糸じゃブツブツ表現できねーよな?」

「それは、ただ成形しただけですよ?それほど難しくないですね!」

 トラデアルが、職人の立場から事も無げに答える。

「そ……そうなのか……そして俺は、それを全く気付かずに使ってたという訳か……」

 塩太郎は、自分の見る目の無さに驚愕する。
 まあ、弘法筆を選ばずと言うので、塩太郎的にはそれ程、気にしなくていい事なのだけど。
 だって、村正自体、その辺の武器屋で手に入れたモノなので、それ程、愛着もなかったりするのが、正直な所だ。

 実際、幕末時代は、刀は消耗品であったし。

「まあ、この世界には魔力が有りますから、塩太郎さんと居た世界とは、全然違う筈です!
 しかしながら、この村正には、魔力が通りやすくするギミックや魔法付与が、ふんだんに散りばめられてるんです!
 まあ、よく見ると、随所に白蜘蛛マークが散りばめられてますけどね!」

「嘘だろ……」

 ヨネンの言葉を聞いて、村正をよく見ると、柄に巻いてる滑り止めの糸の細かい模様が白蜘蛛になってたり、鞘の金具など、さりげなく白蜘蛛模様が彫り込まれていた。

「では、トラデアルさん。そろそろ、刀を鞘から抜いてくれますか!」

 興奮気味に、ヨネンが、トラデアルに指示を出す。

「了解です!」

 トラデアルは、ヨネンに言われて、ゆっくりと鞘から刀身を露わにする。

「こ……これは?!」

 ヨネンの左目に眠る鑑定眼が光り輝く。

「ヨネンさん!ヨネンさん!  これ、凄いですよ!」

「ハイ。これは凄いです。凄過ぎます。というか、シロさんが恐ろし過ぎます……」

 鑑定眼持ちの、ヨネンとトラデアルが驚愕している。

「何? どうしたの!?」

 シャンティーも、自分の鞄の中から、鑑定魔道具を取り出し、刀身をマジマジ観る。

「ちょっと、何がなんだか分からないんだけど?」

「多分、その鑑定魔道具、S級ぐらいまでしかマトモに鑑定出来ませんよね?
 僕のSSS級の鑑定眼で、村正の刀身を観ると、村正の刀身の周りに、オリハルコンのコーティングが掛けられてるんです!」

「オ……オリハルコンですって!?」

 ヨネンの言葉に、シャンティーは目ん玉飛び出して驚いている。

「そうです! 伝説の素材、オリハルコンです!」

 ヨネンが、勿体ぶって、伝説の素材とか説明するのを、分かった体で、黙って聞いている幕末出身の塩太郎は、勿論、異世界知識が無いので、全く分からない。
 塩太郎に分かるのは、鉄や鋼や玉鋼ぐらい。
 まあ、日本刀の素材の玉鋼は、オリハルコン同様、伝説の素材に分類されるかもしれないけど。

「オリハルコンって、聖剣エクスカリバーと同じ素材のオリハルコンって事でしょ!
 そんな素材、どうやって手に入れるのよ!」

 シャンティーが、興奮気味にヨネンに質問する。

「まあ、シロさんなら入手可能ですけど、わざわざ村正にオリハルコンを使ってくるとは、思いもしませんでした……」

「ちょっと、一体、シロ様って、何者なの!
 アダマンタイトでもビックリしてるのに、聖剣エクスカリバーと同じ、入手不可能な筈のオリハルコンまで扱ってるって!
 もう、その村正、オリハルコンを纏わせた時点で聖剣じゃないの!」

 シャンティーは、衝撃的な事実を告げる。

「ですね……シロさんは、ガブリエル姫様のオーダー。勇者候補と聖剣になりうる日本刀を、異世界からこの世界に持ってくるというオーダーを、日本で既に、村正を聖剣にカスタマイズしてから、塩太郎さんと一緒に、こちらの世界に送り届けたという事になります!」

 ヨネンは、興奮を抑えながらも、冷静に答える。

「もう、それって、この世界の創成に関わったと言われる、スキルスッポンソードを作った、始まりの魔女と、同等の存在って事になるじゃない!」

「ですね。シロさんと、そのご主人様のセドリックさんは、いつも我々の考える斜め上を行きますから、進化の度合いも斜め上なんでしょう!
 なので、シロさんの作品は、新しければ新しい程、価値がでるんです!
 だって、初めて会った時の作品と、今の作品には、雲泥の違いが有りますからね!」

「雲泥の違いって……聖剣なんて、今は亡きドワーフ国宝、ドン・ドラニエルでも作れなかったのよ!
 それを、現地で調達した日本刀を改造して、チャチャっと聖剣作っちゃったんでしょ!そんなの、もう普通の人間じゃないわよ!
 塩太郎も、その辺の武器屋で買った日本刀って、言ってたし!」

「まあ、シロさんは、伝説のアラクネで、神獣様すからね!
 ところで、シャンティーさん、知ってますか?アラクネの伝説。
 アラクネは、神様と織物の勝負をして、勝った事があるらしいと。
 そして、それに腹を立てた神様が怒って、アラクネを人間から、蜘蛛の化け物に変えてしまったと。
 そう、アラクネは、人の身でありながら、神様に勝った事がある稀有な存在なんです!」

 ヨネンは、唐突に、アラクネという種族の豆知識を披露する。

「神に勝つ人間って……」

 シャンティーは、驚きを通り越して、全身血の気が引く。

「凄いです! 凄いです! 神です! 神様です! 白蜘蛛様は刀鍛冶の神様なのです!」

 なんか、トラデアルは、村正をガッチリと抱き締め、スキップしながら村正の刀身に頬擦りしている。

「あの……そろそろ返してくれるか?」

 塩太郎は、トラデアルの常軌を逸した行動に一抹の不安を覚え、トラデアルに村正を返すように言う。

 しかし、

「嫌です! 絶対に返しません!」

「ハッ? 何言ってんだ?お前?」

 塩太郎は、剣呑な雰囲気を醸し出し、トラデアルにプレッシャーをかける。

「そんなに怖い顔しても、絶対に返しませんよ!
 この村正を研究して、僕も聖剣を打てるような、超一流の刀鍛冶になるんです!」

 トラデアルは、そう言うと、サッサと村正を鞘に収め、自分の魔法の鞄の中に仕舞った。

「エッ!? ちょっと、お前!」

「取り返したいなら、かかってくればいいですよ!
 但し、丸腰で、このS級冒険者でもある、この僕に勝てるのであれば!」

 トラデアルは、背中に担いでいた巨大なハンマーを手に構え、獰猛な虎のような鋭い目付きで、塩太郎に言い放った。

 ーーー

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