56 / 166
56. 虎の目の女
しおりを挟む「これは、世紀の大事件です!聖剣は、大体、異世界で元々聖剣だったモノを、この世界に持ってきたモノが殆どです!
エクスカリバー然り、草薙剣然り、
そして、聖剣になりかけの日本刀が、この世界に持ち込まれて聖剣になったパターンが、ハラダ家が所有する政宗、そして最後のパターンは、始まりの魔女が、この世界で1から作りだしたスキルスッポンソード!
そう、例外は、スキルスッポンソードだけなんです!
因みに、スキルスッポンソードは、鍔と柄の部分だけ。刀身は好みにより替えられるシステムになってます!」
ヨネンが、興奮気味に説明する。
「成程ね……白蜘蛛は、スキルスッポンソードを作った、始まりの魔女に並んだと?」
シャンティーが、ヨネンに質問する。
「ハイ! 完全に村正の鍔と柄、それから鞘は、シロさんの作品に付け替えられてますからね!」
「凄いです! 凄いです! 白蜘蛛さん! 流石、僕が目指す刀鍛冶なんです!」
なんか、ヨネン以上にトラデアルが興奮している。
「一応、説明すると、鞘も柄も鍔も、全てアラクネの糸で作られてて、軽さを出してますね!
しかも、ミスリルと、この世界には無い筈のアダマンタイトの合金を、金具部分に使って、魔力の通りと強度を出してます!」
ヨネンが頼んでもないのに、SSS級鑑定眼で、白蜘蛛がカスタマイズした村正を説明しだす。
「ん? 柄と鞘は木材、鍔は鉄で出来てるんじゃねーのか?
今迄使ってた村正と、何も変わってないような気がするんだが?」
塩太郎は、疑問を口にし首を捻る。使ってた本人が全く気付いてなかったぐらいなので、見た目では全く分からないのだ。
「塩太郎さん! 塩太郎さん! これは、白蜘蛛さんが編み出したという手法ですよ!
糸を細かく編み込んで、それを樹脂で硬めるんです!
すると、どういう訳か、軽くなるのに強度が上がるんですよね!
まあ、実際、白蜘蛛さんが使ってる素材は貴重過ぎて手に入りませんが、僕は、女郎蜘蛛の糸を編み込み、ミスリルスライムを樹脂代わりにして、真似してますよ!
実際、この今付けてるビキニアーマーは、その手法で作りましたし!」
トラデアルが、胸に付けてるビキニアーマーを、カチカチ指で鳴らしながら、白蜘蛛が編み出したという手法を説明する。
「じゃあ、柄の部分の鮫皮のブツブツは、どうしてるんだ?
流石に、糸じゃブツブツ表現できねーよな?」
「それは、ただ成形しただけですよ?それほど難しくないですね!」
トラデアルが、職人の立場から事も無げに答える。
「そ……そうなのか……そして俺は、それを全く気付かずに使ってたという訳か……」
塩太郎は、自分の見る目の無さに驚愕する。
まあ、弘法筆を選ばずと言うので、塩太郎的にはそれ程、気にしなくていい事なのだけど。
だって、村正自体、その辺の武器屋で手に入れたモノなので、それ程、愛着もなかったりするのが、正直な所だ。
実際、幕末時代は、刀は消耗品であったし。
「まあ、この世界には魔力が有りますから、塩太郎さんと居た世界とは、全然違う筈です!
しかしながら、この村正には、魔力が通りやすくするギミックや魔法付与が、ふんだんに散りばめられてるんです!
まあ、よく見ると、随所に白蜘蛛マークが散りばめられてますけどね!」
「嘘だろ……」
ヨネンの言葉を聞いて、村正をよく見ると、柄に巻いてる滑り止めの糸の細かい模様が白蜘蛛になってたり、鞘の金具など、さりげなく白蜘蛛模様が彫り込まれていた。
「では、トラデアルさん。そろそろ、刀を鞘から抜いてくれますか!」
興奮気味に、ヨネンが、トラデアルに指示を出す。
「了解です!」
トラデアルは、ヨネンに言われて、ゆっくりと鞘から刀身を露わにする。
「こ……これは?!」
ヨネンの左目に眠る鑑定眼が光り輝く。
「ヨネンさん!ヨネンさん! これ、凄いですよ!」
「ハイ。これは凄いです。凄過ぎます。というか、シロさんが恐ろし過ぎます……」
鑑定眼持ちの、ヨネンとトラデアルが驚愕している。
「何? どうしたの!?」
シャンティーも、自分の鞄の中から、鑑定魔道具を取り出し、刀身をマジマジ観る。
「ちょっと、何がなんだか分からないんだけど?」
「多分、その鑑定魔道具、S級ぐらいまでしかマトモに鑑定出来ませんよね?
僕のSSS級の鑑定眼で、村正の刀身を観ると、村正の刀身の周りに、オリハルコンのコーティングが掛けられてるんです!」
「オ……オリハルコンですって!?」
ヨネンの言葉に、シャンティーは目ん玉飛び出して驚いている。
「そうです! 伝説の素材、オリハルコンです!」
ヨネンが、勿体ぶって、伝説の素材とか説明するのを、分かった体で、黙って聞いている幕末出身の塩太郎は、勿論、異世界知識が無いので、全く分からない。
塩太郎に分かるのは、鉄や鋼や玉鋼ぐらい。
まあ、日本刀の素材の玉鋼は、オリハルコン同様、伝説の素材に分類されるかもしれないけど。
「オリハルコンって、聖剣エクスカリバーと同じ素材のオリハルコンって事でしょ!
そんな素材、どうやって手に入れるのよ!」
シャンティーが、興奮気味にヨネンに質問する。
「まあ、シロさんなら入手可能ですけど、わざわざ村正にオリハルコンを使ってくるとは、思いもしませんでした……」
「ちょっと、一体、シロ様って、何者なの!
アダマンタイトでもビックリしてるのに、聖剣エクスカリバーと同じ、入手不可能な筈のオリハルコンまで扱ってるって!
もう、その村正、オリハルコンを纏わせた時点で聖剣じゃないの!」
シャンティーは、衝撃的な事実を告げる。
「ですね……シロさんは、ガブリエル姫様のオーダー。勇者候補と聖剣になりうる日本刀を、異世界からこの世界に持ってくるというオーダーを、日本で既に、村正を聖剣にカスタマイズしてから、塩太郎さんと一緒に、こちらの世界に送り届けたという事になります!」
ヨネンは、興奮を抑えながらも、冷静に答える。
「もう、それって、この世界の創成に関わったと言われる、スキルスッポンソードを作った、始まりの魔女と、同等の存在って事になるじゃない!」
「ですね。シロさんと、そのご主人様のセドリックさんは、いつも我々の考える斜め上を行きますから、進化の度合いも斜め上なんでしょう!
なので、シロさんの作品は、新しければ新しい程、価値がでるんです!
だって、初めて会った時の作品と、今の作品には、雲泥の違いが有りますからね!」
「雲泥の違いって……聖剣なんて、今は亡きドワーフ国宝、ドン・ドラニエルでも作れなかったのよ!
それを、現地で調達した日本刀を改造して、チャチャっと聖剣作っちゃったんでしょ!そんなの、もう普通の人間じゃないわよ!
塩太郎も、その辺の武器屋で買った日本刀って、言ってたし!」
「まあ、シロさんは、伝説のアラクネで、神獣様すからね!
ところで、シャンティーさん、知ってますか?アラクネの伝説。
アラクネは、神様と織物の勝負をして、勝った事があるらしいと。
そして、それに腹を立てた神様が怒って、アラクネを人間から、蜘蛛の化け物に変えてしまったと。
そう、アラクネは、人の身でありながら、神様に勝った事がある稀有な存在なんです!」
ヨネンは、唐突に、アラクネという種族の豆知識を披露する。
「神に勝つ人間って……」
シャンティーは、驚きを通り越して、全身血の気が引く。
「凄いです! 凄いです! 神です! 神様です! 白蜘蛛様は刀鍛冶の神様なのです!」
なんか、トラデアルは、村正をガッチリと抱き締め、スキップしながら村正の刀身に頬擦りしている。
「あの……そろそろ返してくれるか?」
塩太郎は、トラデアルの常軌を逸した行動に一抹の不安を覚え、トラデアルに村正を返すように言う。
しかし、
「嫌です! 絶対に返しません!」
「ハッ? 何言ってんだ?お前?」
塩太郎は、剣呑な雰囲気を醸し出し、トラデアルにプレッシャーをかける。
「そんなに怖い顔しても、絶対に返しませんよ!
この村正を研究して、僕も聖剣を打てるような、超一流の刀鍛冶になるんです!」
トラデアルは、そう言うと、サッサと村正を鞘に収め、自分の魔法の鞄の中に仕舞った。
「エッ!? ちょっと、お前!」
「取り返したいなら、かかってくればいいですよ!
但し、丸腰で、このS級冒険者でもある、この僕に勝てるのであれば!」
トラデアルは、背中に担いでいた巨大なハンマーを手に構え、獰猛な虎のような鋭い目付きで、塩太郎に言い放った。
ーーー
ここまで読んで下さりありがとうございます。
面白かったら、ブックマークに入れてね!
3
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界の剣聖女子
みくもっち
ファンタジー
(時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。
その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。
ただし万能というわけではない。
心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。
また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。
異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。
時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。
バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。
テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー!
*素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる