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53. 偉人好きの幼女
しおりを挟む「ぐすん。悲しいです。辛いです」
シロは、涙目で、吉田稔麿の最後を見ている。
黒田官兵衛とか、玄人好みを愛する歴幼女のシロにとって、吉田稔麿は、ド直球のストライク。
一応、松下村塾の三秀とか言われてるが、早くに死んでいる為、山口県出身者や、長州好きにしか知られていない。
結局、生き残った奴だけが、歴史に名を残す。
あ。そう言えば、長州出身者でも、生き残れたお陰で総理大臣にまでなれた人居るな……。
山縣有朋が、そうだ。
まあ、長州藩にとって、山縣有朋なんて、小物中の小物だったんだけど。お札にもなれた。
長州藩は人材の宝庫だったけど、幕末時代に、その殆どが死んでしまっている。
優秀な奴ほど、早く死ぬのだ。
有名、無名、一体、何百人死んだのだろう。
薩摩藩なんか、一番優秀だったと思われる西郷隆盛や大久保利通とか、普通に生き残ってるし。
謹慎中だった高杉晋作や、イギリス留学中だった伊藤博文や井上馨が、蛤御門の変で死なずに生き残れてたのは、本当に奇跡的だったのだ。
特に、高杉晋作と伊藤博文が、蛤御門の変に参加して死んでいたら、日本も間違いなく西洋国家の植民地となってただろう。
とか、セドリックが、やたらと説明ぽい妄想をしながら、塩太郎と吉田稔麿を眺めてると、突然、場面が動き出す。
「アッ! 佐藤 塩太郎。吉田稔麿置いて、逃げたぞ!」
セドリックは、涙を流して悲しんでたシロに、教えてやる。
「仕方が無いですよ! 死体担いで逃げられませんし!」
以外とシロは、クールだ。
あれ程、吉田稔麿が死んで悲しんでたのに。
やはり、血も涙もない魔物だからか?
「ご主人様、言い方! 口に出さなくても、ご主人様の考えは筒抜けなので、気を付けて下さい!
それから、血も涙も有りますから!
今も、ご主人様の目の前で、悲しんで泣いてましたからね!」
シロが、セドリックの頭を勝手に読んで抗議してくる。
というか、泣いてると言ってる癖に、今は何故かニヤケてるんだけど。
やっぱりシロは、血も涙もない魔物で間違い無い。
「そりゃあ、僕だってニヤケますよ!
だって、目の前に、僕が大好きな偉人が落ちてるんですよ!」
「お前、まさか……」
「そのまさかです! 吉田稔麿は、姫ポーションで生き返らせて、僕達の世界に連れていきます!」
「ちょっと、シロちゃん。それは出来ない相談だよ!」
ここまで黙って聞いていた、アマイモンが話に割って入る。
「お父さん。分かってますよ! 異世界に戻る魔力が、足りないと言うんでしょ!
多分、僕と、ご主人様と、お父さんと、勇者候補、4人分の魔力しか、異世界転移用の魔道具、『金の鍵』にストックされてないんですよね?」
どうやら、シロは全てわかった上で、吉田稔麿を、南の大陸に連れて帰ろうとしてみたいだ。
「ですよ!だから、シロちゃん。稔麿さんは、諦めて下さい!」
「問題無いです! 僕は、魔法の鞄の中に、こんな事もあろうと、魔石のストックをたくさん持ってきましたから!
まあ、少し足りなそうですけど、残りは自分達の魔力で補います!
幸い、地球に吸収されてしまう魔力より、僕とご主人様が発する魔力の方が多いので、後、数年もしたら一人分くらいの異世界転移に使う魔力ぐらい溜まる計算ですね」
シロは、事も無げに話す。
「お前、何、言ってんだ? 勇者候補を確保したら、元の世界に帰るんじゃなかったのかよ!」
「お父さんと、勇者候補だけに、先に帰ってもらえばいいんじゃないですか?
僕、高杉晋作とかも、実は確保するつもりなんですけど!」
また、シロがトンデモ無い事を話し出す。
というか、それが、シロが地球に来た最大の目的?
シロは、また別の話だが、歴史的偉人を集めるのが趣味なのだ。
「お前、吉田稔麿と、高杉晋作二人も異世界転移させるのに、どんだけ魔力居ると思ってるんだよ!」
「10年くらいですかね?」
「10年って……もう、計算してるのかよ!」
やはり、シロは、最初から計画してたようだ。
「ご主人様、それより、覚えてるんですか?
元の世界に戻ると、ご主人様、神に狙われるって!」
「確か、そんな設定も有ったな……」
セドリックは、すっかり忘れてたのを思いだす。
「だから、地球に居るのは、丁度、良いんですって!
ただ、地球に居るだけで、僕達は鍛えられるんですから!
ドラゴ〇ボールに出てきた、人工重力発生装置覚えてます?
ナメック星に行く途中、宇宙船に設置されてた奴!
あれで悟空が、重力を地上の100倍の環境にして鍛えたでしょ!
地球に居るのは、僕達にとって、それと一緒の事なんですよ!」
シロが、丁度いいじゃん。て感じで、軽い感じに言ってくる。
「というか、俺って、神と敵対するの、決定してるのか?」
「ご主人様は、僕の味方ですよね?」
「だな」
「だったら、神は敵です!」
シロは、当たり前のように言い切る。
「嘘だろ! そんな理由で、俺、神と敵対しないといけないの!」
「セドリック君。大丈夫だよ! 僕の敵も、勿論、神だから!」
何故か、アマイモンが胸を張り、エッヘンとする。
「そりゃあ、お前は、悪魔だから、神は敵だろうよ!」
セドリックは、食入り気味に突っ込む。
だって、アマイモンが言いそうな事、初めから分かってたし。
「ご主人様。諦めて下さい。これは運命ですから!
一緒に10年間、地球で暮らしパワーアップしましょ!
そして、神に対抗できる力を身に付けるんです!
幸い、今の地球には神様居ませんから、地球は、この上なく安全な場所なんです!」
まあ、地球に神様が居ない事は、何となく分かってた。
アマイモンとか、この世界の悪魔達も、魔力が豊富な南の大陸というか、異世界に移住してるし。
多分、魔力が全く無い地球は、神や悪魔にとって、とても住みにくい惑星なのだろう。
「じゃあ、そういう事で!」
「えっ!? 地球に10年居るのは、決定なのか?」
セドリックは、こうして、シロと一緒に10年間、地球で暮らす事となった。
勿論、蛤御門の変で死んだ、勇者候補の佐藤 塩太郎を、アマイモンと一緒に、異世界に送り届けて。
まあ、自分達が帰る時の事も考えて、少し、魔力をケチったので、どこに転移したか分からないけど。
確実に、南の大陸には送り届けれた筈だ。
場所や時間がズレてても、誤差の範囲だろう。
時間としては、数年。
場所は、南の大陸のどこか。
佐藤 塩太郎は、結構、強そうなので、なんとかなる筈だ。
例え、南の大陸の、SSSS級のダンジョンの最下層に転移したとしてもね。
ーーー
番外編! 始祖とアラクネの、塩太郎観察日記。これにて終了!
ん? セドリックとシロは、一体、何者?
セドリックとシロの話を、もっと読みたいって?
気になる人だけ、小説家になろうR18ミッドナイトノベルズ、総合年間2位、完了済年間1位を取った事のある、『骨から始まる異世界転生~裸の勇者はスケルトンから成り上がる』を、読んでね!
アフルァポリスにもあるよ。
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