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48. 候補者の男
しおりを挟む「やっぱり、最初に見た人が、一番凄かったですね!」
セドリックとシロは、幕末京都に訪れて1ヶ月後も、相変わらず、日課の夜廻りをしてる。
「ああ。1ヶ月間、夜廻りしたけど、アイツが一番ヤバかった!
だって、襲われた牛車運転手、往来に歩いてる人の悲鳴で、自分が運転してた牛車の籠の上半分が無くなったの気付いてたもんな!
やっぱり、この時代は、無名でもヤバい奴が居るよな!」
「有名人も、ヤバい人たくさん居ましたけど、大体、性格に難がある人ばかりでしたもんね!」
「ああ。わざわざ、土佐まで見に行った岡田以蔵なんて、ただの人を斬りたいだけの根性無しだったし、新撰組の沖田総司も、笑いながら人を斬るタイプのサイコ野郎だったしな!」
「僕は、ちょっと世の中の人々は、沖田総司を美化し過ぎだと思いました!
実際見たら、沖田総司ブサメンでしたし!」
「ハハハハハ! まあな。でも、最初の計画では、もうすぐ死ぬ運命の、岡田以蔵と沖田総司が、最有力勇者候補だったんだけどな。
流石に、ヤバいサイコ野郎を、ガブリエルに紹介できないからな……」
「ですよね! 有名な人斬りは、サイコ野郎ばかりですよ!
最初から候補に入ってなかったけど、岡田以蔵と並ぶ幕末四大人斬りの一人、河上 彦斎も、笑いながら人を斬る系の、ヤバいサイコ野郎でしたもんね!」
「沖田総司もそうだが、普段、子供や女に優しいタイプの、笑いながら人を斬れるような奴らは、大体、精神に何か欠陥があるんじゃないのか?
まあ、河上 彦斎は明治まで生き残るから、異世界に連れ帰るのは、最初から無理だったけどな……」
そう。セドリックとシロが、求める勇者候補は、歴史に埋もれた、超絶強くて、しかも、ある程度マトモな人格者。
もっと言うと、近々、死んでくれる人が、尚良かったりする。
セドリック達は、ガブリエルから姫ポーション持たされているので、死んじゃっても、30分以内なら生き返させれるのだ。
「唯一、この時代に生き残ってた、幕末四大人斬りで人格者だったのは、薩摩の中村半次郎だけでしたね!」
結構、セドリックとシロはミーハーなので、有名な人斬りは、全員チェックしてたりする。
「まあ、半次郎も、明治まで生き残るから、異世界に連れ帰っちゃうと、日本の歴史が大きく変わる可能性が出てきちゃうからな……。
というか、彦斎と半次郎を、異世界に連れて帰っちゃうと、漫画の『る〇うに剣心』が、無くなる可能性が有るから、絶対に駄目だろ!」
「でしたね……。そうすると、やはり最終候補は、最初にたまたま見つけた人になりますね!」
「2回目に見た時は、余りに速い、すれ違いざまの居合抜きで、斬られた奴、自分が斬られた事も気付かずに暫く歩いてたもんな!」
「そうそう。暫く歩いて、向こうから知り合いの人が来たのか、挨拶しようと頭を下げたら、そのまま胴体が、地面に滑り落ちちゃた奴ですよね!」
シロは、その時の様子を思い出したのか、とても可笑しそうに話す。
「冗談はさておき、勿論、そいつの事、調べてるんだろうな?」
セドリックは、ちょっとだけ真剣な顔をして、シロに尋ねる。
「ご主人様、誰に言ってるんですか?
勿論、普通の人じゃ調べられない所まで、調べはついてますよ!」
シロは、ニヤリと笑う。
「では、その調べまくった情報とやらを、披露して貰おうか!」
「フフフ。僕が調べ抜いた情報を、聞いて驚いて下さい!
まず、名前は、佐藤 塩太郎。25歳独身。
表向きは脱藩してますが、長州藩に所属してます。
所謂、攘夷派の松下村塾派閥に属していて、高杉 晋作の用心棒のような事をしてました。
なので、松下村塾派閥のなかでも、高杉派閥に属してます。
現在は、親分の高杉晋作が謹慎中、同じ高杉派閥の、伊藤博文や井上馨がイギリス留学中な為、主に、京都で、同じ松下村塾派閥の久坂玄瑞や、吉田稔麿の仕事を手伝ってるみたいです!」
シロは、少しばかり長めの説明をして、どうだとばかりに、無い胸を張る。
「成程な……。高杉派閥なのに、全くの無名だっていう事は、多分、2ヶ月後に起こる蛤御門の変で、死んじゃうんだろうな……」
「間違い無いですね。長州藩の大物は、殆ど、これから起こる蛤御門の変で死んでしまいますから。
死ななかった者達も、責任を取らされて切腹。
更にすぐに、下関戦争が起こって、イギリス・フランス・オランダ・アメリカの四カ国連合にボコボコにされますしね」
「結局、幕末の時代、頑張ってたのは長州藩だけだもんな。
中国地方の小さい藩が、日本、イギリス、フランス、オランダ、アメリカと戦ってたんだぞ!頭イカれてるよな!」
「頭イカれてるって、それ、褒め言葉ですか?」
「兎に角、長州藩には、幕末時代、早死にした無名な奴が、ゴロゴロ居るという話!
結局、明治まで生き残った奴が有名になっただけ。
だって、薩摩の西郷隆盛とか、大久保利通とか、幕末時代、殆ど何もやってないだろ?
西郷なんて、島流しにされて、島で畑耕してただけだし。
だけど、生き残れたから、話が誇張されて身の丈に合わない偉人になれた訳だろ! 畑仕事してただけで!」
「ご主人様、辛辣ですね……」
「そうか? それより、甘いか辛いか分からん名前の佐藤・塩太郎という奴は、結局、人格者なのか?」
そう。佐藤 塩太郎という人物の素性も分かり、凄腕なのは分かったが、勇者候補としてガブリエルに紹介する手前、ただの人斬りサイコ野郎だと困るのだ。
「僕が調べた限りだと、人格者ですね!
決して、殺しを楽しんではいません!
典型的な、日本の行く末を憂う幕末志士といった感じです!」
「まあ、松下村塾門下生なら、そうなるな……。奴ら、相当、吉田松陰の思想に洗脳されてるからな……」
「ご主人様、言い方!」
シロが、セドリックを窘める。
「でも、吉田松陰門下生の中でも、高杉派閥の奴らなんかは、もう、今頃の時期になると、攘夷派のフリした、完全なる開国派だからな!
高杉は、上海で、白人に奴隷のように扱われてる中国人を見て、伊藤博文と井上馨は、イギリス留学で、産業革命を成し遂げたイギリスの底知れない国力を見て、今の日本の力じゃ西洋国家に勝て無いと気付き、開国派に鞍替えしてるしな!」
「でも、塩太郎は、ずっと国内にいるから、まだ尊皇攘夷思想に凝り固まってるでしょ!」
「まあ、その辺の所はどうでもいいけど、兎に角、今の所は、佐藤・塩太郎が一番の候補だな!
塩太郎より、凄い奴見つけたら、別だけど」
「僕も、同意見です!」
こんな感じで、異世界に連れて帰ってくる勇者候補は、甘いのか辛いのか分からない名前の、佐藤 塩太郎と、大体決まったのであった。
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