職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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47. ヤバ過ぎる男

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 三度の飯より歴史好きのセドリックと、ご主人様であるセドリックの影響で、歴幼女に育ってしまったシロは、その日から、京都の夜の見廻りを始めた。

「あの浪人風の男、水戸天狗党お抱えの人斬りですね!」

 シロが地上を指差し、セドリックに伝える。

 現在、セドリック達は透明マントを被り、空から、京都を監視しているのだ。

 ん? どうやって空から監視してるかって?
 そんなの、始祖に不可能な事など、ないのである。

 因みに、アラクネのシロは、お尻から糸をだし、電場の力を借りて空高くにまで上昇し、羽がないにも関わらず「飛行して」移動できたりする。

「ご主人様! 僕、お尻から糸出すとか、はしたない真似してませんから!
 勝手に、頭の中で、誰かに説明しないで下さい!
 普通に、高い木や建物とかに糸を張って、その上に立ってるだけですからね!」

 次いでに言うと、神獣で、ご主人様が大好き過ぎるシロは、いつの間にか、セドリックの心を読めるようになってたりする。

「そうだったの?」

「そうですよ! それより、あの男です!」

 シロが再び、夜の街に紛れる、不審な男を指差す。

「というか、お前。どうしてアイツが、水戸天狗党お抱えの人斬りだって分かるんだ?」

「そんなの水戸藩邸も監視してるからですよ!
 そして、今日、この時間に、幕府に肩入れしてる公家を暗殺するという情報も手に入れてるんです!」

「えっ? 水戸藩邸も監視してるの?」

「当たり前ですよ! 水戸藩は尊皇攘夷思想の発祥の藩ですし、長州藩に次ぐ過激な藩ですからね!」

「確かに、普通の日本人は、尊皇攘夷派の藩と言えば、長州藩、薩摩藩、土佐藩だと思ってる無知な奴が多いが、実際は、薩摩藩と土佐藩は、それ程、尊皇攘夷の藩じゃないもんな!
 薩摩藩なんか、ずっと幕府よりだったし!
 その点、水戸藩なんか、有名な桜田門外の変でも、水戸藩の脱藩者17名が参加してるし、薩摩藩士なんか1名だけだし!
 この1名のお陰で、薩摩藩は、幕末後、ずっと攘夷派だったと言いはる始末だし!
 そんでもって、もっとマニアックな話をすると、この桜田門外の変に参加した薩摩藩士、有村次左衛門の兄ちゃんの海江田信義(有村俊斎)が、長州藩が生んだ戦争の天才、大村益次郎を暗殺した黒幕と言われてるんだよね!」

 セドリックは、ここぞとばかりに、マニアックな歴史知識を披露する。

「確か、有村家は三兄弟で、桜田門外の変に参加した一番下の弟が、一番有能で、上の兄弟になるほど、愚鈍になると言われてたんですよね!」

 シロも、よりマニアックなネタを被せてくる。
 しかし、セドリックも負けじと、もっとマニアックなネタを被せる。

「ああ! もし、大村益次郎がいなければ、戊辰戦争も泥沼化してた筈と言われてるし、暗殺されてなければ、その後の日本陸軍も大きく変わってたと言われるぐらいの戦争の天才だった大村益次郎を、有村俊斎は、ただの逆恨みで暗殺しやがったんだ!」

「ご主人様って、相当、薩摩嫌いですよね……」

「当たり前だ! 俺は、長州贔屓の司馬遼〇郎先生に洗脳されてるんだよ!
 因みに、俺の幕末の知識は、高校生の時に読んだ司馬遼〇郎先生の小説の知識な!」

 セドリックは、興奮気味に答える。

「まあ、この話は置いといて、幕府に肩入れしてる公家が、牛車に乗って、御屋敷から出て来ましたよ!」

「そのようだな」

 セドリックは、気持ちを落ち着かせ、返事をする。

「アッ! 水戸天狗党お抱えの人斬りが潜む道を通らず、曲がっちゃいましたよ!」

「駄目じゃん! 人斬りのプロなのに、ちゃんと調べてなかったのかよ!」

「多分、調べてたと思いますよ。ですが、この時代は、辻斬りが多い時代なので、狙われる心当たりの者は、頻繁に道順を変えてると思われます!」

「なるほど」

 セドリックは、シロに指摘されて、妙に納得する。

「アッ! 誰か、現れましたよ!」

「アイツも刺客か?」

「分かりませんが、身のこなしが普通じゃありません!」

「速いな……て、アイツ、牛車の籠を、真横にぶった斬りやがったぜ!」

「ヤバいです! 牛車の運転手も、全く気付いてないです!」

「ああ。普通に牛車、進んじゃってるもんな。公家の頭は、地面に転がってるけど……。
 というか、牛車を守ってた用心棒の首も飛んでるじゃん!」

「計算されつくした一太刀でしたね! 一振で、ターゲットの首と、用心棒三人の首を同時に刎ねちゃいました!」

「そんな事、可能なのかよ!」

「可能なんでしょ。実際やってますし!」

「というか、アイツ、何事もなかったように帰っていくぞ!」

「まあ、牛も牛車の運転手も襲われた事に、全く気付いてませんし、ターゲットだった公家と用心棒も、一言も発する事なく殺されちゃいましたからね。
 しかも、牛車の上部も、滑るように地面に落ちましたから、牛車を引く音に、完全に掻き消されましたね!」

 ちょっと、有り得ないシュチュエーションに、シロも興奮気味だ。

「こいつは、要チェックだな!」

「ハイ!気付かれないように、あの人にも、監視の蜘蛛を付けときますね!」

 こうして、セドリックとシロは、このヤバ過ぎる人物を監視し続ける事を、決めたのであった。
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