職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
43 / 166

43. 氷魔法に憧れる男

しおりを挟む
 
「すんげーぜ! すんげーぜ!」

 塩太郎は、大きな四角い建物、まんまイ〇ンショッピングモールに入ると、すんげーぜ!を連発する。

「アンタ、本当に、すんげーぜ!しか言えないの?」

 シャンティーは、余りのボキャブラリーの無さに呆れている。

「だってよー! このウルフデパートだっけか、建物の中が凄く涼しいんだぜ!」

「見た目じゃなくて、そこ?!」

 塩太郎は、まさかの空調設備にビビっていたのである。

「ただの冷房でしょ?」

「冷房って、どっかにデッケー氷とか置いてるのかよ!
 というか、これが噂の氷魔法か?」

 幕末出身の塩太郎は、知らなかった。
 イ〇ンショッピングモールには、空調設備がしっかり設置されており、夏は涼しく、冬は暖かくなる事を。
 というか、現在の日本のスーパーやコンビニ、図書館、公共設備には、当たり前のように、冷房が完備されてる事を。
 そして、冒険者の国、ムササビ自治国家は、昔から異世界人が多く暮らしてる事もあり、地球の文化がメチャクチャ普及してるので、当たり前のように、お店に冷房が完備されてる事を、幕末出身の塩太郎は知らなかったのである。

「デッカイ氷なんか置いてる訳ないでしょ!
 空調の魔道具を設置してるだけよ!」

「魔道具?」

「本当、アンタ面倒臭いわね! 無駄に異世界知識が豊富だったゴトウ・サイトと、同じ日本人とは到底思えないわ!」

「だから、ゴトウなんて奴、知らねーよ!
 俺の居た時代の人間じゃねーんだろ? 」

 塩太郎は、やたらと話に出て来るゴトウ・サイトにジェラシーを感じてたりする。『話をしてるのは、俺だって!』という感じで。

「まあ、そうだったわね……兎に角、冷たい風は魔道具から出てきてるのよ!」

「うわっ! アレはなんだ?!」

「ちょっと、アンタ、人が折角、説明してあげてるのに、聞いてんの!」

「だってよ! デッケー箱の中に街が有るんだぜ!
 誰でも、驚くってもんだろうがよ!」

 ウルフデパートは、まんまイ〇ンショッピングセンターなのだが、1階はデパートのように、高級品のお店がゆったりとしたスペースで並んでいる。
 そんでもって、2階は吹き抜けになっており、庶民にも手に入るお手頃価格の商品が売ってる感じだ。
 次いでに言うと、フードコートも2階に有って、高級店から、庶民でも食べれるラーメン屋やら、ハンバーガー屋やら、この世界の有名店が一堂に集合している。

 簡単に言うと、1階は高級デパート、2階はまんま、イ〇ンショッピングモールといった感じと思えば間違い無い。

「アンタ、どんだけ田舎者なのよ!」

 シャンティーが、蔑んだ目を塩太郎に向けてくる。

「お前、俺の事舐めてるだろ! 俺はこう見えても、毛利の城がある萩出身だぞ!
 それに、若い頃は、高杉について江戸でも暮らしてたし、つい最近まで、京都を拠点に活動してたんだからな!
 こんな都会っ子の俺が、田舎者の訳ないだろうがよ!」

「じゃあ、原始人ね! 空調も知らないって、これまで何度か異世界人に会った事あるけど、アンタが初めてだもん!
 殆どの異世界人は、ムササビに来て、やっと文明の利器に出会えたと、ムササビに定住を決める異世界人はよく見たけど、アンタみたいに、口をあけて、すんげー! すんげー!言ってるアホ面の異世界人は見た事なかったからね!」

「お前、どんだけ口が悪いんだ!腹黒妖精!」

「キィーー腹黒言うなー!田舎者の原始人!」

「俺は、田舎者でも原始人でもねーーよ!」

 塩太郎とシャンティーは、至近距離で睨み合ってると、

「まあまあシャンティー殿も、塩太郎も、そこら辺にしときましょう。もう、ドワーフ王国の直営店の前まで来てしまいましたので」

 最近では、完全に、シャンティーと塩太郎の宥め役になってるムネオが間に入る。

「だってさー! ムネオさん、この腹黒妖精、一々、ムカつく事、言ってくるんだぜ?
 俺は、ただ、知らない事を質問してるだけなのに!」

「ムネオ! アンタ、まさか、塩太郎の味方じゃないわよね!
 私は、アンタのオムツまで替えてあげた事もある恩人だという事、分かってんでしょうね!」

「オムツを替えて貰った記憶は有りませんけど、シャンティー殿の事は、心から尊敬しておりますから……」

 ムネオは、絶対に、心にも思って無い事を言う。

「まあ、そうよね! 分かればいいのよ! 分かれば!」

 シャンティーは、いつもの事ながらムネオに偉そうだ。

「で、ここが、ムネオさんの大盾を注文してる、ドワーフ王国直営店なのか?」

 塩太郎は、チャッチャと切り替え、シャンティーに別の質問をする。

「そうよ! ここがドワーフ王国が運営してる4つの直営店の内の1つ!
 ドワーフ王国直営店、ムササビ支店よ!
 実際、ドワーフ王国にある本店より、品揃えは豊富と言われてるわね!
 特に、ドワーフ王、ドラクエルの作品が多く販売されてる事で有名なのよ!」

「ドワーフ王って、『犬の肉球』のOBで、アンさんの親父さんか?」

「そう! アンの父親で、私達の仲間、ドラクエルよ!
 因みに、ドワーフ王国直営店、漆黒の森支店には、アンの作品が充実してたりするわね!」

「アンさんも、大盾とか作るのかよ!」

 塩太郎は、まさかの事実に驚く。
 幕末日本では、女の鍛冶師など居ないので、当然なのだけど。

「アンも防具製作においては、父親の血を引き継いでるので天才よ!」

「ヤバイ親子だな……」

「だから、アンも『犬の肉球』に入れたかったのに、ゴトウ・サイトの奴に、かっさわれたのよ!」

 シャンティーは、喋りながら思い出したのか、キィーーとなっている。

「お前、ゴトウ・サイトの事、褒めたり褒めなかったり、好きなのか嫌いなのか、どっちなんだ?」

「大嫌いに、決まってるでしょ!」

 どうやら、シャンティーは、塩太郎と同じく、みんな大好きゴトウ・サイトが、嫌いだったようだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...