36 / 166
36. フラグ男
しおりを挟む「オイオイ。本当に、ここでいいのかよ?」
塩太郎は、魔物を倒しながらシャンティーに質問する。
「ここで間違い無いわよ! ヤリヤルが誇るA級ダンジョン!」
「でも、出てくる魔物弱過ぎだろ?」
まあ、本来なら、A級ダンジョンの魔物を木刀で倒すのも難しいのだが、そこは幕末最強の人斬りだった塩太郎。
すぐに対応して、もう、殆どの攻撃が会心の一撃になっていたりする。
「もう、殆ど、攻撃が会心の一撃になってるわね!」
シャンティーも、嬉しそうだ。
「殆どの攻撃が、会心の一撃って、こんな弱い奴ら相手なら、誰でも出来るってモンだろ!
俺からしたら、止まってる相手に刀を振るってる感じだし。
これが、戦った事ある、京都でも有名だった新撰組の沖田総司や近藤勇だったら、1度たりとも会心の一撃なんて、出せやしねーよ!」
「対比に使われてる、新撰組が何か知らないけど、ちゃんと考えてるから大丈夫よ!
このヤリヤルが誇るA級ダンジョンは、20階層に行ってから、初めて本領発揮するんだから!」
てな感じで、A級ダンジョンの、20階層階段フロアーに到着する。
「じゃあ、ここからが本番だから覚悟はいい?」
シャンティーは、少しだけ真剣な顔をして、念押ししてくる。
「お前、今まで見てなかったのか?全然、余裕だっただろ?」
「まあ、いいから、いいから。黙って扉を開けなさいな!
目標は、このA級ダンジョンの攻略。期限は1週間!
出来るもんなら、やって頂戴!」
「お前、絶対、俺を舐めてるだろ! このダンジョンが何階層のダンジョンか知らんけど、今日中に攻略してやんよ!」
「このダンジョンは、因み30階層ね!」
まさかの30階層。やはりシャンティーは、塩太郎を滅茶苦茶 舐めきっている。
「お前、やっぱり、俺を舐めてるだろ!
今、20階層だから、後、たった10階層攻略すればいいだけじゃねーか!」
「ハイハイ。無駄口叩かないで、早く行きなさいな!
死にそうになったら、ムネオに回収して貰うから!」
「塩太郎! イザとなったら、儂が助けてやるから、大船に乗った気でおれ!」
何故か、ムネオも気合い十分だ。
後、たった10階層攻略するだけなのに。
「お前と、エリスは着いて来ないのかよ!」
「誰が行くもんですか。行っても同じ状況が続くだけだからつまんないし。
私とエリスは、ここでお茶して待ってるから、出来るだけ早く攻略してよね!」
シャンティーは、そう言うと、ゴザをひいて、とっととお茶の準備を始める。
「嘘だろ?」
「何、やってるの?とっと行きなさいよ!」
「ああ。行ってやんよ! そのお茶が冷めやまぬ内に、攻略してやんからな!」
「プッ! 何、自分で何フラグ立てちゃってるのよ!
それ、絶対に生きて帰れない奴だから!」
「フラグ? お前何言ってんだ? フグと間違えてんのか?
俺は、フグが有名な長州出身だから、少しばかりフグには五月蝿いぞ!」
「フラグの事を、フグって……確かに、食べたら死ぬから、一応、会話は成り立ってるわね……」
「お前、本当に何言ってんだ?」
幕末出身の塩太郎は知らなかった。
フグとフラグが、違う言葉である事を。
そして、戦いの前に、希望に満ちた約束をすると、必ず戦場から戻れないというお約束がある事を。
第二次世界大戦後の戦争映画や、日本の異世界ラノベを読んだ事ない幕末出身の塩太郎は、勿論、知る由がなかったのである。
まあ、フグを食べると死ぬ可能性があるので、意味的に、大体、フラグと合ってるのだけど。
「ハイハイ。分かったわ! 死なないように、行ってらっしゃいな!」
シャンティーは、お茶会の準備が忙しいのか、塩太郎の方も見ずに、ヒラヒラと腕を振る。
「お前、またしても。俺を舐めてんな!
絶対に、お茶が冷めやらぬ内に、攻略してやんからな!」
てな感じで、塩太郎は、お共にムネオを連れて、勢い良く、20階層の階段フロアーの扉を開けて、出て行ったのだった。
そして、お約束通り、5分後。
塩太郎は死体になって、ムネオにおんぶされ、シャンティー達が居る階段フロアーに戻って来たのだった。
「やっぱり、フラグって、本当に起きるのね……」
シャンティーは、感心しながら、塩太郎にエリスポーションを振り掛ける。
「てっ?! このダンジョン、一体、どうなってんだよ!」
塩太郎は、蘇生と同時に飛び上がる。
「確かに、お茶が冷めやまぬ内に帰ってこれたわね。だけれども、死亡してだけど!」
シャンティーは、開口一番、塩太郎に強烈な嫌味を言う。
「そんなの、知らなかったんだから仕方が無いだろ!」
「だから、私は言ったじゃない。1週間以内に攻略しなさいって!
アンタが勝手に、お茶が冷めやらない内に攻略するって、嘯いてたんじゃない。プッ!」
シャンティーは、わざとらしく、口を抑えて笑う。
「笑うな! まさか、あんなデッカイ蟻の大軍が、洪水のように押し寄せてくるとは思わねーだろ!
それを、斬るって、時間が追い付かねーんだよ!」
「アンタ、弱い相手なら、会心の一撃を幾らでも出せると言ってたじゃないの?」
「そんなの限界があるんだよ! 刀を使ってたらなんとかなるけど、木刀で、会心の一撃を発動できなきゃ、あのアリンコ、メッチャ硬いんだぞ!
いっぺんでも失敗したら、手が痺れて、その隙に、一気にアリンコに飲み込まれてしまうんだからな!」
なんか、塩太郎は、アリンコに飲み込まれて死んだ事を思いだしたのか、ブルブル震えている。
「アンタね、この課題を乗り越えなければ、本物の『犬の肉球』のアタッカーになったとは、言えないわよ!
初代『犬の肉球』の団長は、このダンジョンを、たった3時間で攻略したんだからね!」
「嘘だろ?」
「本当よ!」
シャンティーの言葉だけじゃ、信用出来ないので、一応、ムネオの顔も見てみる。
「本当じゃな」
塩太郎は、シャンティーとムネオの言葉に、滅茶苦茶 驚愕する。
しかし、50年後の未来。
エリスや塩太郎の8歳未満の子供や孫達3人だけで、この巨大アリンコダンジョンを余裕で攻略してしまう事となるのは、また、別のお話。
ーーー
ここまで読んでくれてありがとうございます。
面白かったら、お気に入りにいれてね!
9
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界の剣聖女子
みくもっち
ファンタジー
(時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。
その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。
ただし万能というわけではない。
心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。
また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。
異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。
時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。
バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。
テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー!
*素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる