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35. 何も失いたくない男
しおりを挟む塩太郎達、『犬の肉球』一行は、現在、ヤリヤル城塞都市を出て、西に歩いている。
シャンティーの話によると、塩太郎の特訓をするのに、うってつけの場所に向かってるらしい。
「俺の冒険者ブレスレット、金色で格好良いよな!
前に借りた銀色のブレスレットより、絶対に良い奴だろ!」
塩太郎は歩きながら、ヤリヤル冒険者ギルドで貰ったA級冒険者の金色のブレスレットを、何度も見ながらシャンティーに自慢する。
「アンタ、アホ?S級のプラチナブレスレットの方が、良い奴に決まってるじゃない!」
シャンティーが、何言ってんだコイツって顔をして、滅茶苦茶呆れてる。
塩太郎は、幕末出身なので知らなかったのだ。
プラチナが、金より希少な金属だという事を。
そして、金より高いという事を。
幕末出身の塩太郎は、毎度の事ながら、知らなかったのである。
「お前の方がアホだろ! 金が銀より良い訳ないだろ!」
「アンタの方が、アホだっての! 私が付けてる、このS級のブレスレットは、プラチナで、銀じゃないわよ!
輝きを見れば分かるでしょ!
銀は、もっと柔らかくて、色がくすんでるものでしょ!」
「えっ? そうなのか?」
「そうよ! よく見てみなさい。私のプラチナブレスレット、ピカピカでしょ!」
シャンティーは、自分の手首に付けてるプラチナブレスレットを、色んな角度に動かし光らしてみせる。
因みに、冒険者ブレスレットは、装着者の手首にフィットする仕組みになってたりする。
「まあ、言われてみれば、確かに銀じゃなさそうだが、俺のブレスレットの方が、絶対に格好良いな!」
「勝手に言ってなさい。というか目的地に到着よ!」
ヤリヤル城塞都市から、歩く事こと20分。
塩太郎達は、3畳ほどの大きさの祠に到着した。
「ここは、ヤリヤルが誇るA級ダンジョン!
ここで、塩太郎、アンタの特訓をやるわよ!」
「特訓たって、A級ダンジョンだろ?
俺が日本から飛ばされて、最初に行き着いたダンジョンは、確かSSSS未攻略ダンジョン。
SSSS未攻略ダンジョンよりレベルの低いダンジョンで、特訓なんか出来るのかよ?」
「大丈夫よ! 但し塩太郎は、この木刀を使う事!」
シャンティーは、自分の魔法の鞄の中から木刀を取り出す。
「お前、俺の実力を舐めてるな? 俺は木刀を持たせても強いぜ!
なにせ、練兵館の修行の基本は木刀だったからな!」
塩太郎は、長州に居た頃は柳生新陰流。
高杉に付いて江戸藩邸に居た頃は、斎藤弥九郎道場、所謂、江戸三大道場の1つ、神道無念流の練兵館に席を置いていた。
まあ、この頃の日本の剣術道場は、殆ど、木刀や竹刀で稽古してたので、塩太郎が木刀が苦手という事は、決して無かったのである。
「アンタ、木刀で魔物が斬れるの?」
シャンティーは、不思議な顔をして聞いてくる。
「斬れるぜ! だから、練兵館では手加減するのが大変だったんだ。
少し本気を出すと、木刀なのに相手を斬っちまうからな!」
そう。魔力総量が無駄に多い塩太郎は、既に日本でも無意識に闘気を扱っていたのだ。
なので、真剣に集中すると、木刀に闘気が纏って、斬れ無い筈の木刀が、鋭利な刀のような斬れ味になってしまう事が多々あったのである。
まあ、そんな事もあって、本来なら練兵館で一番強い男だったのだが、同郷の桂小五郎に塾頭の地位を譲っていたのは、また、別の話。
「 なら、闘気も使うのも無しよ!
技術だけで、魔物を倒しなさい!」
「技術だけって、この世界では、勝手に、刀が闘気を纏っちまうんだよ!」
「大丈夫! 私が魔法で、闘気に色を付けてあげるから、木刀に色が付かない状態で戦えばいいのよ!」
「オイオイ。魔物を斬らずに、叩き殺せと言ってんのか?
結構、叩いて殺すのって大変なんだぞ!
手も痺れるし!」
「叩いて殺せなんて言ってないわ! 必ず、斬って殺しなさい!」
シャンティーが、滅茶苦茶な事を言ってくる。
「お前、何言ってんだ?」
「アンタ、居合切りする時、手に斬った感触残ってる?
多分、豆腐を斬るような感覚の筈よ!」
「よく知ってんな! 確かに、その通りだな!」
「それを、普段から出来るようにするのよ!」
「そんなの無理だろ!」
塩太郎は、速攻で否定する。
それ程まで、居合切りで気持ち良く、スパン!と斬るのは難しい事なのだ。
「絶対に、出来るし。私は出来る人間を知っている。
その子は、僅か13歳の時に1人で、未攻略S級ダンジョンを、闘気も使わないで攻略したのよ!
S級以上の魔物は、闘気を使わないと倒せない筈なのに」
「嘘だろ……」
「本当よ。その子の攻撃は、全て、アンタの居合切りと同じ、会心の一撃なのよ!
会心の一撃ならば、闘気を使わなくても、S級の魔物を倒す事ができてしまうの」
「会心の一撃? まさか、俺の攻撃も、そいつの攻撃と同じように、全て、会心の一撃にしろって言ってんのか?」
「その通り!」
シャンティーは、フワフワ浮きながらも、真剣な顔をして大きく頷く。
「そんなの不可能だろ! 俺の居合切り、どんだけ集中力居ると思ってんだよ!」
やはり、どう考えても無理である。
塩太郎だって、今の居合切りをマスターするのに、血が滲むような努力をしたのである。
「それを実現しないと、剣神にはなれないわよ!
現在の剣神、剣姫ハラダ・ハナは、攻撃の80パーセントが、会心の一撃と言われてるのよ!」
「嘘だろ!」
塩太郎は、滅茶苦茶 驚愕する。
だって、居合切りをする時、塩太郎は滅茶苦茶 集中するのだ。
それを連続でするって、どう考えても無理がある。
「そして、さっき話した、僅か12歳でS級未攻略ダンジョンを攻略したのが、ガブリエルの右腕、剣鬼ブリトニー・ゴトウ・ロマンチック。
彼女の攻撃は、全て、攻撃が会心の一撃と言われてるわ!
しかも、素手での攻撃でも、全て会心の一撃を放つのよ!」
「そんなの化物過ぎるだろ!」
まさかの素手でも、会心の一撃。
「ブリトニー・ゴトウ・ロマンチックは、本当の化物で、ガブリエル以上のサイコ女よ!
会ったら、逃げる事をお勧めするわ!
間違っても、ブリトニーだけには勝負を挑まないように。
下手に刺激すると、ブリトニーの必殺技、チ〇コスライスで、男根を失う事になってしまうしね!」
「ガブリエルの右腕、怖すぎだろ……」
塩太郎的に、全ての攻撃が会心の一撃より、チ〇コスライスの方が、余っ程恐ろしい。
だって、攻撃中に男根を立たせて100枚にスライスするって、どうやってやるかも想像もつかないし……。
「兎に角、剣神を狙うなら、せめて剣姫ハラダ・ハナ並に、会心の一撃80パーセントを目指すのよ!」
シャンティーが、直近の目標を披露する。
「お前、何言ってんだ?
会心の一撃を100パーセント出来る奴が居るんなら、勿論、100パーセント目指すのが、筋ってもんだろ!」
塩太郎は、平然と言ってのける。
だって、最初から二番を狙うって、その時点で、何かを諦めてしまってるという事だから。
長州男児は、物凄く、諦めが悪いのである。
「アンタって男は、なんて、バカな男なの。まさか、ブリトニーに挑もうなんて……」
なんか、シャンティーが、壮大な勘違いしている。
「それは無い。だって俺、チ〇コ失いたく無いもん!」
塩太郎的に、剣の頂きを目指すより、自分のチ〇コの方が、とても大事だった。
というか、チ〇コスライスとかいう鬼畜技の使い手、剣鬼ブリトニー・ゴトウ・ロマンチックと戦いたい男など、この世に存在しないと思う。
ーーー
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