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34. 二つ名を欲し過ぎる男
しおりを挟む「エッ?もしかして、終わり?」
塩太郎は、土下座している土着の悪魔を見て、呆気に取られている。
だって、塩太郎的には昇級試験は、アピールの場になると思っていたのだ。
結構、ギャラリーいたし。
塩太郎は、幕末京都で、日陰者の人斬り家業を生業にして生きてきた。
そして、それなりのプロとしての誇りもあった。
京都で、人斬りランキングが有れば、自分が絶対にナンバー1だという自負もある。
しかしながら、人斬りで有名な奴らと言えば、一般人にまで顔と名前が知られてる奴ら。
人斬りが、名前と顔を知られていたら、暗殺などやりにくくくて仕方が無いというのに、そんな名前と顔をを晒してしまってる奴らの方が、世間一般の人達に、恐ろしい人斬りだと、名が知れ渡ってたりする。
塩太郎から言わせれば、二流の奴なのに……。
そんな事もあって、塩太郎は名声に飢えている。
人斬り以蔵とか、人斬り半次郎とかの二つ名が、滅茶苦茶欲しいのだ。
その為には、目立たなくてはならない。
まあ、戦わずして勝つ事が、一番凄いのかもしれないが、塩太郎は、巷の奴らに自分の強さを物凄くアピールしたいのだ。
折角、この世界で名門だという『犬の肉球』に入ったのだから。
もう、日陰者暮らしは嫌なのである。
しかしながら、
「やったわね!」
シャンティー的には、塩太郎が一度も戦わずしてA級冒険者になれた事に満足してるようだ。
「どこがだ?」
塩太郎的には、全く受け入れられない。
「塩太郎ちゃん! 格好良かったわよ!」
「塩太郎。やはり、お主。中々やるのう」
エリスとムネオも、塩太郎の気持ちと裏腹に褒めてくる。
「俺は、戦いたかったんだよ!」
「どんだけ、戦闘狂なのよ?」
「違うし! 俺は、平和主義者ぞ!」
「平和主義者が、戦いたいって?」
シャンティーが、何言ってんだコイツって顔をしている。
「俺は、格好良い二つ名が欲しいんだよ!」
「二つ名なんて、ろくなもんじゃないわよ!」
なんか、シャンティーが二つ名という言葉に、敏感に反応した。
「それは、お前の二つ名が腹黒だからだろ!」
「腹黒言うな!」
「俺は、腹黒でも羨ましいんだよ!
二つ名持ってる癖に、生意気なんだよ!」
「アンタ、どんだけ二つ名に飢えてんのよ?」
シャンティーが、物凄く残念な顔をして、塩太郎を見てくる。
相当、腹黒という二つ名が、お気に召さないのだろう。
「お前には、分かりゃーしねーよ! 京都の人斬り家業は、目立つのはご法度。名前が売れるのは、二流の証拠。
俺みたいな超一流の人斬りは、誰にも知られないもんなんだよ!」
「その反動で、今は、名前を売って有名になりたいと?」
「悪いかよ!」
「悪かないけど、アンタ、『犬の肉球』のアタッカーになったんだから、暫くしたら、嫌でも有名になるわよ。
一応、西の大陸では、ガブリエルの『犬の尻尾』より、『犬の肉球』の方が有名なんだから!」
「嘘だろ? あの滅茶苦茶な『犬の尻尾』よりかよ!」
塩太郎的に、どう考えても信じられない。
だって、シャンティーもエリスも塩太郎も、全くもってガブリエルに敵わなかったし。
「あのね。何度も言うけど、ガブリエルの『犬の尻尾』は、私達の『犬の肉球』のバッタもん。
結成したのだって、50年も後なのよ。
アンだって、『犬の尻尾』が、『犬の肉球』と名前が似てたから、入ったって言ってたじゃない!」
「だけれどよ。どう考えても、今は、『犬の尻尾』の方が、上だろうがよ!」
「だから、アンタは、これから特訓してガブリエルを越えるのよ!
分かってる、『犬の尻尾』のアンだって、この私。シャンティー様が鍛えて強くしたのよ!
アンタ、私が、どんだけ有能だと思ってんのよ!」
「それ、自分で言うか?」
「兎に角、とっとと、冒険者登録して修行するわよ!
最初の目標は、剣王になる事!
1週間、ヤリヤルで特訓して、剣王を倒しに行くんだから!」
シャンティーが、これからの予定を披露する。
「ん? 剣王とか剣神とか、倒せばなれるのかよ?」
塩太郎は、疑問に思い質問する。
「なれるわよ! というか、先ずは冒険者ブレスレットを貰いに行かなきゃね!
剣神、剣聖、剣帝、剣王は、冒険者の称号だから、冒険者ブレスレットを持たずに、称号者倒しても、剣王にも剣神にもなれないから!
称号は、冒険者ブレスレットに登録されるものなんだからね!」
「だったら、早く、俺の冒険者ブレスレット貰いに行こうぜ!」
塩太郎は、はやる気持ちを抑えきれない。
だって、称号は、塩太郎が喉から手が出るほど欲しい、二つ名的なモノだから。
「もう、1階カウンターに用意されてると思うから、取りに行くわよ!」
「おうよ!」
てな感じで、遂に、塩太郎は、冒険者の証である、自分の冒険者ブレスレットを手に入れたのであった。
目標である、二つ名。剣士最強の称号と言われている、剣神になる為に。
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