職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
33 / 166

33. 土着の悪魔

しおりを挟む
 
「それでは、C級試験始め!」

 D級冒険者試験に見事合格した塩田郎は、引き続き、C級試験を始める事となった。

 しかし、

「申し訳ございません! うちのゴン太の奴が、ビビってしまって門の外に出ようとしないんです!」

 またも、魔物の飼育員が門から出て来て、C級試験は続行不可能と伝えて来た。

「何なんだ?こんな事、前代未聞じゃねーのか?
 魔物が出て来なくて不戦勝って?」

「それほど、アイツが凄いんだろ。何せ、あの『犬の肉球』のアタッカーに選ばれる程の奴なんだからな」

 観戦に来ているヤリヤルの冒険者達が、ざわめいている。

「フフフフフ。塩田郎の実力は、こんなもんじゃないんだからね!
 なにせ、このシャンティー様が見付けてきた、超逸材なんだから!」

 シャンティーは、いつもより高く飛んで、これみよがしに胸を張る。
 まあ、サッカーボール程の大きさなので、全く胸は強調されないんだけど。

「シャンティー様。この状況だと、B級試験の魔物も、塩田郎さんに、恐れをなして出て来ないと思いますので、B級を飛ばして、A級試験を行ってみるのはどうでしょうか?」

 試験官が、シャンティーにお伺いを立てに来る。
 というか、試験官的にも、毎回、オシッコチビりながら、「試験は無理です!」と、報告してくる同僚が、見るに堪えないのだろう。

「そうね! それはいいかもしれないわね!
 B級試験を飛ばして、A級試験を受けるって、それも『犬の肉球』の伝説になるわ!」

 シャンティーは、試験官の提案に同意した。

「そんな感じで、塩田郎さん、どうでしょうか?」

 試験官は、塩太郎にも確認する。

「俺は、どうでもいいぜ!誰が相手でも叩き斬るだけだからな!」

 塩田郎は、余裕綽々。というか、骨がある奴と戦って、巷の奴らにアピールしたいと思ってる。
 いい加減、腹黒とか、妖精アイドルとか、格好良い二つ名が欲しいのだ。
 もう、日陰者の暗殺家業をやってる訳では無いし。

「という訳です! それではA級試験の魔物を、お願いします!」

 試験官が、魔物登場門に向けて、声をかける。

「承知しました!」

 門の奥から、魔物の飼育員と思われる人の声が聞こえてくる。

 そして、暫くすると、

 パキンッ!

「チョ! 止めろ! 悪魔が隷属の首輪を破壊したぞ!」

 ドガッ! バキッ!

「ぐあーー!」

 何やら、門の奥から不穏な声が聞こえてくる。

 そして、

「クワッハッハッハッハッ! 矮小な人間共!
 泣けー! 喚けー! そして、我に跪けーー!!」

 強烈なプレッシャーと共に、見た目、異界の悪魔アマイモンに似た、顔色悪い悪魔が、魔物の飼育員の頭を掴み門から現れた。

 そして、当然のように、塩田郎達以外の観客や審判員が、悪魔の強烈なプレッシャーにより跪いてしまっている。

「オイ? コイツが、アマイモンが言ってた悪い悪魔か?」

 塩田郎は、シャンティーが居る後ろを振り返り、確認する。

「違うわね! そいつはこの世界に元々居る、土着の悪魔よ!
 見た感じ、男爵クラスね。普通、A級試験には使われない筈なんだけど、なんで出てきちゃってるんだろう?」

 シャンティーは知らなかった。
 塩田郎のあまりの強さに恐れをなした飼育員達が、普段はヤリヤル冒険者ギルドの奥深くに監禁している悪魔を解き放ってしまった事を。

 そして、調子に乗って出て来た悪魔も知らなかった。

 まさか、門の外に、かつて自分を捕まえた『犬の肉球』の腹黒シャンティーとエリスが居る事を。

 2匹?とも、知らなかったのである。

「そうだよな……。 だって、蛤御門の大火事の中で見たアマイモンも、お付きの白い幼女も、顔色悪い男前も、この世の者とは思えないプレッシャー放ってたもんな!」

 塩田郎は、納得する。
 だって、今まで会った大物、ガブリエルやアンさんハラダ・ハナ。そして赤龍アリエッタに比べても、目の前の悪魔は、鼻糞程度の小物にしか見えなかったから。

 そして、門から勢い良く現れた悪魔も、『犬の肉球』の腹黒シャンティーとエリスが、目の前に居る事に気付く。

「コレ……ヤバイ奴じゃん……」

 土着の悪魔男爵は、冷や汗ダラダラ。
 この土着の悪魔男爵は、10年程前に、レベルの高い南の大陸から、西の大陸に渡って来て、悪の限りをつくしていた悪魔なのである。

 西の大陸、レベル低すぎ。余裕じゃん!と。

 そう。南の大陸では、土着の悪魔にとって、レベルが高過ぎたのだ。

 何故なら、現在の南の大陸の悪魔と言えば、ベルゼブブやアマイモンなどの異界の悪魔と、ガブリエルに仕えるGデーモン族が全盛。
 土着の悪魔は、同じ悪魔種からも、レベルの高い南の大陸の冒険者からも、滅茶苦茶舐められているのである。

 そして、西の大陸に渡って来た土着の悪魔男爵は、自分の縄張りのダンジョンを得る為に、西の大陸では珍しく、ダンジョンがたくさん有るガリム王国のヤリヤルにやって来たのだ。

 ヤリヤルが、伝説の勇者パーティー『犬の肉球』の本拠地だと知らずに。

 そんでもって、計画通りに、ヤリヤルのあるダンジョンを攻略して、ダンジョンマスターに見事収まる事に成功したのだが、直ぐに、冒険者ギルドの依頼を受けた腹黒シャンティーと、エリスが現れて、悪魔男爵は捕らえらてしまったのだ。

 まあ、悪魔男爵と言っても、所詮は土着の悪魔。
 S級冒険者であるシャンティーやエリスの敵じゃないのである。

 そんでもって、A級冒険者試験用にと、ヤリヤル冒険者ギルドに寄贈されたという過去があったのだ。

 因みに、普段は、悪魔男爵の部下だった2匹の悪魔が交代して、A級冒険者試験の魔物を受け持っているのだが、今回は、ヤバイ奴が試験を受けに来たという事で、飼育員が土着の悪魔男爵を解き放ってしまったという訳だ。

「じゃあ、殺っちゃっていいんだよな?」

 塩田郎は、闘気と殺気を、土着の悪魔に向かって解き放つ。

 土着の悪魔は、体中から汗が滝のように流れ落ちる。

 腹黒シャンティーとエリスもヤバイが、目の前の男は、それ以上にヤバイ。
 体から染みでるオーラというか殺気が、普通の人間のそれとは違うのだ。

 戦う前に、斬られてる感覚。
 これは、塩田郎の殺気をモロに受けて、相対した者しか、絶対に分からない感覚。

「まっ……参りました! 殺さないで下さいませ!」

 土着の悪魔が、速攻で土下座をして、命乞いするのは、当然の事だった。

 ーーー

 面白かったら、ブックマーク押してね!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...