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33. 土着の悪魔
しおりを挟む「それでは、C級試験始め!」
D級冒険者試験に見事合格した塩田郎は、引き続き、C級試験を始める事となった。
しかし、
「申し訳ございません! うちのゴン太の奴が、ビビってしまって門の外に出ようとしないんです!」
またも、魔物の飼育員が門から出て来て、C級試験は続行不可能と伝えて来た。
「何なんだ?こんな事、前代未聞じゃねーのか?
魔物が出て来なくて不戦勝って?」
「それほど、アイツが凄いんだろ。何せ、あの『犬の肉球』のアタッカーに選ばれる程の奴なんだからな」
観戦に来ているヤリヤルの冒険者達が、ざわめいている。
「フフフフフ。塩田郎の実力は、こんなもんじゃないんだからね!
なにせ、このシャンティー様が見付けてきた、超逸材なんだから!」
シャンティーは、いつもより高く飛んで、これみよがしに胸を張る。
まあ、サッカーボール程の大きさなので、全く胸は強調されないんだけど。
「シャンティー様。この状況だと、B級試験の魔物も、塩田郎さんに、恐れをなして出て来ないと思いますので、B級を飛ばして、A級試験を行ってみるのはどうでしょうか?」
試験官が、シャンティーにお伺いを立てに来る。
というか、試験官的にも、毎回、オシッコチビりながら、「試験は無理です!」と、報告してくる同僚が、見るに堪えないのだろう。
「そうね! それはいいかもしれないわね!
B級試験を飛ばして、A級試験を受けるって、それも『犬の肉球』の伝説になるわ!」
シャンティーは、試験官の提案に同意した。
「そんな感じで、塩田郎さん、どうでしょうか?」
試験官は、塩太郎にも確認する。
「俺は、どうでもいいぜ!誰が相手でも叩き斬るだけだからな!」
塩田郎は、余裕綽々。というか、骨がある奴と戦って、巷の奴らにアピールしたいと思ってる。
いい加減、腹黒とか、妖精アイドルとか、格好良い二つ名が欲しいのだ。
もう、日陰者の暗殺家業をやってる訳では無いし。
「という訳です! それではA級試験の魔物を、お願いします!」
試験官が、魔物登場門に向けて、声をかける。
「承知しました!」
門の奥から、魔物の飼育員と思われる人の声が聞こえてくる。
そして、暫くすると、
パキンッ!
「チョ! 止めろ! 悪魔が隷属の首輪を破壊したぞ!」
ドガッ! バキッ!
「ぐあーー!」
何やら、門の奥から不穏な声が聞こえてくる。
そして、
「クワッハッハッハッハッ! 矮小な人間共!
泣けー! 喚けー! そして、我に跪けーー!!」
強烈なプレッシャーと共に、見た目、異界の悪魔アマイモンに似た、顔色悪い悪魔が、魔物の飼育員の頭を掴み門から現れた。
そして、当然のように、塩田郎達以外の観客や審判員が、悪魔の強烈なプレッシャーにより跪いてしまっている。
「オイ? コイツが、アマイモンが言ってた悪い悪魔か?」
塩田郎は、シャンティーが居る後ろを振り返り、確認する。
「違うわね! そいつはこの世界に元々居る、土着の悪魔よ!
見た感じ、男爵クラスね。普通、A級試験には使われない筈なんだけど、なんで出てきちゃってるんだろう?」
シャンティーは知らなかった。
塩田郎のあまりの強さに恐れをなした飼育員達が、普段はヤリヤル冒険者ギルドの奥深くに監禁している悪魔を解き放ってしまった事を。
そして、調子に乗って出て来た悪魔も知らなかった。
まさか、門の外に、かつて自分を捕まえた『犬の肉球』の腹黒シャンティーとエリスが居る事を。
2匹?とも、知らなかったのである。
「そうだよな……。 だって、蛤御門の大火事の中で見たアマイモンも、お付きの白い幼女も、顔色悪い男前も、この世の者とは思えないプレッシャー放ってたもんな!」
塩田郎は、納得する。
だって、今まで会った大物、ガブリエルやアンさんハラダ・ハナ。そして赤龍アリエッタに比べても、目の前の悪魔は、鼻糞程度の小物にしか見えなかったから。
そして、門から勢い良く現れた悪魔も、『犬の肉球』の腹黒シャンティーとエリスが、目の前に居る事に気付く。
「コレ……ヤバイ奴じゃん……」
土着の悪魔男爵は、冷や汗ダラダラ。
この土着の悪魔男爵は、10年程前に、レベルの高い南の大陸から、西の大陸に渡って来て、悪の限りをつくしていた悪魔なのである。
西の大陸、レベル低すぎ。余裕じゃん!と。
そう。南の大陸では、土着の悪魔にとって、レベルが高過ぎたのだ。
何故なら、現在の南の大陸の悪魔と言えば、ベルゼブブやアマイモンなどの異界の悪魔と、ガブリエルに仕えるGデーモン族が全盛。
土着の悪魔は、同じ悪魔種からも、レベルの高い南の大陸の冒険者からも、滅茶苦茶舐められているのである。
そして、西の大陸に渡って来た土着の悪魔男爵は、自分の縄張りのダンジョンを得る為に、西の大陸では珍しく、ダンジョンがたくさん有るガリム王国のヤリヤルにやって来たのだ。
ヤリヤルが、伝説の勇者パーティー『犬の肉球』の本拠地だと知らずに。
そんでもって、計画通りに、ヤリヤルのあるダンジョンを攻略して、ダンジョンマスターに見事収まる事に成功したのだが、直ぐに、冒険者ギルドの依頼を受けた腹黒シャンティーと、エリスが現れて、悪魔男爵は捕らえらてしまったのだ。
まあ、悪魔男爵と言っても、所詮は土着の悪魔。
S級冒険者であるシャンティーやエリスの敵じゃないのである。
そんでもって、A級冒険者試験用にと、ヤリヤル冒険者ギルドに寄贈されたという過去があったのだ。
因みに、普段は、悪魔男爵の部下だった2匹の悪魔が交代して、A級冒険者試験の魔物を受け持っているのだが、今回は、ヤバイ奴が試験を受けに来たという事で、飼育員が土着の悪魔男爵を解き放ってしまったという訳だ。
「じゃあ、殺っちゃっていいんだよな?」
塩田郎は、闘気と殺気を、土着の悪魔に向かって解き放つ。
土着の悪魔は、体中から汗が滝のように流れ落ちる。
腹黒シャンティーとエリスもヤバイが、目の前の男は、それ以上にヤバイ。
体から染みでるオーラというか殺気が、普通の人間のそれとは違うのだ。
戦う前に、斬られてる感覚。
これは、塩田郎の殺気をモロに受けて、相対した者しか、絶対に分からない感覚。
「まっ……参りました! 殺さないで下さいませ!」
土着の悪魔が、速攻で土下座をして、命乞いするのは、当然の事だった。
ーーー
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