職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
30 / 166

30. 剣神を目指す男

しおりを挟む
 
 ヤリヤル城塞都市は、ハマオカ王国と接する、ガリム王国北部にある城塞都市。
 付近には、西の大陸には珍しいダンジョンが幾つか存在し、他の西の大陸の都市より冒険者が多いのが特徴。
 東には大海が広がっており、新鮮で美味しい魚介類が食べられる事で、有名な街でもある。

 そして、そんな魚介類よりも有名なのが、『犬の肉球』。

 勇者パーティーの主軸を担う『犬の肉球』が、ヤリヤル城塞都市をホームにしている事を、ヤリヤルに住む人々の誇りであったりする。

 まあ、現在は、活動停止中なんだけど。

 そして、そんなヤリヤル城塞都市で大人気の『犬の肉球』のメンバーが、ハマオカ王国の軍団を壊滅させたのだ。

 ヤリヤル城塞都市に住む人々は、もう、『犬の肉球』が復活するのかと、お祭り騒ぎ。

 ハマオカ王国との戦争に参加してたガリム王国の兵士1万人と共に、塩田郎達が、『犬の肉球』のホームであるヤリヤル城塞都市に凱旋すると、大歓声出迎えられる。

「エリスちゃーん!」

「シャンティー様ーー!」

「オイ! どうやら、ムネオン様が、犬の肉球に参加するらしいぞ!」

「嘘だろ! それ大ニュースじゃね?!」

「ムネオン様、最近、息子に王位を譲って暇そうだったから、丁度、良かったんじゃねーのか?」

「ウォォォォーー!ムネオン様ーー!最高ーー!」

「勇者の血筋で、無駄に丈夫なムネオン様が入ったら、安泰じゃーー!」

「ムネオン様ぁーー! エリスちゃんを、守って上げて!」

「遂に、犬の肉球の復活だーー!!」

 なんか、エリスとシャンティーとムネオの人気が、やたらと高い。

「けっ! 何でい! 俺が、ハマオカ軍を、一人で倒したっちゅーの!」

 塩田郎は、ヤリヤル城塞都市に戻ってから、とてもいじけている。
 塩田郎的には、自分が一番、ヤリヤルの人々に賞賛されると思っていたのだ。

 今回は、初めて、表立って戦闘に参加した。
 しかも、敵を殆ど一人で倒したのである。
 塩田郎は、とても賞賛されたかったのだ。

 なにせ、塩田郎は、幕末京都時代も裏方の人間で、目立った事が一度もないのである。

 たまに目立ちたい。それなのに……。

「塩田郎! そうめげるでない。ガリム王国の兵士達は、みんなお主の活躍を見とるでのう!
 ワシも、お主の活躍を、しかと見届けた。近々、ガリム王国から勲章も贈られる筈じゃぞ!」

 結構、筋肉隆々でガタイが良い、ムネオが塩田郎の頭をガシガシしてくる。

「本当かよ?」

「ガッハッハッハッ! 本当じゃ! なにせ、ガリム王国の先王である、このムネオンが言っておるのだからのう!」

 ムネオは、結構、豪快な人物であるようだ。
 シャンティーに対してだけは、何か弱みを握られてるのか、低姿勢だけど。

「ムネオ! 兵士を早くガレリオンに帰らせなさいな!
 1万の兵士を連れて、冒険者ギルド会館に入れないんだからね!」

 シャンティーが、ムネオに強めに命令する。

「承知しました! シャンティー殿!」

 ムネオは、突然、低姿勢になり、急いで兵達に指示を出す。

「変わり身、早っ! ムネオさん! どんだけシャンティーに弱味を握られんだよ!」

「ムネオの事は、赤ちゃんの時から知ってるのよ!
 ムネオの弱味なんか、100や200は握ってるわよ!」

 シャンティーは、エッヘンと胸を張る。

「そこは、否定するとこじゃねーのか……」

「バカね! 私がガリム王国を裏で牛耳ってるのは、ガリム王国では周知の事実よ!
 今更、わざわざ、国民に隠す必要なんかないわ!」

「だからって、先王を顎で使うって……」

「アンタね、黒龍を東の大陸に追いやった『犬の肉球』は、西の大陸では英雄なのよ!
 ハッキリ言って、ガリム王国の王様より地位は高いのよ!」

「だけれども、ムネオさんも、『犬の肉球』のメンバーかなんかの末裔なんだろ?」

「アンタね。オリジナルメンバーが、一番偉いに決まってるじゃない!
 しかも、ガリム王国には、抑止力として、ヤリヤル城塞都市に居て上げてるんだから、感謝して貰いたい程だわ!」

「抑止力って、お前、何もしてないだろ!」

「『静寂の森』の姫のエリスが居るだけでも、抑止力になるのよ!」

 シャンティーは、完全に他力本願なのに偉そうだ。

「まあ、ガリム王国の中では、『犬の肉球』は、抑止力で、尊敬の対象って、事で合ってるんだよな?」

「そう! その『犬の肉球』のアタッカーで、エースがアンタ!
 うちら『犬の肉球』が、今迄、喉から手が出る程、欲しかった人材よ!
 どんだけ、南の大陸のハラダ家の侍を引き抜きたかったか……。
 あの一族は、やたらと剣神、剣聖を排出するからね。
『犬の肉球』のアタッカーは、最低でも剣聖レベル。剣帝では駄目なのよ!」

「だったら、俺が剣神になってやんよ!」

 塩田郎は、自信満々にドン!と胸を叩く。

「無理ね。今の剣神は、剣姫ハラダ・ハナ。剣の神の愛されし姫。
 ここ数百年で、最高の剣神なのよ!
 しかも、何百年ぶりかに、ガブリエルが、新たに『犬の尻尾』に加入させた逸材。
 剣姫ハラダ・ハナが、ハラダ家から産まれたのに合わせて、塩田郎を異世界から転移させたと言っても過言では無いんだからね!」

「それがどうしたよ。俺は、魑魅魍魎が蔓延る京都で、その人有りと言われた伝説の人斬りだぜ?
 修羅場をくぐってきた場数が違うちゅーの!
 どんな奴でも、必ず叩き斬ってやんよ!」

 塩田郎は、剣呑目付きでシャンティーに言い切った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

処理中です...