職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
29 / 166

29. 野球男

しおりを挟む
 
「てやんでぇー! もうやけっぱちだ!!」

 塩田郎は、蛤御門の変での大火事の炎をイメージして、闘気を練り上げる。

 まあ、ついさっき、隕石で焼かれた時のイメージでも良かったのだが、やはり、塩田郎的には、蛤御門の変での大火事の方が、強烈にイメージとして、頭の中に残っているのだ。

 なにせ、長州の仲間もたくさん死んでるし、初めて死んだ時の炎である。
 記憶に全く残ってない方が、嘘である。

 ズドドドトドドドドーー!!

 隕石は、熱波と共に落ちてくる。

 塩田郎は、鞘から抜いていた刀を、再び鞘に戻し、居合の構えをして精神統一する。

 そして、隕石に合わせて一閃、

 カッキ~ン!!

 斬るというより、叩く感じ。

 ついでだから、ハマオカ軍に向けて、思いっきり叩き返してやった。

「どうじゃーー! 斬らずに叩き返してやったぜ!
 そして、自分が発する炎は、全然、熱くなかったぜ!」

 塩田郎が打った、球じゃなくて、隕石は、ハマオカ軍の陣地に向けて、ライナーで飛んで行く。

 そして、

  ドッカーン!!

 塩田郎が打った隕石が、敵陣の最後尾らへんで、何かに当たり、そして、真上に花火のように打ち上がった。

「なんか、よく分からんが、打ち上がったぜ! 玉屋ー!!」

 なんか、思いのほか上手くいって、塩田郎のテンションも上がる。

「やっぱり、アンタ、想像の斜め上を行くわね!
 というか、真っ直ぐライナーで飛んでいって、それから、真上に飛んだから、直角?」

 シャンティーは、感心する。
 というか、斜め上か、直角か、どうでも良い事で悩んでいる。

「オイ! 腹黒! これで良かったんだろ!」

 塩田郎は、どうだと言わんばかりに胸を張る。

「氷の闘気で相殺するのが正解だったけど、灼熱の隕石に、更に炎を足して獄炎にし、尚且つ、打ち返す事によって、スピードも3倍増し!
 しかも、指揮官のドラゴニュートに、当てちゃってんだから、二重丸を通り越して、花丸よ!!
 流石は、ガブリエルがわざわざ、異世界から呼び出した、勇者候補と言った所ね!」

「えっ!? あの隕石、ドラゴニュートに当たったのか?」

「ええ。当たってるわよ! あそこで、目を回して伸びてるわ!」

 シャンティーが、上半身丸焦げになった、ドラゴニュートを指差す。

「死んでないのかよ?」

「ドラゴニュートは、頑丈だからね。そのうち再生するんじゃない?」

「蜥蜴の尻尾かよ?」

「あんた、それ、ドラゴニュートに言ったら殺されるわよ!」

 シャンティーは、塩田郎に釘を刺す。
 まあ、塩田郎の場合は、赤龍アリエッタにも言ってるので、今更なんだけど。

「で? どうすんだ?」

「もうこれで終わりよ!」

「こんだけコテンパンにやられたら、もう暫くは、ハマオカ王国も、戦争なんてしようと思わないでしょ!」

「あの、黒焦げになってる、ドラゴニュートはどうするんだよ?」

「どうするもなにも、ほっとくわよ!
 下手に何かして、裏で糸を引いてる黒龍王国が出て来たら、事だしね!
 まあ、ドラゴニュートさえ、人質に取ったり、殺さなければ、黒龍王国は表に出てこないとは思うけど」

「そんなんでいいのかよ! 相手は、侵略者だぞ!」

 塩田郎は、納得いかない。
 何故なら、黒龍王国は、黒船に被るから。
 東の海から来る奴らは、全員、朝敵。
 少しでも隙を見せれば、不平等条約結ばされるかもしれないし。

「落とし所が大事なのよ! ガリム王国は、侵略してきたハマオカ王国と戦っただけ。
 相手方に、黒龍王国の人間。ましては、貴族のドラゴニュートなど、居なかった。それで、お終いよ!」

「だけど、また、攻めて来たら……」

「それは、もう、無いわね! 今回の事で、黒龍王国も、ガリム王国の事を徹底的に調べるでしょ!
 そして、塩田郎、アンタの存在に行き着くわ!」

 シャンティーは、ニヤリと笑い、塩田郎を見やる。

「えっ? 俺?!」

「そうよ! アンタは、南の大陸を牛耳る『漆黒の森』の女王、ガブリエル・ゴトウ・ツゥペシュが、異界の悪魔ベルゼブブ討伐の為に、わざわざ異世界から呼び寄せた勇者候補。
 その勇者候補のアンタが居る『犬の肉球』、即ち、ガリム王国に、黒龍王国は、もう手を出す事ができない」

「どういう事だ?」

 塩田郎は、全く、理解が追い付く事が出来ない。

「黒龍王国も、南の大陸には手が出せないと言ってるの!」

「何故に?」

 塩田郎は、頭を捻る。

「南の大陸には、冒険者ギルドの本部があるムササビ自治国家があるの!
 そのムササビ自治国家と冒険者ギルドを運営するのは、ギルドランキング10位以内に入ってる上位ギルド!
 その上位ギルドの半分以上が、現在、ガブリエルが団長をする『犬の尻尾』の傘下ギルドな訳!
 ガブリエルがその気になれば、『漆黒の森』だけじゃなく、ムササビ自治国家と、冒険者ギルド全体にまで敵に回すという事になるのよ!」

 シャンティーが、端折って説明する。

「ガブリエルって、そんなに権力有るのかよ!」

「そうよ。これも全て、ガブリエルのマスター。ゴトウ・サイトの仇を取る為。
 異界の悪魔ベルゼブブを、殺す為。
 350年間、ひたすら戦力を整えてるの。
 そして、現在の戦力は、例え世界最強の黒龍が相手だとしても、『漆黒の森』の方が、必ず勝つだろう言われてるのよ!」

「そんなガブリエルとタメを張る、ベルゼブブって、一体、どんな奴なんだよ!」

 塩田郎は、とても気になり質問する。
 だって、ベルゼブブは、そんなヤバ過ぎるほど強いガブリエルと、タメを張るほど強いという事だし。

「アンタと同じ世界から来た悪魔よ!」

「嘘だろ?」

 シャンティーの口から、まさかの答えが返ってきた。
 妖怪の類なら、龍とか、九尾の狐とか、一つ目小僧とかなら知ってるけど、蝿の悪魔ベルゼブブなんて、日本で聞いた事ない。

「アンタ、サタンとか、聞いた事ない?」

「伴天連の悪魔だろ? それくらい無学な俺でも知ってるぜ!」

 流石の塩太郎でも、サタンの名前は知っている。確か、伴天連の神様の敵だと認識している。

「ベルゼブブは、アンタが居た世界で、サタンの次に、位が高い悪魔。
 その悪魔が、この世界に来て、力を付けてるの!そう、アンタみたいにね!」

 シャンティーは、手の平に、風の渦巻きを作ってみせて、ニヤリと笑う。

「確かに、俺、この世界に来てから、闘気とかも覚えて、日本に居た時より爆発的に強くなったな……」

「そう、そういう事よ! この世界は魔力で溢れているの!
 そして、種族を問わず、この世界に来た異世界人は、魔力を帯びて強くなる。
 元々、魔力が使える者達にとって、この世界は魔力のリミッターが外れた世界。
 まさに、異界の悪魔にとって、天国なのよ!」

「そんな奴らを、ガブリエルは倒せるのかよ!」

「その為の戦力増強、異世界から、アンタを召喚したのよ!」

「というか、俺じゃなくて、赤龍アリエッタとかに、助けて貰えばいいんじゃないのか?
 赤龍アリエッタ、どう考えても強いだろ!」

「基本、アリエッタは中立。アンタ達が居た世界と、この世界は、兄弟世界みたいなものらしいから、アリエッタは干渉しないの。
 ただ、黒龍だけは別! アイツは、違う異世界からやって来た、イレギュラー。
 黒龍が関わる時だけ、アリエッタは動くの!」

「なんだそれ?」

「兎に角、この世界は、そういう世界なのよ!」

「なんかよく分からんが、黒龍王国は、もう攻めて来ないって事でいいんだよな?」

「そうよ! この話は、もうお終い! とっとと、ヤリヤル城塞都市に戻るわよ!
 アンタの冒険者登録も まだだし、『犬の肉球』の再登録もしなくちゃいけないんだから!」

 シャンティーは、塩田郎に、『犬の肉球』のアタッカーなら、隕石など簡単に弾き飛ばさければならないとか、なんとか講釈していたが、まだ、塩田郎は、『犬の肉球』どころか、冒険者にもなっていなかったようだ。

 ーーー

 面白かったら、ブックマーク登録してね!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...