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28. 丸焦げの男
しおりを挟む「刀で、どうやって、隕石を斬るんだよ……」
「闘気の使い方次第よ! アンタ、才能有るんだから、ちょっと練習すれば、直ぐにできるようになるわよ!」
塩田郎の独り言に反応して、シャンティーが勝手に答える。
「ちょっと練習って……」
塩田郎は、絶句する。
ちょっと練習しただけで、隕石など斬れる筈ないし。
「アンタね! 普通の人間が、闘気覚えるの何十年掛かると思ってんのよ!
アンタなんて、この世界に来て初日で覚えたんでしょ!
でなければ、SSSS未攻略ダンジョンでは、1日も生き残れないんだから!
そんな、アンタなら、隕石を跳ね返す闘気のコツを覚えるのなんて、直ぐよ!
アッ! また、来たわよ! 塩田郎! アンタ試しに叩き斬りなさいな!」
シャンティーは、上空に新たな魔法陣が発生してるのに気付き、塩田郎に命令する。
「えっ! ちょっと嘘だろ!」
「大丈夫だって!」
シャンティーは、勝手に、塩田郎に隕石を押し付ける。
というか、どんだけ塩田郎の才能を信じて疑わないのだ。
「俺が失敗したら、お前らも死ぬんだぞ!」
「私達は、大丈夫だって! ムネオに防御して貰うから!」
「お前! 滅茶苦茶じゃねーか!」
やはり、腹黒シャンティーは打算的。きっちり自分だけは助かる算段をつけている。
「しょうが無いわね! 頭だけエンチャンターで防御力上げといてあげるから、完全には体は消滅しない筈よ!」
「頭だけ残ってても、普通死ぬだろ!」
「エリスポーションなら、頭残ってたら、体も再生するから大丈夫!」
「嘘だろ!?」
「本当よ! ほら来たわよ!」
シャンティーは、そう言うと、サッサと、ムネオの盾の後ろに隠れる。
「チキショー!もうやけっぱちだーー!」
塩田郎は、隕石に向かって刀を振るう。
隕石を叩き斬れる事を、神や仏に祈りながら。
「南無三!」
カキーーン!!
しかし、これは成功なのか?隕石は斬れずに、弾き返す事には成功した。
まあ、隕石が発する熱に全身火傷を通り越して、墨になってしまったけど。
「痛てぇーー!」
「やるわね!」
シャンティーが、何故か感心している。
「やるわね! じゃねーよ! 体が真っ黒焦げじゃねーか!
これ、ちょっとでも触ったら、粉々に崩れ落ちちまうぞ!」
「頭は無傷だから、大丈夫よ!」
「そういう問題じゃねーよ!!」
シャンティーは、何事でもないように、エリスポーションを振り掛けた。
「て、本当に治っちまった!」
「本当なら、体も残らない筈だったんだけど、アンタが着てる服、凄いわね。
服は、全くの無傷よ!」
なんか、よく分からんが、今度は、塩田郎が着てる着物に感心している。
「無傷でも、熱は通るんだよ!」
「というか、もしかして、その服、アマイモンから貰ったの?」
「ああ。まあな。なんでも洗わなくても臭くならない服らしい」
「それ、数年前に、少しの期間だけドワーフ王国直営店で、売られてたアラクネの服に間違いないわね……。
成程、アマイモンが噛んでたか。
私もオーダーで頼んでたけど、製作者が行方不明になったとかで、キャンセルされちゃったのよね!
多分、売ったら3億マーブルは下らないわね」
なんか、シャンティーの口から、トンデモナイ金額が発せられた。
「3億マーブルだと! てか、凄そうだけど、価値が全く分からねーよ!」
「普通の人間が、贅沢しなければ、一生働かなくても良いくらいの金額ね」
「嘘だろ!」
塩田郎は、目ん玉飛び出るくらい驚く。
「それ程、アラクネの服は、プレミアが付いてんのよ!アッ! また来るわよ!」
シャンティーは、塩田郎に報告する。
「て! また、上空に魔法陣が展開してやがる!」
「それじゃあ、もう一度よ!」
「もう一度って、無理だろ!ていうか、俺が黒焦げになるの、見てただろうが!」
「無理って、弾き返せたじゃない? 普通の人間は隕石を弾き返す事できないから!」
シャンティーは、事も無げに言う。
「だけれども、丸焦げじゃねーかよ!」
「頭は、無傷だったでしょ!」
「だけど、結果は同じだよ! 俺、相当集中して、本気で斬ったんだぞ!
これ以上の本気なんて出せる筈ねーよ!」
「しょうが無いわね。ヒント! 闘気に、違う属性の闘気を混ぜるのよ!
アンタ、隕石は弾き返せたわよね!
それは、力の闘気を使ったから弾き返せたの。
なら、隕石の熱を弾き返すには、どうすればいいか?考えなさい!」
「考えろって! どうすんだ!? 力の闘気も、考えて出してないんだぞ!」
「ただったら、考えずに出来るまで、頑張りなさい!」
「お前、アホだろ! 隕石の熱って、滅茶苦茶痛いんだぞ!」
「ハイハイ! じゃあ、頑張って!」
シャンティーは無責任に、とっとと、ムネオの盾の後ろに隠れる。
「オイ! 嘘?! てっ、どうすんだよ!
熱を冷ますには、やっぱり水? 水の闘気を使うのか?
ていうか、水ぐらいで、あの灼熱の隕石を冷ませるのか?絶対、無理だろ!
そしたら、水より冷たいのって、雪?
雪でも無理だよな……。
だったら、氷?
チキショー! 氷なんて高級品を、闘気でなんて、出せる筈ねーよー!」
シャンティーのヒントの答えは、塩田郎の想像通り、氷の闘気を使うで正解であった。
だがしかし、冷凍庫が無い時代の幕末出身の塩田郎には、氷は高級品過ぎて、全くイメージする事ができなかったのだ。
まあ、本当はイメージ出来るのだが、京都の夏に売り出されてた かき氷が、滅茶苦茶な値段すぎて、塩田郎には、氷イコールお金にしかイメージ出来なかったのである。
ーーー
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