職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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19. 腹黒な女

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「ガブリエル、ついに来たわね!」

 シャンティーは、強烈なプレッシャーを発して睨みつけてくるガブリエルに負けじと、睨み返そうとしてるが、如何せん、徐々にプレッシャーに負けて、地面に押し潰されてしまう。

「糞っ! 何て圧を発してやがる!」

 流石の塩太郎も、威圧だけで、片膝付けされられる経験はない。
 エリスなんて、地面にチューしてるし。

「姫ちゃん! 怒りを抑えて! ほら、塩太郎君を見付けたんだから!」

 ガブリエルのプレッシャーを受けても、普通に立ってるアンが、塩太郎の元にやってきて、両肩に手を置いてくる。

「嘘! ついに見つけたの!」

 一瞬、ガブリエルが発していたプレッシャーが緩む。

「そうだよ! 姫ちゃんの攻撃で、死にそうになってたけど」

 アンは、分かって言ってるのか、ガブリエルに毒を吐いている。

「それは、エリスを見付けて、カァー!となって、つい……」

 塩太郎は、唖然とする。
「つい」で、塩太郎は殺されそうになったのだ。

 というか、「つい」で、隕石落とすとか?もう神の御業だろ……。
 この世界の最強、なんぼのもんじゃいとか思ってたけど、隕石落とす時点で、塩太郎の白旗決定である。
 流石の塩太郎でも、隕石は斬れないし。

 それにしても、猛スピードで落ちてきてた隕石を、背中の大盾で難無く弾き返していたアンも、想像以上の化け物なんだけど。

「もう、落ち着いた? そしたら、塩太郎君を連れて帰ろうね!」

 アンは、ガブリエルを諭し、そのまま事を収め、帰ろうとする。

「でも、エリスを……」

「エリスさんはいいじゃない! 塩太郎君を、やっと見つけれたんだから!」

「エリスは、マスターの仇……」

「サイト君は、姫ちゃんが、エリスさんを殺す事なんか、望んでないと思うよ!
 それに、今、ここで、エリスさんを殺したら、塩太郎君に嫌われちゃうよ!」

「それは、困る……」

 なんかよく分からんが、ガブリエルは、塩太郎に嫌われたくないらしい。

「じゃあ、そういう事で! エリスさん、シャンティーさん。塩太郎君を連れて帰るから!」

 アンは、何とか、ガブリエルに、エリス達を殺させないように話を纏めた。

「ちょっと待った! 塩太郎は、『犬の肉球』に加入すると、決定してんのよ!」

 ここにきて、地面を這いつくばってるシャンティーが、待ったをかける。

「何て?」

 ガブリエルの纏っている、禍々しく赤黒い魔力が、爆発的に大きくなる。
 それと同時に、塩太郎達は、地面にめり込む。

 ヤベェ、ヤベェ、ヤベェ。あの女、ヤバ過ぎる。
 殺気を放つだけで、人を地面にめり込ませるなんて、人が成せる技じゃねぇ!

 こりゃあ、撤退だろ!
 てか、地面にめり込んでたら、撤退もできねーか……。

「絶対に、塩太郎は渡さない……」

 シャンティーは、地面に埋もれながらも、必死に這い上がり、ガブリエルを睨みつけながら言い放つ。

 何、言ってやがるんだ……あの女……。
 塩太郎は、絶対的な強者のガブリエルに歯向かうシャンティーが理解出来ない。

「殺す!」

「ちょっと! ちょっと! ちょっと! 待って! 姫ちゃん、一旦落ち着こう!
 シャンティーさんも、ここは引いて下さいよ!」

 アンは、ガブリエルとシャンティーの間に割って入り、ガブリエルがシャンティーに向けている物凄い圧を、背負ってた大盾でガードする。

「絶対に、引かない! 塩太郎は『犬の肉球』が、最初に見付けたんだ!
 塩太郎も、『犬の肉球』に入ってくれるって、言ったんだ!
 もう、何も出来ないで、見てるだけなんて、嫌なのよ!」

 シャンティーは、柄にも無く、涙ながらに訴える。

「それで、何?エリスと貴方のせいで、マスターが死んだ事実は変わらない。
 貴方達は、私からマスターを奪った責任がある。
 あの時、貴女達が、マスターに助けを求めなければ、
 ベルゼブブのダンジョンに足を踏み入れなければ、
 そもそも、エリスとマスターが出会わなければ、マスターは死なずに済んだ!」

 ガブリエルの高ぶる感情と呼応するように魔力が暴走し、大気が荒れ、天が赤黒く染まり、あちこちに雷が落ち、この世の終わりとも思える地獄絵図とかす。

 そんな状況になっても、シャンティーは、一歩も引かない。

「だから、罪滅ぼししたいのよ! ベルゼブブ討伐レイドに参加したいのよ!
『犬の肉球』は、ベルゼブブ討伐レイドに参加できる、ギルドランキングTOP10は愚か、活動さえも出来ていない……。
 だから今日も、ベルゼブブを倒すのに、少しでも役に立とうと、ギルドランキングTOP10に入ってる『三日月旅団』を鍛えてたの!
 そんな時に、塩太郎を見つけたの!
 そりゃあ、夢だって見るわよ!
 塩太郎は、私からみても才能に溢れている。
 私が鍛えたら、そこに居る 剣姫ハラダ・ハナにも引けを取らない侍に育てられる!
 だから、お願い。私に佐藤 塩太郎を預けて頂戴!」

 シャンティーは、涙ながらにガブリエルに訴える。

「腹黒の二つ名を持つ、あの、シャンティーさんが、本気で泣いてる……」

 なんか、感動的な場面の気がしてたが、アンの一言で、ぶち壊す。
 見た目常識人なのに、もしかして天然なのか?

「塩太郎は、ハナ同様に、私が立派に育てる!」

 ガブリエルは、心を揺さぶるシャンティーの話を聞いても、全く動じない。

「アンタじゃ駄目って言ってんの! 天才には、人を教えられない!
 まあ、私も天才なんだけど、私の場合は、教えるのも天才的に上手いから!」

 なんかよく分からないが、シャンティーは、突然、ガブリエルをディスりだした。
 多分、これが、腹黒と言われる所以だろう。

「やっぱり、殺す!」

「だから、駄目だから! お互い引こう!」

 アンは、一人でてんやわんや。
 というか、ガブリエルの圧で、アンはジリジリ後ろに押されている。
 多分、アンが、ガブリエルの圧で弾き飛ばされるのは時間の問題だろう。

 とか思ってると、

「ここは、塩太郎に、『犬の肉球』と『犬の尻尾』、どっちに行きたいか聞いた方がいいんじゃないかしら?
 分かってんでしょうね! 塩太郎!」

 アンが後退してる事に気付き、形勢が不利だと悟ったのか、シャンティーが作戦を変えたようだ。

「この場面で、俺に振るか? というか、お前らの過去の事情とか、全く分かってないんだけど……そんな俺が、決めても良い事なのか?」

 塩太郎は、突然 振られて日和ってしまう。

「アンタは、私達の過去の事情なんて、全く考えなくていいのよ!
 アンタは、何で今、生きてるのかを、よ~く考えなさいな。
 そう。アンタは、誰に助けて貰って、誰に生き返らせて貰ったのかを。よ~く思い出すのよ」

 なんか、ここにきて、塩太郎は、シャンティーが腹黒と言われる所以が、よ~く分かった気がした。

 ーーー

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