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18. 女剣士
しおりを挟む「アンさん! 私じゃ姫様を止めるのは無理です!
早く、エリスさん達を逃がして下さい!」
空から落ちてきた、どう見ても日本人に見える、15歳くらいの黒髪ポニーテールの女剣士が、焦りながら、これまた15歳くらいに見える、メイド服を着た黒髪の少女に言う。
「エリスさん! シャンティーさん! そういう事です!
ペガちゃんに乗って、早く逃げて下さい!」
黒髪メイド服も、焦りながらエリスとシャンティーに指示を出す。
「ペガちゃんに乗れないから、今、ここに居るんじゃない!」
シャンティーが、逆ギレ気味に、黒髪メイド服に言う。
「男の塩太郎君が居るからですよね? それなら置いていって下さい!
しっかり、『犬の尻尾』が面倒みますから!」
何故だか知らないが、黒髪メイド服は、塩太郎の事を知ってるようだ。
「嫌に決まってんでしょ! 私達、『犬の肉球』が、ダンジョンで死んでた塩太郎を生き返させたのよ!
本来なら、塩太郎は、ダンジョンに飲み込まれて、この世に居ない筈だったんだからね!」
シャンティーが、黒髪メイド服に文句を言う。
「ていうか、何で、お前は、俺の名前を知ってるんだ?」
自分の名前を知ってた事が気になってた塩太郎が、話に割って入る。
「お前じゃないです! 僕には、れっきとしたアンって、名前があるんですから、アンさんって呼んで下さい!」
「何で、俺より歳下のお前の事を、アンさんと呼ばなきゃならねーんだ?
それから、さっきから気になってたんだが、歳下のお前が、塩太郎君って呼ぶんじゃねーやい!」
塩太郎は、文句を言う。
歳下に君付けで呼ばれるのは、舐められてる気がして嫌なのだ。
「それは、僕が、塩太郎君より歳上だからです!」
「じゃあ、何歳だよ!」
「それは……」
アンは、口篭る。
「アンは、368歳! ウチの元副団長の娘で、ドワーフ族だから、今の姿が成人した姿で、不老不死じゃなくても、それ以上成長しないわ!」
「何で、言うんですか! シャンティーさん!」
アンが、プンプンに頬っぺを膨らまし怒っている。
「そもそも、アンが『犬の肉球』に入ってたら、何も問題なかったのよ!
そしたら、『犬の肉球』もうまく世代交代できて、休業中なんかにならなかったんだから!
アンも、子供の頃、『犬の肉球』に入りたいって言ってたじゃない!」
「それは、そうですけど……僕も、違う環境で冒険してみたかったんです!
気の合う仲間を見つけて、一緒に冒険するのが、子供の頃からの夢だったんですから!」
「そして見つけたのが、『犬の肉球』のバッタもんの『犬の尻尾』って……」
「僕的には、『犬の肉球』と名前が似てたから、親近感が湧いたんです!」
ドカーン! ドカーン! ドカーン!
シャンティとアンが言い争ってる間も、ずっと空から隕石攻撃が続いてるというのに、アンが背中に担いでる大盾が、全部防いでしまっている。
というか、どんだけ大盾が丈夫でも、衝撃があるだろうに、アンは、涼しい顔をしてシャンティーと口喧嘩を続けているのだ。
「アンさん! 本当に不味いですって! もうペロちゃんも、限界ですよ!
というか、姫様、怒って、ペロちゃん降りちゃいましたよ!」
どんだけ良い目なのか、女剣士は、遠くの上空を見ながら、アンに報告する。
「えぇぇぇーー! ヤバいですよ! シャンティーさん!
今回は、僕でも、姫ちゃん止めれませんよ!
早く、塩太郎君を置いて逃げて下さい!
塩太郎君は、僕達、『犬の尻尾』が、ベルゼブブ攻略の為に日本から厳選して召喚させた、勇者候補なんですから!」
「知ってるわよ! だから、塩太郎は、『犬の肉球』が貰うと言ってんの!
そして、久しぶりに『犬の肉球』を完全復活させるんだから!」
「だから、それは駄目ですって!
姫ちゃん、サイト君の件で、エリスさんとシャンティーさんの事、相当恨んでるんですから!
それだけで飽き足らず、塩太郎君まで強奪したら、エリスさんとシャンティーさん、この世から消滅させられますよ!」
「なら、アンタが守りなさいよ!」
「僕は、中立ですって! そもそもサイト君の件では、僕も、エリスさんとシャンティーさんを少しだけ怒ってるんですから!」
「だから、あの件は、私達にもどうする事をも出来なかったんだって!
ゴトウ・サイトが勝手にやった事なんだから!」
「分かってますよ。それでも僕達は心の整理が出来ないんです。
それで、今でも、苦しんで、どうにかしなきゃと藻掻いてるんじゃないですか!」
「アンタ達だけじゃなくて、私もエリスも苦しんでるのよ!
なんてったって、私達は、あの事件の当事者だし、あの現場に居た者は、全員苦しんでるの!
アンの所のメリルだって、ずっと一人きりで藻掻き苦しんでるんでしょ!」
「そうでしたね……言い過ぎました……。ですが、塩太郎君は、置いていって貰います!」
「だから嫌だって! 私が塩太郎を鍛えて、私達『犬の肉球』も、ベルゼブブ討伐レイドに参加するんだから!」
「そんな事、姫ちゃんが許さないと思いますよ」
「その為の佐藤 塩太郎だって言うの!
塩太郎も参加すると言ったら、ガブリエルも、『犬の肉球』がレイドに参加するのを承諾するしかないでしょうに!」
「シャンティーさん……それが目当てでしたか……」
アンも、どうやら合点がいったらしい。
「アンが何を言ったって、塩太郎は、私が責任をもって一人前にしてみせる!
アンも知ってるでしょ!
私が、人を育てるのが上手い事を、アンだって、私が子供の頃に、ソロで南の大陸に渡れるぐらいの実力に育てたんですもんね!」
「シャンティーさんが、人を育てるのが上手いのは知ってますけど……でも……姫ちゃんからは逃げれませんよ」
アンが、喋り終わると同時に、まるで台風の目のように上空の雲が晴れ渡り、強烈なプレッシャーが辺りの空気を支配し、その台風の目を中心にして魔力嵐が巻き起こる。
「何だ?! コレ!」
塩太郎は、余りのプレッシャーのせいで、片膝を付く。
「来たわよ」
シャンティーが、空を見上げ口ずさむ。
塩太郎も、シャンティーが見据える空を見上げると、そこには、
アンと同じようなメイド服を着た、冴えるような真っ赤な髪を、禍々しい赤黒い魔力で靡かせたダークエルフが、エリスの事を、上空から物凄い形相で、キッ! と睨みつけながら、降りて来ていたのだった。
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