14 / 166
14. 聖剣を持つ男
しおりを挟む塩太郎は、無駄に強過ぎるエリスの精霊達に護られながら、3週間前に訪れた階段のある部屋の前に到着した。
「この部屋、さっき貸してあげたS級の冒険者ブレスレットがないと入れないからね!」
シャンティーが、一々、説明してくる。
「何、言ってやがる! 俺はここから来たんだぜ!」
塩太郎は、何気にブレスレットを外して、シャンティーに渡し、扉を開け部屋に入ろうとする。
ドンッ!
塩太郎は盛大に、透明な壁に頭をぶつけた。
「痛っ! 本当じゃねーか!」
「だから、言ったでしょ! フロアーボスを倒したら、階段がある部屋の上下階を、冒険者ブレスレットで結界を張るルールなの!
因みに、この結界は、勇者か聖剣でしか斬ること出来ないから!」
シャンティーは、まるで誰かに解説するかのように、説明してくる。
「ん?! コレ、斬れるものなのか?」
「会心の一撃を連発できる、ヤバイ奴らなら、斬れるわよ!」
「成程ね。そしたら試しに斬ってみるか!
俺、こう見えて、剣の腕には自信があるかんな!」
塩太郎は、腕をグルグル回し、ヤル気になっている。
「例えアンタでも、会心の一撃を連発出来ないでしょ!
剣豪でもないんだし!」
「だから、お前、舐めてんのか?
俺が、剣豪じゃないって? 俺は相当強い侍なんだけど?」
塩太郎は、剣豪じゃないと何度も言われて、イラつく。
「あーー面倒臭い。だから、私は職業のこと言ってんだって!」
「俺の職業は、れっきとした侍で、柳生新陰流と、神道無念流の免許皆伝だっちゅーの! どう考えても、剣豪の部類じゃねーか!」
「ハイハイ。分かりましたよ。そしたら、剣豪さんの腕前を見せて下さいね!」
シャンティーは、ハイハイ言いながら、軽く受け流す。
「チッ! 信じてやがらねーな!
じゃあ、火縄銃をも打ち返す、俺の実力見せてやんよ!」
塩太郎は、集中して居合の構えを取る。
そして、
スパン! と刀を斜めに振り抜き、そして、そのまま何事でもないように、カチンと、鞘にしまう。
「やっぱ、無理じゃない!」
シャンティーは、そのまま破壊されずに残っている結界を見て、それ見た事かと話し掛けてくる。
「何、言ってやがる? 手応えは、しっかりあったぞ?」
パキン!
塩太郎が言い終わる間も無く、階段フロアーに張ってあった結界が割れる。
「エッ!? 嘘でしょ……結界が割れたの……。
S級ブレスレットで張った結界は、剣豪スキルの『一撃』と、聖剣が2つ合わさって初めて斬り裂く事が出来るのよ!!」
「ほれみろ! やっぱり俺は、剣豪だろ?」
塩太郎は、したり顔で胸を張る。
「アンタ! その刀見せなさいよ!」
「エッ? いいけど、お前、そのちっこい体で持てるのか?」
「持てないから、鞘から出して持ってろ!!」
シャンティーは、自分の鞄の中から眼鏡のようなものを出して、まじまじ、塩太郎の愛剣 村正を見る。
「やっぱり! これ、聖剣じゃないの!」
シャンティーは、驚愕している。
「聖剣って、これ、その辺の武器屋に売ってるただの村正だぞ?」
「あんたね! 人をたくさん殺し、魔力を溜め込んだ日本刀は、この世界では聖剣になると言われてんのよ!
実際、ハラダ家が所有する政宗は、この世界に持ち込まれた当時はただの刀だったけど、20年経った後《のち》、いつの間にか聖剣になってたという伝説もあるのよ!
それなのに、この世界に持ち込まれて、1ヶ月もしない内に、聖剣になるなんて、普通、有り得る事なの……。
というか、アンタ、今、会心の一撃を放ったわよね!
それ、普通、剣豪じゃないと放てないスキルだから!」
「なんか良く分からんけど、俺の村正が、たくさん人間の血を吸ってるのは確かだし、必殺の居合切りは、巨大な岩を真っ二つにした事も有るからな!」
塩太郎は、鼻高々に言い放つ。
「ガブリエルが、異世界から助っ人を呼び寄せようとしてるという噂を聞いてたけど、聖剣まで持って来てるとは聞いてなかったわよ!
これ、ちょっと不味いわね……。
早く、塩太郎を『犬の肉球』に入れてしまわないと、ガブリエルが奪い返しにくるかもしれないわね……」
なんか、シャンティーが、1人でブツブツ言っている。
「シャンティーちゃん。これからどうするの?」
エリスが心配して、シャンティーに話し掛ける。
「直ぐに、西の大陸に戻るわよ!
塩太郎の冒険者登録は、南の大陸のその辺の冒険者ギルドでやれば良いと思ってたけど、南の大陸は、ガブリエルの縄張り。
どこに、間者が居るか分からないものね!」
シャンティーは、そう言うと、すぐにS級冒険者ブレスレットを使って階段フロアーに結界を張り直し、そして、塩太郎の肩に止まり、階段を上るように指示を出す。
「着いたわよ!」
階段を上がると、なんか、シャンティーが、ドヤ顔で塩太郎に話し掛けてくる。
「着いたわよ!って、ただ、階段上っただけだろうがよ!」
「何、言ってんの! 1階階段フロアーに転移したと言ってんの!
もう1つ階段が有るでしょ! そこを上がんなさいよ!」
シャンティーが、偉そうに指示を出してくる。
「て! 本当だ。もう1つ階段がある。ここは紫色タコ野郎が居た部屋じゃないのか?」
「だから、冒険者ブレスレットで、1階階段フロアーに転移したって言ってんでしょ!
転移も知らないって、本当に、アンタ、異世界大好き日本人?」
「俺は、れっきとした日本人だっちゅーの!」
塩太郎は、ブツブツ言いながらも、シャンティーに言われるまま、階段を上る。
そして、階段の先にあった扉を開けると、そこには、
「嘘だろ……あれほど苦労したのに、こんな簡単に出られるなんて……」
青空高い、緑の大地が広がっていたのだった。
ーーー
ここまで読んでくれてありがとうございます。
面白かったら、ブックマークお願いします!
13
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界の剣聖女子
みくもっち
ファンタジー
(時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。
その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。
ただし万能というわけではない。
心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。
また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。
異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。
時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。
バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。
テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー!
*素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる