上 下
12 / 166

12. 358歳の女

しおりを挟む
 
「ちょっと、待って! あんた……もしかして、異世界人の末裔じゃなくて、本物の異世界人?
 しかも、このSSSSダンジョンの下層に、一人で、1ヶ月間も居たですって!」

 光ってる人が、驚愕の表情をして聞いてきた。

「異世界人? そりゃあ、お前達からみたらそうだろうな。
 俺は、日本人! 長州脱藩浪人 砂糖 塩太郎だ!」

 塩太郎は、日本人、長州人である事を胸を張って語る。

「やっぱり……。そして、ハラダ家とは、全く関係無いのね?」

「だから、その原田って、誰だよ!
 俺は、佐藤だっての!」

 光ってる人は、塩太郎の言葉を聞いて、ニヤリとする。

「ふふふふふ。エリス! やったわよ! 風は私達に吹いてるわ!
 ガブリエルの手の者じゃない、本物の侍を、日本人を見つけたわよ!
 これで、『犬の肉球』を、再結成できる!」

 光ってる人は、エリスという金髪碧眼の悪魔の周りを、嬉しそうにブンブン飛び回る。

「えっ? 犬の肉球がどうしたって?
 というか、なんか俺、もうヤバそうなんだけど……」

 塩太郎は、元々、紫タコ侍の毒攻撃を受けた状態。コクコクとHPを削られていたのだ。

「アンタ、多分、死ぬわよ。助けて欲しかったら、私達のギルド『犬の肉球』に入りなさいな!」

 光ってる人は、空中から塩太郎を見下ろして言う。

「死ぬのは、ちょっと勘弁だな……生き返らせて貰ったばっかだし……。それに悪い悪魔を殺すという約束も果たせていしな……」

「ん?! アンタ……もしかして、誰かと契約してるの?」

 光ってる人が、慌てて聞いてくる。

「ああ。紫色の服を着た悪魔と契約して、こちらの世界の悪い悪魔を殺せと言われた……」

「紫色の服って、そいつアマイモンって奴じゃないの?」

「ああ。そんな名前の奴だった。アマイモンって、俺の名前より、変だよな……」

「チッ! やっぱり、ガブリエルの手の者かい! 
 だけど、私達が来なかったら、本当はここで、アナタ死んでた筈よね!
 そしたら、契約は不履行。
 だって、ここで死んだら、ダンジョンに吸収されて居なくなっちゃうんだから!
 ここのダンジョンに召喚したのは、ガブリエル側のミス!
 この侍が死んでから、私達が生き返らせたら、当然、私達が自由にしてもいいよね!
 だって、死んでたんだから!」

 なんか、光ってる人がブツブツ言っている……。
 というか、瞼が重くなってきた……。
 また、死んでしまうのか……。
 早く悪魔を殺して、長州に戻りたかったんだが、スマン、高杉……また、助けてやれそうにねーや……

 塩太郎は、再び死んだ……。


「お~い! 起きろ! いつまで寝てるの!
 きっちり、生き返らせてやったんだから、アンタは、今日から、このシャンティー様の下僕になるのよ!」

 耳元で、羽音が五月蝿い。

 パチッ!

 塩太郎は反射的に、蝿を叩く。

「痛~い! アンタ、命の恩人に向かって、なんて事してんの!」

 塩太郎の両手に挟まれた、光ってる人が、涙目でカンカンに怒っている。

「スマン。蝿だと思って……」

「蝿~! この私の事を、アンタ、蝿とか言ったの!?
 折角、生き返らせたけど、この場で殺してやろうか!」

「いや……すまん……」

 塩太郎は、本気で謝罪する。

「アンタ、私に、生き返らせて貰った事、分かってるわよね!」

 光ってる人は、わざわざ塩太郎の目線より高い所まで飛び、ふんぞり返って聞いてくる。

「ああ。これで死んだの2回目だからな……。
 生き返った感覚も分かる」

「やっぱり、命の恩人には、何か報いないといけないわよね!」

 光ってる人は、イヤったらしく聞いてくる。

「それは、そうだな……」

「だったら、アンタ、私達のギルド『犬の肉球』に入りなさい!」

「入ってもいいが、俺には、最初に約束した、悪い悪魔を殺さないといけないとう契約があるんだが、それを行った後でもいいか?」

 塩太郎は、律儀な日本人。一度した約束を破る真似などしない。

「フフン! その悪い悪魔というのは、多分、蝿の王、ベルゼブブの事よね!
 そいつを倒すのは、私達『犬の肉球』の悲願でもあるから、別に、後からじゃなくて、『犬の肉球』に入って殺せばいいわよ!」

「蝿の王? それは、お前の仲間なんじゃないのか?」

 バキッ!

 塩太郎は、何か不思議な力で吹っ飛ばされた。

「アンタ! こんなプリティな私が、蝿に見える訳!
 私は、光の妖精シャンティー!
 超エリートの上級精霊よ!
 こんなに光り輝く、悪魔なんか居る筈ないでしょ!」

「妖精?」

「そう! 妖精! カッコイイでしょ!」

「妖精なんて、初めて見た。悪魔と一緒で、妖怪の類かなんかか?」

「悪魔? 妖怪って?」

 光の妖精シャンティーは、塩太郎の言葉に絶句している。

「私とエリスは、光の魔力に満ちた、西の大陸は、『沈黙の森』出身なのよ!
 悪魔とかは、南の大陸の瘴気に満ちた魔力が好きなの!
 奴らと、一緒にしないでくれる!」

「ていうか、その耳が長い女、悪魔じゃねーのか?」

「てっ?! エリスが悪魔ですって!
 あんた、本当に日本人!
 日本人は、ゴトウ・サイトみたいに、みんなエルフやケモ耳娘が好きじゃないの!」

「ゴトウ・サイト? エルフ?ケモ耳娘?
 何だそれ?」

 塩太郎は、本気に頭を捻る。

「どういう事? 日本人は全員、亜人を差別しないというか、大好きな人種じゃなかったの……。
 というか、転移してきた時代が違うのか……。同じ日本人でも、ハラダ家と、ゴトウ・サイトは、性格も趣味趣向も全然、違ったし……」

 シャンティーは、ブツブツ言いながら考え込む。

「で、そいつは、悪魔じゃなかったら、何なんだ?」

 塩太郎は、金髪碧眼の耳の長い女を見やる。

「ええと……塩太郎君。私はエルフのエリスです……宜しくお願いします!」

 エルフのエリスは、耳を真っ赤にさせて
 頭を下げ自己紹介した。

「塩太郎君って、俺より、エリスの方が歳下じゃねーのか?」

 エリスは、どう見ても18歳くらいにしか見えない。
 もう20代中盤の塩太郎的に、歳下に君付けされるのは嫌じゃないけど、なんかむず痒い。

「あの、その、私、358歳なんです……」

「ああ。そうなんだ……て、えぇぇぇぇーー! 嘘だろ!!」

 全く異世界知識が無い、幕末出身の塩太郎は知らなかった。
 異世界には、長寿種族がたくさん居る事を。

 そして、エリスの母親が、1000歳オーバーで、まだ現役だという事も、当然ながら知る由もなかった。

 ーーー

 面白かったら、ブックマーク、ポチッ!としてね!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:334pt お気に入り:122

【完結】あの伝説のショートギャグ 猫のおっさん

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:1

いもうとのやつ

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:9

婚約破棄のその先は

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:3,106

下心は恋心なんだ。

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:28

おおかみ宿舎の食堂でいただきます

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:653

【完結】お世話になりました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,107pt お気に入り:3,377

処理中です...