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12. 358歳の女
しおりを挟む「ちょっと、待って! あんた……もしかして、異世界人の末裔じゃなくて、本物の異世界人?
しかも、このSSSSダンジョンの下層に、一人で、1ヶ月間も居たですって!」
光ってる人が、驚愕の表情をして聞いてきた。
「異世界人? そりゃあ、お前達からみたらそうだろうな。
俺は、日本人! 長州脱藩浪人 砂糖 塩太郎だ!」
塩太郎は、日本人、長州人である事を胸を張って語る。
「やっぱり……。そして、ハラダ家とは、全く関係無いのね?」
「だから、その原田って、誰だよ!
俺は、佐藤だっての!」
光ってる人は、塩太郎の言葉を聞いて、ニヤリとする。
「ふふふふふ。エリス! やったわよ! 風は私達に吹いてるわ!
ガブリエルの手の者じゃない、本物の侍を、日本人を見つけたわよ!
これで、『犬の肉球』を、再結成できる!」
光ってる人は、エリスという金髪碧眼の悪魔の周りを、嬉しそうにブンブン飛び回る。
「えっ? 犬の肉球がどうしたって?
というか、なんか俺、もうヤバそうなんだけど……」
塩太郎は、元々、紫タコ侍の毒攻撃を受けた状態。コクコクとHPを削られていたのだ。
「アンタ、多分、死ぬわよ。助けて欲しかったら、私達のギルド『犬の肉球』に入りなさいな!」
光ってる人は、空中から塩太郎を見下ろして言う。
「死ぬのは、ちょっと勘弁だな……生き返らせて貰ったばっかだし……。それに悪い悪魔を殺すという約束も果たせていしな……」
「ん?! アンタ……もしかして、誰かと契約してるの?」
光ってる人が、慌てて聞いてくる。
「ああ。紫色の服を着た悪魔と契約して、こちらの世界の悪い悪魔を殺せと言われた……」
「紫色の服って、そいつアマイモンって奴じゃないの?」
「ああ。そんな名前の奴だった。アマイモンって、俺の名前より、変だよな……」
「チッ! やっぱり、ガブリエルの手の者かい!
だけど、私達が来なかったら、本当はここで、アナタ死んでた筈よね!
そしたら、契約は不履行。
だって、ここで死んだら、ダンジョンに吸収されて居なくなっちゃうんだから!
ここのダンジョンに召喚したのは、ガブリエル側のミス!
この侍が死んでから、私達が生き返らせたら、当然、私達が自由にしてもいいよね!
だって、死んでたんだから!」
なんか、光ってる人がブツブツ言っている……。
というか、瞼が重くなってきた……。
また、死んでしまうのか……。
早く悪魔を殺して、長州に戻りたかったんだが、スマン、高杉……また、助けてやれそうにねーや……
塩太郎は、再び死んだ……。
「お~い! 起きろ! いつまで寝てるの!
きっちり、生き返らせてやったんだから、アンタは、今日から、このシャンティー様の下僕になるのよ!」
耳元で、羽音が五月蝿い。
パチッ!
塩太郎は反射的に、蝿を叩く。
「痛~い! アンタ、命の恩人に向かって、なんて事してんの!」
塩太郎の両手に挟まれた、光ってる人が、涙目でカンカンに怒っている。
「スマン。蝿だと思って……」
「蝿~! この私の事を、アンタ、蝿とか言ったの!?
折角、生き返らせたけど、この場で殺してやろうか!」
「いや……すまん……」
塩太郎は、本気で謝罪する。
「アンタ、私に、生き返らせて貰った事、分かってるわよね!」
光ってる人は、わざわざ塩太郎の目線より高い所まで飛び、ふんぞり返って聞いてくる。
「ああ。これで死んだの2回目だからな……。
生き返った感覚も分かる」
「やっぱり、命の恩人には、何か報いないといけないわよね!」
光ってる人は、イヤったらしく聞いてくる。
「それは、そうだな……」
「だったら、アンタ、私達のギルド『犬の肉球』に入りなさい!」
「入ってもいいが、俺には、最初に約束した、悪い悪魔を殺さないといけないとう契約があるんだが、それを行った後でもいいか?」
塩太郎は、律儀な日本人。一度した約束を破る真似などしない。
「フフン! その悪い悪魔というのは、多分、蝿の王、ベルゼブブの事よね!
そいつを倒すのは、私達『犬の肉球』の悲願でもあるから、別に、後からじゃなくて、『犬の肉球』に入って殺せばいいわよ!」
「蝿の王? それは、お前の仲間なんじゃないのか?」
バキッ!
塩太郎は、何か不思議な力で吹っ飛ばされた。
「アンタ! こんなプリティな私が、蝿に見える訳!
私は、光の妖精シャンティー!
超エリートの上級精霊よ!
こんなに光り輝く、悪魔なんか居る筈ないでしょ!」
「妖精?」
「そう! 妖精! カッコイイでしょ!」
「妖精なんて、初めて見た。悪魔と一緒で、妖怪の類かなんかか?」
「悪魔? 妖怪って?」
光の妖精シャンティーは、塩太郎の言葉に絶句している。
「私とエリスは、光の魔力に満ちた、西の大陸は、『沈黙の森』出身なのよ!
悪魔とかは、南の大陸の瘴気に満ちた魔力が好きなの!
奴らと、一緒にしないでくれる!」
「ていうか、その耳が長い女、悪魔じゃねーのか?」
「てっ?! エリスが悪魔ですって!
あんた、本当に日本人!
日本人は、ゴトウ・サイトみたいに、みんなエルフやケモ耳娘が好きじゃないの!」
「ゴトウ・サイト? エルフ?ケモ耳娘?
何だそれ?」
塩太郎は、本気に頭を捻る。
「どういう事? 日本人は全員、亜人を差別しないというか、大好きな人種じゃなかったの……。
というか、転移してきた時代が違うのか……。同じ日本人でも、ハラダ家と、ゴトウ・サイトは、性格も趣味趣向も全然、違ったし……」
シャンティーは、ブツブツ言いながら考え込む。
「で、そいつは、悪魔じゃなかったら、何なんだ?」
塩太郎は、金髪碧眼の耳の長い女を見やる。
「ええと……塩太郎君。私はエルフのエリスです……宜しくお願いします!」
エルフのエリスは、耳を真っ赤にさせて
頭を下げ自己紹介した。
「塩太郎君って、俺より、エリスの方が歳下じゃねーのか?」
エリスは、どう見ても18歳くらいにしか見えない。
もう20代中盤の塩太郎的に、歳下に君付けされるのは嫌じゃないけど、なんかむず痒い。
「あの、その、私、358歳なんです……」
「ああ。そうなんだ……て、えぇぇぇぇーー! 嘘だろ!!」
全く異世界知識が無い、幕末出身の塩太郎は知らなかった。
異世界には、長寿種族がたくさん居る事を。
そして、エリスの母親が、1000歳オーバーで、まだ現役だという事も、当然ながら知る由もなかった。
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