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10. 小心者の男
しおりを挟む「何とか、倒せれたな……それにしても、傷が治って良かった。後、ちょっと倒すの遅かったら、俺、死んでたな……」
塩太郎は正しい。
この世界では、HPが0になると、イキナリ死ぬ。
「おっと! 忘れる所だった! 回収、回収!」
塩太郎は、死んだ紫タコ侍から、急いで刀を3本奪い取る。
「早く、とっとかないと、こいつら床に吸収されやがるからな!」
塩太郎は、ダンジョンの中をグルグル回ってたので知ってるのだ。
死んだ魔物が、ダンジョンに吸収される事を。
何度か迷ってるうちに、倒した魔物の所に戻ってしまった時があって、塩太郎は、自分の目で、石畳の床の中に、タコ侍が吸収される所を見たのだ。
その後、ウ〇コした後、ウ〇コも床に吸収されるか調べたのは内緒だ。
そんな事もあって、塩太郎は、決して長時間座って休憩などしない。
だって、座ってるうちに石畳に吸収されちゃったら嫌だからね!
幕末出身の塩太郎は知らない。死なないとダンジョンに吸収されない事を。
ダンジョン内で、休憩しても、昼寝をしても、死ななければ、ダンジョンに吸収されないのである。
まあ、普通、異世界知識が無かったら、そんなこと、知らなくて当然なんだけど。
巷の知ったか異世界転移者が、ウ〇コが吸収されるダンジョンで平気で寝たりする方が、本当は、どうかしているんだよね。
とか、語り手が勝手に解説してると、
「ん? アレは千両箱か?」
塩太郎は、フロアーボス部屋の奥の方にあった宝箱を見つける。
「勝手に貰っていいのか?」
塩太郎は知らない。フロアーボスを倒した後に出てくる宝箱を勝手に貰っていい事を。
令和日本人なら躊躇無く宝箱を開けると思うが、塩太郎は幕末日本人。
泥棒してるような気がして、気が引けているのだ。
まあ、タコ侍から死ぬほど刀を奪ってて、今更なんだけど。
「一応、開けて見ようかな……持ち主、死んじゃってるし……それに、どうせ床に沈んで居なくなるし……」
やはり、目の前に宝箱があったら誰でも開けたくなるもの。
宝箱は、男の冒険心をくすぐる何かがあるのだ。
「ん?! 鍵が掛かってない。不用心な」
塩太郎は、知らない。フロアーボスやラスボス部屋にある宝箱は、大体、鍵が空いてる事を。
「空いてるんなら、ヤッパリ貰ってもいい物なんだよな!」
塩太郎は、自分に言い聞かせる。
決して、自分は悪い事してないと。
そして、恐る恐る、宝箱を開けてみる。
「おっ! コレは! て、不味そうな色付きの水かよ!こんなの、要らねーよ!」
塩太郎は、急激に興味を失い、そのまま宝箱の箱を閉じる。
「ヤッパリ、要らないもの入れてたんだな。どう考えても、アレは腐った水だろ!
ていうか、腐った水を千両箱の中に入れとくなんて、やはりあのタコ、千手観音じゃねーな! 神様が、腐った水を飲むとは思えねーし……」
塩太郎は知らない。
塩太郎が腐った水と言ってるのは、高級ポーションである事を。
そして、その高級ポーションがあれば、塩太郎のダンジョンの出口を探すの旅が、劇的に楽になる事を、幕末出身の塩太郎は知らなかったのだ。
そして、塩太郎は、当初の目的であった、部屋の最奥にある階段を下る。
「どうか、出口であってくれ……」
塩太郎は、祈りながら下りたが、そこは、ただの何も無い部屋だった。
「嘘だろ……」
塩太郎は、暫く、部屋の中を確認し、そして、ちょっと豪華な扉があったので、恐る恐る開けてみる。
「てっ! また、ジメジメした廊下かよ!」
そう、塩太郎は、ただ、より難解な下の階層に下りただけ。
ますます、地上に戻るのが困難になってしまったのだった。
ーーー
塩太郎が、フロアーボスを倒してから、3週間後の1つ上の階層。
「本当、この階層、面倒臭いわね!
というか、何でタコが刀なんか持ってるのよ!」
ぶつくさ文句を言いながら、サッカーボールぐらいの大きさの光の妖精シャンティーが、フワフワ飛びながらブツブツ言っている。
「シャンティさん! タコ侍は私共に任せて下さい! 決して、シャンティーさんの手を煩わしたりしません!」
S級ギルド『三日月旅団』の団長ミカサ・ムーンが、光の妖精シャンティーの言葉に反応して、直立不動で言葉を返す。
因みに、『三日月旅団』とは、サキュバスとエルフのハーフ、所謂、エロフのミカサ・ムーンと、種違いのサキュバスの双子の妹、ララ·ムーンとモモ·ムーンを中核とするギルドで、今回は、汁男で大幹部の大賢者ザーマンと、神龍教の元神官のシルマンの合計5人が、今回の遠征に参加している。
「シャンティーちゃん! もうそろそろ休憩しない?」
シャンティーに、金髪碧眼の絶世の美女で、耳が尖ったエルフが喋り掛ける。
「まあ、エリスが言うなら休憩しよっか!
もうすぐ、フロアーボス部屋がある筈だから、そこで休憩しましょ!」
シャンティーは、エリスに甘い。
というか、シャンティは、エリスの使い魔だったりする。
このエリスという美少女。18歳ぐらいに見えるが、実際は300オーバーのババアである。
しかしながら、1000歳オーバーのエリスの母親で、西の大陸は、『静寂の森』の女王アリシア・ホワイトが、現役バリバリなので、まだまだ若い部類に入る。
そして、立場上は、『静寂の森』のお姫様なのだが、まだ子供だった時に、この世界の最高種 赤龍を召喚し、この冒険者の楽園、南の大陸に家出してきたという過去がある。
因みに、エリスとシャンティーは、勇者パーティーの中核を成す『犬の肉球』の元メンバー。
現在は、エリスとシャンティー以外のメンバーは、寿命で死んでしまったり、ドワーフ王国で王様やったり、行方不明だったりで、休業中だったりする。
そして今はというと、シャンティーの教え子、S級パーティー『三日月旅団』の助っ人として、同行しているのだ。
「あんたら、チンタラしてたら、ギルドランキング1位になんてなれないわよ!
ガブリエルが本気を出したら、本当は1位なんか狙えないんだからね!」
カブリエルというのは、南の大陸は、『漆黒の森』の女王で、ギルド『犬の肉球』の団長。そして、ダークエルフの女王でもあるガブリエル・ゴトウ・ツゥペシュの事である。
訳あって、エリスは、ガブリエルに嫌悪されていて、いつも南の大陸に来ると嫌がらせを受けたりしている。
エリスとシャンティは、普段は、出身地でもある西の大陸に居るのだが、現在、ギルドランキング1位を狙う『三日月旅団』の助っ人として、久しぶりに、南の大陸に降り立っていたのだ。
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