職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

文字の大きさ
上 下
10 / 166

10. 小心者の男

しおりを挟む
 
「何とか、倒せれたな……それにしても、傷が治って良かった。後、ちょっと倒すの遅かったら、俺、死んでたな……」

 塩太郎は正しい。
 この世界では、HPが0になると、イキナリ死ぬ。

「おっと! 忘れる所だった! 回収、回収!」

 塩太郎は、死んだ紫タコ侍から、急いで刀を3本奪い取る。

「早く、とっとかないと、こいつら床に吸収されやがるからな!」

 塩太郎は、ダンジョンの中をグルグル回ってたので知ってるのだ。
 死んだ魔物が、ダンジョンに吸収される事を。
 何度か迷ってるうちに、倒した魔物の所に戻ってしまった時があって、塩太郎は、自分の目で、石畳の床の中に、タコ侍が吸収される所を見たのだ。

 その後、ウ〇コした後、ウ〇コも床に吸収されるか調べたのは内緒だ。
 そんな事もあって、塩太郎は、決して長時間座って休憩などしない。

 だって、座ってるうちに石畳に吸収されちゃったら嫌だからね!

 幕末出身の塩太郎は知らない。死なないとダンジョンに吸収されない事を。
 ダンジョン内で、休憩しても、昼寝をしても、死ななければ、ダンジョンに吸収されないのである。

 まあ、普通、異世界知識が無かったら、そんなこと、知らなくて当然なんだけど。

 巷の知ったか異世界転移者が、ウ〇コが吸収されるダンジョンで平気で寝たりする方が、本当は、どうかしているんだよね。

 とか、語り手が勝手に解説してると、

「ん? アレは千両箱か?」

 塩太郎は、フロアーボス部屋の奥の方にあった宝箱を見つける。

「勝手に貰っていいのか?」

 塩太郎は知らない。フロアーボスを倒した後に出てくる宝箱を勝手に貰っていい事を。
 令和日本人なら躊躇無く宝箱を開けると思うが、塩太郎は幕末日本人。
 泥棒してるような気がして、気が引けているのだ。

 まあ、タコ侍から死ぬほど刀を奪ってて、今更なんだけど。

「一応、開けて見ようかな……持ち主、死んじゃってるし……それに、どうせ床に沈んで居なくなるし……」

 やはり、目の前に宝箱があったら誰でも開けたくなるもの。
 宝箱は、男の冒険心をくすぐる何かがあるのだ。

「ん?! 鍵が掛かってない。不用心な」

 塩太郎は、知らない。フロアーボスやラスボス部屋にある宝箱は、大体、鍵が空いてる事を。

「空いてるんなら、ヤッパリ貰ってもいい物なんだよな!」

 塩太郎は、自分に言い聞かせる。
 決して、自分は悪い事してないと。

 そして、恐る恐る、宝箱を開けてみる。

「おっ! コレは! て、不味そうな色付きの水かよ!こんなの、要らねーよ!」

 塩太郎は、急激に興味を失い、そのまま宝箱の箱を閉じる。

「ヤッパリ、要らないもの入れてたんだな。どう考えても、アレは腐った水だろ!
 ていうか、腐った水を千両箱の中に入れとくなんて、やはりあのタコ、千手観音じゃねーな! 神様が、腐った水を飲むとは思えねーし……」

 塩太郎は知らない。
 塩太郎が腐った水と言ってるのは、高級ポーションである事を。
 そして、その高級ポーションがあれば、塩太郎のダンジョンの出口を探すの旅が、劇的に楽になる事を、幕末出身の塩太郎は知らなかったのだ。

 そして、塩太郎は、当初の目的であった、部屋の最奥にある階段を下る。

「どうか、出口であってくれ……」

 塩太郎は、祈りながら下りたが、そこは、ただの何も無い部屋だった。

「嘘だろ……」

 塩太郎は、暫く、部屋の中を確認し、そして、ちょっと豪華な扉があったので、恐る恐る開けてみる。

「てっ! また、ジメジメした廊下かよ!」

 そう、塩太郎は、ただ、より難解な下の階層に下りただけ。
 ますます、地上に戻るのが困難になってしまったのだった。

 ーーー

 塩太郎が、フロアーボスを倒してから、3週間後の1つ上の階層。

「本当、この階層、面倒臭いわね!
 というか、何でタコが刀なんか持ってるのよ!」

 ぶつくさ文句を言いながら、サッカーボールぐらいの大きさの光の妖精シャンティーが、フワフワ飛びながらブツブツ言っている。

「シャンティさん! タコ侍は私共に任せて下さい! 決して、シャンティーさんの手を煩わしたりしません!」

 S級ギルド『三日月旅団』の団長ミカサ・ムーンが、光の妖精シャンティーの言葉に反応して、直立不動で言葉を返す。

 因みに、『三日月旅団』とは、サキュバスとエルフのハーフ、所謂、エロフのミカサ・ムーンと、種違いのサキュバスの双子の妹、ララ·ムーンとモモ·ムーンを中核とするギルドで、今回は、汁男で大幹部の大賢者ザーマンと、神龍教の元神官のシルマンの合計5人が、今回の遠征に参加している。

「シャンティーちゃん! もうそろそろ休憩しない?」

 シャンティーに、金髪碧眼の絶世の美女で、耳が尖ったエルフが喋り掛ける。

「まあ、エリスが言うなら休憩しよっか!
 もうすぐ、フロアーボス部屋がある筈だから、そこで休憩しましょ!」

 シャンティーは、エリスに甘い。
 というか、シャンティは、エリスの使い魔だったりする。

 このエリスという美少女。18歳ぐらいに見えるが、実際は300オーバーのババアである。
 しかしながら、1000歳オーバーのエリスの母親で、西の大陸は、『静寂の森』の女王アリシア・ホワイトが、現役バリバリなので、まだまだ若い部類に入る。

 そして、立場上は、『静寂の森』のお姫様なのだが、まだ子供だった時に、この世界の最高種 赤龍を召喚し、この冒険者の楽園、南の大陸に家出してきたという過去がある。

 因みに、エリスとシャンティーは、勇者パーティーの中核を成す『犬の肉球』の元メンバー。
 現在は、エリスとシャンティー以外のメンバーは、寿命で死んでしまったり、ドワーフ王国で王様やったり、行方不明だったりで、休業中だったりする。

 そして今はというと、シャンティーの教え子、S級パーティー『三日月旅団』の助っ人として、同行しているのだ。

「あんたら、チンタラしてたら、ギルドランキング1位になんてなれないわよ!
 ガブリエルが本気を出したら、本当は1位なんか狙えないんだからね!」

 カブリエルというのは、南の大陸は、『漆黒の森』の女王で、ギルド『犬の肉球』の団長。そして、ダークエルフの女王でもあるガブリエル・ゴトウ・ツゥペシュの事である。

 訳あって、エリスは、ガブリエルに嫌悪されていて、いつも南の大陸に来ると嫌がらせを受けたりしている。

 エリスとシャンティは、普段は、出身地でもある西の大陸に居るのだが、現在、ギルドランキング1位を狙う『三日月旅団』の助っ人として、久しぶりに、南の大陸に降り立っていたのだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界の剣聖女子

みくもっち
ファンタジー
 (時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。  その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。  ただし万能というわけではない。 心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。  また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。  異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。  時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。  バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。  テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー! *素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

処理中です...