職種がら目立つの自重してた幕末の人斬りが、異世界行ったらとんでもない事となりました

飼猫タマ

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9. 死にかける男

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「とっ! 拾わせねーよ!」

 塩太郎は、落とした刀を拾おうとする紫タコ侍に気付き、一気に間合いをつめ、そして、紫タコ侍の胸を蹴飛ばす。

「プギューー!」

 紫タコ侍は、刀に気を取られてた為、塩太郎の蹴りをマトモに受け吹っ飛ばされる。

「おお。こいつは中々。
 茶色のタコの刀より、ヤッパリ上物だったな!」

 塩太郎は、こちらの世界に来てから、せっせとタコ侍が持つ刀を集めていた。
 何せ、結構、上物の刀がタダで手に入るのだ。そんなの拾うでしょ!

 それに、どれだけでも入る魔法の鞄までゲットしてる。
 そりゃあ、幾らでも拾っちゃうよ!
 売れば、儲けれそうだし!

 幕末出身の塩太郎は知らなかった。
 SSSSダンジョン下層に生息するタコ侍の魔核が、拾った刀と同等の値段をする事を。
 そして、今迄に、日本円にして、1千万円超もの魔核を拾わずに、ドブに捨ていた事を、全くもって知らなかったのだ。

「ケケケケケ。お宝ゲットだぜ!」

 塩太郎は、結構、損をしてる事に気付かずに、刀をゲットしてテンションが上がる。

「さあ、来いよ! もう、四刀流じゃなくて、三刀流だぜ!」

 紫タコ侍は手負い。塩太郎に言わせれば、てんでなってない。

 死合の最中に、敵から目を離すなんて、二流も二流。
 幕末魔都京都で暗躍してきた、人斬り塩太郎から言わせたら、もう、死んでても仕方が無いレベル。

「ほら、立てよ! 俺と死合おうぜ!」

 塩太郎的に、もう、紫タコ侍より精神的に優位に立っている。
 斬撃波もマスターしたし、刀も奪った。
 もう、塩太郎的に負ける要素が見つからない。

「プギューー!」

 紫のタコ侍が、顔を真っ赤にして、塩太郎に襲いかかる。

「なんじゃそりゃ! さっきまでと全然違うじやねーか!
 剣筋が、乱れきってるぜ!」

 塩太郎は、全ての紫タコ侍の斬撃を躱しながら、余裕綽々で話し掛ける。
 タコ侍に、言葉が通じてるか分かんないけど。

「オラ! どうしたよ!」

 バキッ!

 塩太郎は、またまた、紫タコ侍を蹴飛ばす。塩太郎は、メチャクチャ足癖が悪い。
 元々、武士じゃなかったから、すぐに、手や足が出てしまうのだ。

 剣術を習い始めたのは、高杉に出会ってからなので、結構、遅い。
 高杉の付き人のような真似事をしながら、高杉に言われて、高杉が通う道場に、一緒に通わされたのだ。

 まあ、元がステゴロの喧嘩自慢だったので、無意識に、手や足が出てしまうのはご愛嬌。

 人斬りの仕事は、確実に殺してナンボ。
 使えるものは、なんだって使う。
 それが、塩太郎の場合、足蹴りだったり、パンチだったり、投げ技だったりする。
 まあ、塩太郎にとって、人斬りも喧嘩の延長線のようなものだから。

「ほらほら来いよ!お前が三刀流なら、俺は四刀流だぜ!
 なんせ、両足使えるからな!
 ん? 五刀流か? まあ、俺の自慢の5つ目の刀は、夜専用だけどな!」

 最近、独り言が多くなってる事を気にしてるが、さらに調子に乗って口が回る。
 まあ、1人きりなので、寂しさを紛らす為に声を出して喋ってるんだけど。

 カキン! カキン! カキン! カキン!

 結構、優勢だけれども、塩太郎もこれといった仕留める技が無い。
 何せ、相手は三刀流。しかも、タコ侍は魔物の癖に、剣術の基本がしっかりしてるのだ。

「本当に、こいつら、一体何なんだ?
 紫の悪魔は、悪魔を殺せとか言ってたけど、こいつら、もしかして悪魔の手下の妖怪か?」

 塩太郎は、知らない。タコ侍は、ダンジョンに生息してるただの魔物だという事を。
 そもそも、幕末出身の塩太郎には、魔物の概念が無かったりする。

 とか、考え事をしていると、

 ブシューー!

 突然、紫タコ侍が、紫色の液体を口から吐き出した。
 塩太郎は、全身、ドクドクしい紫色に染まる。

「なんじゃ! コレ! てっ! タコだったら黒い炭だしやがれ!」

 塩太郎は、紫の液体を拭いながら文句を言う。

「てっ……」

 突然、塩太郎の体に異変が起こる。

「体が重い……」

 塩太郎は知らない。紫色の魔物のお約束。毒攻撃を。
 塩太郎は、知らず知らずのうちに、HPを削られているのだ。

「やべえな……頭がクラクラしてきやがる……」

 塩太郎は、知らない。只今、塩太郎のHPが、15しかない事を。
 完全にHP概念がない塩太郎は、今迄の戦闘で、相当HPを削らていたのである。

 14、13、12。

 時間と共に、塩太郎のHPがどんどん減っていく。

「やべえ。本気でやべぇ。何か、いきなり死にそうな気がする……」

 塩太郎の野生の勘は正しい。
 この世界は、HP 0になったら死んでしまうのだ。
 早く、毒消し草かポーションを摂取しなければ、塩太郎は死んでしまう。

 塩太郎は、相当焦る。

 もう一か八か、一瞬で紫タコ侍を倒さなければならない。

 塩太郎は、後ろに飛び跳ね、そして、刀を鞘に収める。

 9、8、7、6……。

 そして、精神を集中させて、

 5、4、3、2……。

 スパーン!
 必殺居合切り!!

 ティロリロリ~ンLv.45になりました。

 塩太郎は、ギリギリHP1の所で、紫タコ侍を倒し、死ぬのを間逃れた。

「ん? 足の傷が治ってる。しかも、眠く無い!
 もしや、豪華な部屋のタコを倒すと、傷と眠気が無くなるのか?!」

 相変わらずの盛大な勘違い。
 ただ、レベルが上がっただけなのに……。

 令和日本人だったら、レベルアップするとHPとMPが全回復するのは常識なのだけど、幕末出身の塩太郎には、そんな事、分かる筈なかった。

 因みに、この世界では、高級ポーションを飲み続ければ、全く寝ずに生きる事も出来たりする。
 まあ、メッチャ高いポーションを飲んで、そんな事する物好きなど居ないのだけど。

 もっと言うと、塩太郎の魔法の鞄の中には、高級ポーションが、何個かサービスで入ってたりする。

 しかし、幕末出身の塩太郎にはポーションという概念がないので、ただの不味そうな色付きの水が、魔法の鞄の中に入ってるな……。としか、思ってなかった。

 ーーー

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