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211. 手下A

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「アンちゃん、約束の件だけど、どこに行きたいかリクエストとかある?」

 俺は次の日、覚えてるよアピールする為に、アンちゃんに自ら話しかける。
 俺がデートコースを考えるのもよいが、俺は春島のオシャレスポットをあまり知らないのだ。

 実際、杖を見に行ったとき以外は、サリス魔法学校の外に出てないしね。

「そしたら、魔道具のお店巡りに行きたいな!」

 ものづくり大好きな、アンちゃんらしい答えが返ってきた。
 男の俺的にはそれでも良いが、オシャレなカフェとかじゃなくていいのか?

 どうやら、アンちゃんより俺の方が、デートという儀式を意識し過ぎていたのかもしれない。

 しかし、流石に魔道具巡りだけでは終われない。
 男として、ある程度リードしなければ!

 俺は授業が終わると、早速、本塔校舎前で屋台をやってるブリトニーの手下Aの元に出掛ける。

 基本、ブリトニーの手下達は、ローテーションを組んで屋台を運営しているのだ。

 ブリトニーやエロチックさんは、お祭りの時など大きなイベントの時以外、屋台に来ないらしい。

 屋台に到着すると、手下Aは休憩中のようでタバコを吸って寛いでいた。

「オイ! 質問があるんだが、女の子が喜びそうなオシャレなカフェって、知らないか?」

「アッ! 若様、お勤めご苦労でごやんす!」

 俺に気付いた手下Aは、慌ててタバコを捨て、足の裏で火を消しながら90度の角度のお辞儀の挨拶をしてきた。
 お勤めって、俺はヤクザの親分ではないんだが……まあ、そんな事よりオシャレなカフェについて聞き出さねば。

「もう一度言うが、お前、オシャレなカフェは知らないか?」

「オシャレなカフェでやんすか?
 う~ん……
 あっしには分からないんで、若いもんに手分けして調べさせておきますよ!」

 どうやら手下Aは、ブリトニーが率いる愚連隊の中で、それなりの地位であるようだ。
 よく見ると、屋台の中でも少し偉そうにしている。

「ああ、頼むぞ!」

「わかりやした! 調べがついたら、直ぐに、若様に連絡いたしやす!」

 やはり、手下Aは頼りになる。

 アンちゃんと俺がした約束も、しっかり情報を得て教えてくれたしな。
 後は、手下Aからの連絡が来たら、アンちゃんとのデートの期日を決めれば良いだけだ。

 俺は、お土産として貰ったタコ焼きをつまみながらフェアリー寮に帰る。

 フェアリー寮に帰ると、寮の前では、案の定、『神道異界流』の訓練をやっていた。

 アリスは、毎日、朝と授業後に、『神道異界流』の道場を開いているのだ。
 今日は姫も呼んで、自分の修行に付き合ってもらってるみたいだ。

 姫もアリスの事を本当の妹のように可愛がっているので、断る事などしない。
 俺も久しぶりに、剣を振りたくなったので、隅のほうで素振りをして汗を流す事にする。

 ここで素振りついでに、ちょっと『神道異界流』について説明しておく。
 一応、『神道異界流』は、剣術と柔術とに別れている。
 幕末の剣の流派は、今の剣道とは違い超実践的であった。
 剣が折れたり落としたりした時も、相手は待ってくれない。
 なので、必然的に素手での戦い方も覚えなくてはならなかったのだ。
 皆が知ってる真剣白刃取りとかも、その一つだったりする。

 俺やジュリは、剣術も柔術も無難にこなすが、父親大好きなアリスは、アレックス同様に柔術特化だ。

 まあ、柔術特化といっても、『神道異界流』は、アリスの代で相当進化している。
 開祖のサトウ·シオタロウは、強くなる為なら何でも取り入れるという考えの人だったので、『神道異界流』が最強の流派に近付く為なら、どんなものでも受け入れても良いという考えであったのだ。

 そんな訳で、現『神道異界流』当主のケンセイも、アリスにドンドン新たな技を『神道異界流』に組み入れても良いと言っている。

 アリスは、元々戦い好きで、前の世界でも、俺の目を通して格闘技番組やカンフー映画をよく見ていたらしく、その技をガンガン『神道異界流』に取り入れているのだ。

 最近は、魔法使いの為に、杖を使った棒術を考えてるらしく、新たな型を模索中だったりする。

 そして現在、アリスは姫にお願いして、棒術の練習相手になってもらっているという訳だ。
 アリスは、南の大陸の魔法使いがよく使っている長めの杖を、それに対して、姫には、木刀で相手をしてもらっている。
 アリスは今、魔法使いの為の新たな棒術を編み出そうと必死なのである。

 そんな訳で、姫はアリスに付き合う事が多くなってる為、最近 授業後は、俺とは別行動が多くなっているのだ。

 ーーー

 次の日、学校に行くと、屋台の前で、手下Aが話し掛けてきた。

「若様! 命令通り、春島中のオシャレなカフェを見繕ってきましたよ!
 この紙に、店の名前と場所、店のオススメの食べ物とか色々書いておきました!」

「おお! さすが、手下A! 頼りになるな!」

「手下A?」

 思わず、俺が頭の中で、いつも呼んでるアダ名が口に出てしまった。

「名前がわからなかったので、思わず……」

 俺は正直に頭を下げる。

「あっしの名前は、トモゾウでやんす!
 しかし、若様があっしの事を手下Aと呼びたいのであれば、そのまま手下Aと呼んでもらって良いでやんすよ!
 若様に二つ名を付けて貰えたとあれば、ニャンコ愚連隊の中の、あっしの格が上がるってもんですから!」

 どうやらブリトニー率いる愚連隊の正式名称は、ニャンコ愚連隊だったらしい。
 それから、トモゾウ的には、手下Aでも良かったようだ。

 しかし、二つ名が『手下A』って……モブ丸出しでないのか……。

 やはり、この世界の常識が未だに理解出来ないアレンであった。
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