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203. 寮対抗格闘技大会(25)
しおりを挟む俺とモッコリーナが、ブリジアを連れてサリス魔法国家に戻ってくると、俺と姫の試合を見ていた観衆達が、ボーと突っ立てフラフラ揺れていた。
どうやら、シズカ先生と魔女さんに催眠状態にされているようである。
それから、俺が居ない間に、アリスやジュリやアンちゃん達が手分けして、姫がペッチャンコにした人達をポーションを掛けて生き返えさせてくれていた。
「師匠、準備は出来ております!
後は、ガブリエルさんの怒りを収めるだけです!」
シズカ先生が、モッコリーナに話し掛けてきた。
そんなシズカ先生を、ブリジアが睨み付ける。
ブリジアのエロCEOバージョンは、貫禄が有り過ぎるので、睨まれたシズカ先生は萎縮してしまう。
「魔女様、ご主人様以外にも弟子を取っていらっしゃったのですか?」
ブリジアの周りに、青白い闘気がユラユラ揺れている。
モッコリーナが突然居なくなった事には全く怒っていなかったのに、モッコリーナが新しく弟子を取っている事には怒っているようだ。
「ええと……弟子だったかなぁ……?」
モッコリーナは、ブリジアから目を逸らし、挙動不審になってオドオドしている。
「まあ良いです。で、私の役目はガブリエルの機嫌を収める事ですよね」
ブリジアが話の鉾を収めると、緊張が解けたモッコリーナは、水を得た魚のように本題を話し出す。
「そ……そうなんだよぉ! 姫ちゃんが私の事を怒ってるんだよぉ!」
「魔女様なら、力ずくでガブリエルを押さえ付ける事ぐらい出来るでしょうに」
「でも、姫ちゃん怖いんだもん!
人をゴキブリを殺すように、殺しちゃうんだよぉ!」
ブリジアは、ヤレヤレといった表情をして、冒険者バックから写真のようなものを取り出す。
そして、姫が閉じ込められている結界の前で、その写真のようなものを姫に見せた。
すると途端に、姫の周りに蠢いていた赤黒い禍々しい魔素が消える。
「ガブリエル、この写真が欲しくば、魔女様を虐めるでない!」
姫は、コクコク頷く。
姫は、ブリジアの持つ写真に釘付けだ。
余っ程、あの写真が欲しいらしい。
「そして、今後一切、魔女様に逆らわないと誓えるか?」
「誓うのです!」
姫は必死だ。
モッコリーナに向かって、ペコペコ頭を下げている。
姫が、ここまで欲しがる写真って何なんだ?
まあこれが、ブリジアによる姫の操縦術なのだろう。
姫は完全に、ブリジアに餌付けされている。
「魔女様、ガブリエルは落ち着いたようですので、結界を解いてもらっても大丈夫で御座います」
「了解! 流石、ブリちゃん。頼りになるよぉ!」
モッコリーナは、嬉しそうに姫に近づき、結界を解いた。
姫は、ブリジアの持っていた写真を、速攻で奪い取り、そのままケルベロス寮の方に走り去っていった。
あの写真は、一体何なのだ?
何となく想像できるが、聞くのが怖い。
「師匠! ガブリエルさんが、帰って行っちゃいましたけど、閉会式はどうするんですか?
観衆の記憶操作は、ガブリエルさんが、アレンさんに圧勝する所で止めてるんですけど!」
シズカ先生が、困った表情でモッコリーナに質問する。
「そうね! そしたら、閉会式の記憶操作もお願いね!
結構空白の時間も出来ちゃってるから、記憶操作で閉会式も終わらせておけば、辻褄もあうしね!」
モッコリーナは、いつもながら適当だ。
シズカ先生達にとっては、二度手間なのだが。
まあ、これがモッコリーナなのだろう。
シズカ先生と魔女さんも、いつもの事なのか、モッコリーナに文句の一つも言わずに観衆達の記憶操作を行う。
それにしても、流石は世界一の魔法使いモッコリーナの弟子なだけはある。
この人数を同時に、記憶操作するなんて、相当緻密な魔力操作技術と魔力が居る筈なのだ。
ブリジアも、感心した様子で、シズカ先生と魔女さんを観察している。
「師匠、終わりました!」
「終わりました」
シズカ先生と魔女さんは、ぐったりした顔をして、モッコリーナに報告する。
無理も無い。2回続けて観衆に記憶操作を行っているのだ。
この人数に1回記憶操作するのも大変なのだが、2回もするなど正気の沙汰ではない。
俺は可哀想なので、2人にエリスポーションを渡した。
「「ありがとうございます!」」
2人は、嬉しそうに頭を下げる。
「それじゃあ、みんなを元に戻しちゃおっか!」
モッコリーナは、そう言うと、パン! と手を叩いた。
すると、フラフラ突っ立ていた人々が、何事も無かったように突然動き出す。
「それにしても、ガブリエル様凄かったな!
アレンの奴、手も足も出なかったからな!」
「やっぱり、最強の一角は伊達じゃないぜ!」
「今回の大会は、優勝がガブリエル·ゴトウ·ツェペシュで、準優勝がサトウ·アレン。3位が、チンコスライスのブリトニーと、サトウ·アリスか!
ベスト4に 1人もゴッデス寮の連中が入ってないから、これで、サリス魔法学校のゴッデス寮支配は終わりを告げるな!」
「今日は、俺達亜人種の記念すべき日だ!」
どうやら記憶操作は、上手くいったようだ。
誰も、姫の恐ろしい所業を覚えていない。俺も しっかり姫に負けた事になっているし。
最終的には、俺の最初の計画通りに落ち着き、誰も傷つかずハッピーエンドで終わった。
「で、そなたたちは、魔女様の新しい弟子という事で良いのか?」
ハッピーエンドで終わったと思っていたら、ブリジアが、シズカ先生と魔女さんを捕まえて尋問を始めだした。
「そ……そうです」
「ハイ……」
シズカ先生と魔女さんは、ブリジアに怯えているのか、緊張の面持ちで答える。
不死の魔女ブリジアもまた、サリス魔法国家に名が轟いている有名人であるのだ。
世界有数の大企業であるウルフデパートのCEOの貫禄は、並では無い。
視線だけで、人を殺してしまいそうな程の威圧感がある。
「で、そなた達は何歳なのじゃ?」
ブリジアの質問に、シズカ先生と魔女さんは、直立不動で答える。
「20歳です!」
「150歳です!」
どうやら、シズカ先生が20歳で、魔女さんが150歳であるようだ。
魔女さんは、見た目シズカ先生と変わらないので、同じくらいの年齢だと思っていたのだが、そうでは無かったようである。
「なるほど、そしたら妾のほうが、だいぶ年上じゃな!」
軽く2000年以上を生きている不死の魔女ブリジアに、殆どの者が年齢で敵う筈も無いのに、敢えて確認しているようである。
どうやらブリジアは、シズカ先生と魔女さんに対して、どちらが上であるかマウンティングしているようだ。
「そ……そうですね……」
シズカ先生と魔女さんは、恐縮しながら返事をする。
「分かっておるのに、お主らは、先輩に名前も名乗らぬのじゃな?」
「えっ、ハイ、私はツチミカド·シズカです!」
「私の名前は、ジャンヌ·ダルクです!」
ん!?
ちょっと待て、ジャンヌ·ダルクだって!
俺は、聞いた事がある歴史人物の名を聞いて、思わず、モッコリーナの弟子だという、ジャンヌ·ダルクを2度見した。
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