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171. シャンティ式ブートキャンプ
しおりを挟む次の日の放課後、早速、寮対抗格闘技大会の修行に入る事にする。
シャンティ先生式の修行を知らない先輩達は、ヤル気に満ち溢れている。
知らないとは、素晴らしい事だ。
フェアリー寮の前の空き地で、まずはストレッチを行う。
このストレッチをしとかないと、これから限界まで体を動かすので、体が壊れてしまうのだ。
まあ壊れたとしても、回復魔法で治すので問題無いのだけどね。
「それでは、『犬の肉球』が誇る参謀シャンティ先生が考案した修行を始めます!
僕ら、『犬の肉球』幼少組もこの修行をして強くなったので、効果は折り紙付きです!」
「まさかあの有名な、『犬の肉球』の名参謀で、『肉の尻尾』のアン·ドラクエルや『三日月旅団』のムーン姉妹、『犬の肉球』のクラタンさんやケンケイさんを育てたという、光の妖精シャンティさんが考案した修行が出来るんですか?!」
先輩達が大盛り上がりだ。
『犬の肉球』の名参謀というより、腹黒シャンティの異名の方が響き渡っていると思うのだが、俺達『犬の肉球』の関係者の手前、俺達の前だけでは、名参謀シャンティと呼ぶのだろう……。
「それではアップとして、フェアリー寮の周りを300周程走りましょうか」
「えぇー」
先輩方から、驚きの声が上がる。
「勿論、ただ走るだけではありません!
最初に、MPを空にしてから走って下さい!
シャンティ先生式の修行は、限界を超える所から始まりますので!」
そう言ってから、俺は、上空に超巨大魔法を打ち上げる。
俺以外の『犬の肉球』のメンバーも、次々に上空に魔法を放ち、MPを空にする。
「それでは、皆さんも始めて下さいね!」
俺は話を終え、とっととフェアリー寮の周りを走り始める。
MPを空にすると聞いた、格闘技大会の代表でも無いのに修行に便乗しようとしていた意識高い系の人達は、無言で寮の中に帰って行った。
それ程、MPをスッカラカンにするという行為は、常軌を逸しているのだ。
『犬の肉球』のメンバー達が、10秒で、1週目を終えると、『犬の肉球』でない代表メンバーの全員が、吐きながらその場に倒れていた。
シャンティ先生の修行は、MP不足に打ち勝つ事から始まる。
普通はMPが0にならないように、MP管理しながら魔法を使うのだが、シャンティ式では、敢えてMPを0にしてから修行するのである。
普通の常識では、MPが0になると死ぬ可能性があるので、MPを0にする事など絶対に有り得ない。
『犬の肉球』幼少組は、シャンティ先生の常軌を逸した修行で慣れているので、今更、なんて事ないんだけどね。
俺は魔素総量を上昇させる為に、シャンティ先生に強制的に作らされたポーションを、1滴づつ、代表メンバーに垂らしていく。
「これで、少しは動けるようになったでしょ!
今日の修行のノルマが終わるまで、不眠不休ですよ!」
「……」
MP不足の倦怠感に襲われている、代表メンバー達は青ざめて言葉が出ない。序盤から先が思いやられる……。
俺達『犬の肉球』幼少組は、先輩達を置いておいて、とっとと400周を走り終え、組手を始める。
組手は、『神道異界流柔術』を行う。
『神道異界流』は、前の世界の長州藩で人気だった『神道無念流』を異世界用に発展させた流派で、古武術のような刀を使わない技もあるのだ。
その古武術を、アレックスやアリスは極めているという訳だ。
『犬の肉球』幼少組では、『神道異界流』のトレーニングが、強制的に組み込まれている。というか、ネム王子以外は、みんな『神道異界流』の正統後継者だったりする。
勿論、ネム王子も『神道異界流』を子供の頃から習っている。
何せ、現在のガリム王国の剣術師範は、サトウ·ケンセイなので、当然であろう。
そんな訳で、『神道異界流』の組手を始める。勿論、闘気無しだ。
やはり、闘気無しだとパワーがあるネム王子が一番強い。
何気に格闘センスもあるので、デタラメな強さだ。
アリスも格闘センスがあるのだが、如何せんまだ5歳児の幼女なのだ。
闘気を使わなければ、ただのお子様なのである。
そんな訳で、俺はアリスと、ネム王子はジュリと組手をする。
ジュリは、剣術だけでなく古武術の才能があり、『神道異界流』の剣術と古武術の両方で免許皆伝の資格を持っているのだ。
ジュリは、ネム王子にパワーで負けるが、技では負けていない。
ネム王子と戦っても10回戦えば3回は勝つ。
闘気を使えば、全勝するだろう。
俺達は、ひたすらぶっ続けで組手を続ける。
時間にして、2時間。
やった事がない者は分からないだろうが、ぶっ続けで真剣勝負の組手をするのは、かなり疲れるのだ。
俺達は、息も絶え絶えでぶっ倒れる。
基本、シャンティ先生の修行は、ぶっ倒れないと終わらないのだ。
先輩達も、フェアリー寮20周ぐらいでぶっ倒れたようだ。
MP切れの状態で走るのは、慣れてない者にとっては、キツイところの話ではないのである。
死んでなければ良いのだが……。
流石に、死んでから2時間も経っていたら、エリスポーションを使っても生き返えさせれないからね。
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